プロケーブル方式の特許スタンドについて、以前のスチールラックスタンドを組み直してテストしてみた結果から思うこと、一般の家庭で導入する場合の障壁、相手先ブランド供給(OEM)の可能性について。

(未来:プロケーブルスピーカースタンドのカラーバリエーションに「黒染」はない……困った。 - 雑記/えもじならべあそび)
(未来:プロケーブルトランスとプロケーブルスタンドを検証用に買おう……と思ったのだけれど、前者は保留に。 - 雑記/えもじならべあそび)
(未来:dbx Driverack PAを使って「音の焦点(?)」をプラセボ少なめで調整するための配線案(マニュアル・サウンド・フォーカスのための実験回路)、その4。 - 雑記/えもじならべあそび)
(未来:プロケーブル語の「音の焦点」「音響」メモ。)
(未来:「まじめにジョークを飛ばす技術」が受け入れられれば、その先には「発見という名のアフォーダンス」がある。)
(未来:「プリアンプやミクサがあるから音がよくなる!」というわけではない……らしい(?)。)
(未来:[かえで化][JOKE]かえで式スピーカーセッティング……というか、地震対策の成れの果て。)
(過去:音響ネタについてのメモ(0:55AM記録開始、7:59AM記録終了)。)
(過去:プロケーブル方式「音響理論」に関するメモ。)
(過去:プロケーブル謹製のスピーカスタンド登場!)
(過去:実際に「簡易スピーカスタンド」のテストをしてみた。)
(過去:(メモ)簡易スピーカスタンド……はどうしようか。)
(関連機材: http://d.hatena.ne.jp/maple_magician/20070926/1190816547#20070926fn5 )
(過去:「音の焦点」をプラセボ少なめで調整するための配線案(マニュアル・サウンド・フォーカスのための実験回路)。)
(過去:「音の焦点」メモ。)
(過去:メモ。@2007年10月16日)


 うーん……正直、飛鳥カナ配列を作ったRayさんに、なにかこういうビジネスモデルを提供できればよかったのだろうけれど、私にはそれを考えつく力はなかったんですよね……その点はとても悔しい限りです。


 ……って、そこはこれの本筋ではなくて。
 昨日の日記にも書いたのだけれど、プロケーブルさん出願の【特許公開 2007-180823】をネット越しに拝見*1して、何となく理屈が解ったので、昔作ったスチールラックスタンドを崩したうえで、とりあえずだいたいの高さが同じになるように組み直してみました。
 写真を撮ろうと思ったのだけれど、どうせ精度が出ない(あのスチールラックは50mm単位でしか高さが調整できない)ので、それは見送ることに。
 一応、スチールラックスタンドの対地高さは【部屋隅に近いところは100mm、リスニングポイントからみて部屋正面壁に近いところは150mm、部屋側面壁に近いところは200mm、部屋中央に近いところは200mm】になるように足を出してみました。
 スチールラックスタンドはスピーカーに対して3割近く大きいので、このスチールラックスタンドにスピーカを寄せて設置すると、おおむね本物のスタンドでの初期高さとなり、同等の傾きを得ることができます。
 昨日の日記にも書いたとおり、スチールラックスタンドではラックの固有音が酷すぎて、テスト用途で使うのが限界という感じですね……微調整も効かないので、本物を使っている方と比べて受ける印象がだいぶ違うかもしれません。


 基本的に、このスタンドを使うこのスタンドが目指すセッティングを行うと「高音がとても耳につく」ようになります。
 小さめの音量で聴くならまだしも、大きめの音量で聴くなら「高音域側ユニットの音量を-12dBくらいに下げないと結構つらい」状態になってみたり。それぐらいに、通常環境用のネットワークから比べて、バランスの崩れた音になります。
 これを補正する手段はいくつかあります。

  • スピーカのネットワークを除去して、チャンネルデバイダ+マルチアンプの構成でいく。
  • スピーカのネットワークを高低分離回路(バイワイヤリングに対応できる状態)にして、分離ネットワーク+マルチアンプの構成でいく。
  • スピーカのネットワークに高音域補正回路(アッテネータなど)を追加して、改造ネットワーク構成でいく*2 *3

