「トヨタ式」には「改善【術】」など存在しない!……そして、そこにあるのは「トヨタ式」の「改善【道】」なのかもしれない。
(参考: http://www1.harenet.ne.jp/~noriaki/link71-1.html )
(参考:『郵政公社 トヨタ式に混乱』の新聞記事に思う - アイティセレクト取材ノート [ITmedia オルタナティブ・ブログ])
(過去:現場発のボトムアップ方式【21世紀版の作業改善】をやるなら、手始めに「飛鳥カナ配列」を試してみよう!と言ってみるテスト。)
(過去:メモ。@2006年10月31日)
※今日の記事を要約すると、【私は「トヨタ式」を誤解していました……】という話です。
改善「術」と名がつくと、大抵は「トヨタ式という名前の、きちんとした改善行為用マニュアルがある」かのように見えるのですが……どうやら、トヨタ式の本質は「改善行為手順」ではなくて「改善手順創作」(配列方面では「飛鳥理論」など)にあるようなのです。
私のような部外者から見れば、たとえば「郵政のJPSで改善術の適用に失敗した(この場合は設計時点で失敗している様にしか見えない)」事例を見て【トヨタ式=箱庭で定型物を転がす場合にしか使えない】と思いがちなのですが、これはどうやら「トヨタ式が適用できない」のではなくて、「トヨタ式改善【術】が通用すると思って失敗した」とみなすほうが正しいようなのです。
そのことをうまくまとめている説明文を、 http://www1.harenet.ne.jp/~noriaki/link71-1.html から一部引用させていただきます。
トヨタ生産方式は直接品質向上やコスト低減という成果(結果)を目的とせず、ムダの排除というプロセス重視の考えを持っている。成果(結果)は運に左右される面が大きい。成果(結果)を重視すれば、成果が出ない時は運が悪いということで、最大の努力が引き出せない。その半面、ムダの排除という努力を基準に考えれば、成果が大きい時や小さい時の変動はあっても、長期的にみれば最大の成果を引き出せる。
( from http://www1.harenet.ne.jp/~noriaki/link71-1.html )
ここを見て「えーっ、やっぱりストップウォッチを持って、ピーピーギャーギャーと叫ぶだけが仕事なんじゃないの?」なんて思わないように……それは(今までの知識が原因で起きる)勘違いですからッ!
JPS関連記事に見られる状況になってしまった原因というのは、もしかすると「工場流の「何か」を見つけて工場流の「なぜなぜ」検証をする」ことを前提にしてしまったから……なのかもしれません。
一番初めに立ち返って、「そこが郵便局であり、業務が集配業務であり、荷物が不定形であり、行き先がばらばらであり……」ということを前提にしなければ、このお話は「スタートラインにさえ立てない」はずなのです。
こうなった原因は、「トヨタ式」には「改善【術】」がある……ゆえに、それを適用すれば全てがばら色になるッ!という、誤った指導方針があったのではないかと……いまのところはそう考えています。
そして最終的にはトップダウン式に計画書を押し付けて「やれ」と言ってしまった、と。その計画書が素晴らしい精度を持った代物であれば、いくらキツかろうとも「仕事がきつすぎる!」以外のコメントは出ないはずです……が、実際には「実態に合致していない!(=ムラが大きい)」という評価がでていて、これは「計画が正しく設計されていない」ことをはっきりと表しています。
さて、世の中には「古武術介護」というものがあります。
その内容については今回触れませんが、今回は「古武【術】」というところに注目してみます。
一般的には「武術」というよりも「武道」のほうが語としてのなじみがあるように思われますが、書籍【古武術介護入門[DVD付](古の身体技法をヒントに新しい身体介助法を提案する)】には【術】と【道】の差を明快に説明する、興味深い一節があります。
一般的には「武道」という言葉のほうになじみがありますよね。私がお世話になった甲野善紀先生は,「道」とつけてしまうことで精神論に逃げ,具体的な技術ができるかどうかという原点を忘れてしまわないようにあえて「武術」と名乗っています。
(from 古武術介護入門[DVD付](古の身体技法をヒントに新しい身体介助法を提案する) pp.92-93)
※引用部分での「私」とは、同書著者である岡田慎一郎さんのことを指しています。