 正直言って、一般家庭に上2つの方法を導入するのは(いろいろな意味で)論外なので……たぶん、最後の「改造ネットワーク構成」が、今後この手の方法を使う上での標準になるであろうと思われます。
 #家庭用でも、コスト的に見合えばバイアンプを採用するコンポが出現するかも?いや、アンプよりもネットワークの方が安いから無理か。

(2007年11月11日1:03:40追記)
 もうひとつ解決策が……「チャンデバの使い方」なページに記載されていたままですが、「そもそもウーファーとトゥイータの2つに、それぞれ能率が異なるものを採用する」という手があります。設計時点ですでにトゥイータの能率が低くなっていれば、外側でわざわざトゥイータ用にアッテネート抵抗を挿入する必要がないので、設計時そのままの音質が提供できることになりますので。


 それと、スタンドの傾斜に関する問題。
 私はスチールラックスタンドを使った「音響的な効果」について何となく*4理解してしまっているので、ハロー効果(認知バイアス)の影響を受けて、このスタンドの「安全性」について正しく評価できそうにありません……ということで、これの音を聴いていない家人にスタンドを見せました。すると……

  • 「日本は地震大国ですが?」(注:意訳)
  • 宮城県沖地震は確実に来るんですけど?」(注:意訳)

……と、非利用者に与える傾斜ギミックの印象は「最悪」。今使っているスチールラックスタンドについてすら、速攻で外さないと後々ややこしいことになりそうだと感じました。
 実際のところ、スタンドの傾斜そのものに限れば「もともと前方に寄っている重心を、少し後ろにずらす」話なので、15°傾斜転倒テストに対して影響はないはずです。
 ただし、問題なのは……本物はスチールラックスタンドと異なり「傾斜とともに、平均150mmでバラバラに持ち上げている」ところで。4つのスタンドが同じ長さではないので、地震が起きたときに「上物が振れて全部がいっぺんに倒れる」のではなくて「上物が傾いた隙に、どれか1本が抜ける」可能性があって、しかもあの構造では予測が効かないのは微妙なんですよね……。
 #うちにあるDIATONEスタンドでは、スピーカの外装である塩ビシートに対して「重さで張り付く」様な構造になっていて、地震のようなタイプの振動に対しては比較的安定に傾斜→復帰していたり。


 うーん……本物のスタンドで縦波地震対策をするのであれば、スタンド天面のゴム面と、スピーカ底の足との間を、3MのVHBの様なテープでくっつけてしまうのが確実かもしれません*5。スタンド単独では15°傾斜テストをクリアできそうですし、縦波に対する対策としてはそれで十分だと思います。スタンド底面と床板との間まで固定してしまうと、粘着面積のからみでスピーカ足←→スタンド天面の方が早く剥がれてしまって危ないので、スタンド底面側はそのままフリーにしておくしかないかな、と*6


 とりあえず、この技術は「地震が少ない海外でこそ生きる」ものなのかもしれません。
 古くから「地震・雷・火事・やまじ風」*7と共存して生きてきた日本の住民にとって、この技術は「生理的に許容しがたいもの」である可能性が、少なからずあるものと推測されます。
 そうすると、この技術にとって良好な環境を得づらい日本でどーにかするよりも、まずは国外で*8実演するのが、最も手っ取り早いのではないかと思います。
 基本的に日本人は舶来品や、あるいは向こうで成功した技術には弱い*9ので、この技術は海外経由で逆輸入的に紹介される方が、より早く技術の普及に役立つものと思います。


 ……と、とりあえずは以上で。
 あとは、ミクサやケーブル類がSoundhouseから届かないと、どーにもならないような。


 しかし、言語の壁を越えてどーにかなるものは良いですよね……日本語入力法は日本語という壁を原理的に超えられないから、この手のような方法はどうがんばっても使えそうにないしorz。

あのスタンドがアフォードしようとしている、スピーカーの設置方法を絵に描いてみた。

 ……いつもどおりの下手絵なのだけれど。

 「直方体の空間内部に、直方体のスピーカを置くからこそできるマジック」なんですな。
 クソ重いスピーカーを斜めに持ち上げたときに思いついたのか、あるいはよほどパズルが好きでかつ空間認識力に優れているか……。