【術】は「すでに出来上がった技」であり、【道】は「技を作るために考え試す過程」である……というふうに表現しなおせばよいでしょうか。
実際、古武術や古武術介護については「既に伝承可能な状態」であり、「そのままその目的には利用可能である」ことから、これは【道】ではなく【術】と表現するのが最もよくあっていると感じます。
……では、「トヨタ式」はどうでしょうか。
前出のように、「トヨタ式改善【術】」は異業種への転用時に大失敗を経験しています。
これは「トヨタ式改善【術】」が同業種・同種作業での運用に対して最適化されすぎていることに起因するのかもしれません。
一方で、表立って出てくる話としての「トヨタ式改善【道】」についてはほとんど拝見したことがない気がしています。
……そして、さきに http://www1.harenet.ne.jp/~noriaki/link71-1.html から一部引用させていただいた内容は、明らかに【術】の領域ではなく【道】の領域でした。
そうすると、「トヨタ式」を「何かに応用しようとする」場合には、「トヨタ式改善【術】」をそのまま適用するのではなくて、その根っこにある「トヨタ式改善【道】」について習い実践方法を探るほうが、遠回りにはなるかもしれませんがその実一番の近道になるのかも……と、そんな気がしています。
http://www1.harenet.ne.jp/~noriaki/link71-1.html をジーッと見ていると、なぜか【誰かさんが70ヶ月以上かけて構築してきたこと】と、とてもよく似ているなぁ……という印象を受けました。
もちろん、トヨタ式の【儲けるIE】とピタリと一致するわけではなくて、アスカ式は【楽するIE】というほうが相応しい仕上がりになりつつあるわけですが……意外なところで「繋がっちゃったよ!」と思ってみたり。
飛鳥カナ配列の「とことんホームポジション死守」という方針は、もしかすると「どこで打ち間違いをするor言い換えに関するひらめきが出るかは解らない→人間の癖で、BackSpaceを打った後にホームポジションへと手を戻してしまう→結果としてホームポジション死守を選択した」のかも。
「トヨタ式改善【道】」と「飛鳥カナ配列」、ほかにも共通点があるのかもしれませんね……。
このあたりはちょっと興味深いところなので、一般向けには役に立ちそうもない「トヨタ式改善【術】」ではなく、一般向けの思考ツールとしてイケてる可能性がある「トヨタ式改善【道】」に関する教材があるかどうかを探しているところです。
トヨタ式を始めた第一人者(豊田喜一郎氏?)か、その一番弟子(大野耐一氏?)ぐらいの方が製作したツールでないと「意味がない」と思うので、探すにもちょっと時間はかかりそうですが……。
とはいいつつ、一応見当をつけて唾をつけたものはあります。書籍では下記のもの。
amazonレビューを見ると、だいぶ興味をそそる方向性の内容であることが読み取れます……というか、著者である大野さんの雰囲気が、もしかすると「富士通の神田泰典さん」に似ているのかも?なんて想像してみたり。
- 作者: 大野耐一
- 出版社/メーカー: ダイヤモンド社
- 発売日: 1978/05/01
- メディア: 単行本
- 購入: 7人 クリック: 138回
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- 作者: 大野耐一
- 出版社/メーカー: 日本能率協会マネジメントセンター
- 発売日: 2001/05
- メディア: 単行本
- 購入: 3人 クリック: 17回
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さて、「トヨタ式改善【道】」は、私にとっては未だに「ワケが解らんまま」の飛鳥理論をうまく紐解くツールになるのでしょうか……。
いずれにせよ、日本語入力法もまた、こういった生産革新の分野と同じく【「問題解決中毒」であり、かつ「問題解決能力がある」方が、今後もこの分野をリードしていくことになる】のだろうなぁ……と感じました。
以上、駄文終わり。
2007年3月28日16:07:25追記。
通信教育講座についてのメモ。
いずれもJTEX・日本技能教育開発センターによるもの。
著者が誰なのかはちょっと良く解らないので微妙。
とりあえずは前者をチェック予定。