 2007年11月17日12:58:37追記。
 プロケーブルさんによる説明では、スピーカの傾斜角度は、主に「天面」「底面」と「裏面」を部屋の角へと向けることによって決まる……という印象を受けがちです。
 ただし、このセッティングでポイントになるのは、実際には「内側面」と「天面」なのかも。
 部屋の高さが低ければ低いほど、また部屋が横方向に長ければ長いほど、スピーカーの傾斜角度をゆるくすることができる(≒設置安定性が増す)ので、セッティングをするときには「内側面」も注視しつつ合わせる必要があると思います。
 ……つまり、このセッティングでは本来「スピーカの内振り角度は部屋のサイズと置き場所(および設置高さ)によって一意に決まる」のであって、内振り角度を自由に設定できるという(websiteでの)プロケーさんの「設置方法には多様性がある」という説明(と、そこに載っている図面)はどう考えても妙なんですよね……。
 #特許を申請した人自身が、その特許について理解せずに「かえで化」したテキストを書く……なんて、さすがにそれはありえないはずなのだけれど、なぜに特許要件を崩してまで「多様性」について言及したのか、という点については、いまだに意図が理解できていなかったりします。

(2007年11月18日18:58:37追記。)
 特許とWebsiteを読み比べていて「あれっ?」と思ったのだけれど……この方法では、部屋角のうち「4箇所」しか使いません。
 スピーカーを部屋角に押し込んだままでは、「リスニングポジション側の背面上側の角を使う」か「逆側スピーカー上方の角を使う」のうち、どちらかしか満たせません。これと「自身スピーカー下方の角を使う」とを合わせて、左右合わせて4つ角を使うことになります。
 本当に部屋のうち6つ角を使うとなると、左右のスピーカーはそれぞれ「部屋の中央付近に、部屋高さの半分の高さに近い高さで浮いていないと条件を満たせない」のですが、特許側ではそこまで要求していないようで……。
 いったい、どこから「6つの角を使う」なんていう奇妙な話が出たのか……なぞが深まるばかりで困ってしまいますねorz。


 そうすると……昨日書いた【ただし、このセッティングでポイントになるのは、実際には「内側面」と「天面」なのかも。】という部分はあまり重要ではなくなるし、スピーカーの向き自体を好みに合わせてセットすることも可能になる……と。
 #ただし、それが事実であるとすると、あの特許における説明が破綻してしまうような。どうなっているのだろうか、読み間違えたのかなぁ……。

*1:これも昨日書いたけど、http://www.inpit.go.jp/info/ipdl/service/index.html の【初心者向け簡易検索(特許・実用新案)】で、ワードに【プロケーブル】と入力し検索、一件だけ見つかるので【一覧表示】すると、該当特許にたどり着きます。

*2:2007年11月19日2:10:26追記: どなたが発見されたのかはわからないのですが、JRX115のネットワーク回路についている出力保護ランプをわざと断線させる(≒除去する)と、ランプ断線時に使われる16オームのバイパス抵抗を介して「音量が下がった状態」を実現できることに気づいた方がいらっしゃるようで。この方法、当然「スピーカーから見たダンピングファクタが猛烈に落ちる(DF=∞のアンプを使った場合、保護抵抗16オームを通してホーンドライバ8Ωを駆動するので、公称DFは0.333……になる)」ところは微妙ですが。もっと能率が低いホーンドライバがあるとよいのですが、そう都合のよいものはなさそうですよね……うーん。

*3:2007年11月23日0:47:53追記: http://homepage2.nifty.com/kyonkyon/JRX115/JRX115.html にて、JBL/JRX115に関する詳しい解析がなされています。「ランプと抵抗ははずして、0Ω抵抗(要するにジャンパピン)に変えてしまう」方法が提案されていまして、これを「音の焦点」をプラセボ少なめで調整するための配線案(マニュアル・サウンド・フォーカスのための実験回路)。と組み合わせれば、ばっちりいい感じに調整できそうな感じが……ただし、HFとLFのレベルだけを調整するので、あのネットワーク基板のままで焦点を変えれば「事実上のクロスポイント」も変わってしまうというおまけがつきますけど^^;……アナログ2wayチャンデバでどーにかするよりはまだよさそうです。

*4:本物を使ったことはないので、あくまでも「なんとなく」ですよ?念のため。

*5:ただし、ゴム面が調整時に回転する仕様であれば、この方法は使い物になりませんけど。それと、メカニカルアースが十分にはとれなくなるので、低音の出に相応の代償が現れるはずです。

*6:もっとも、これがある限り横波対策はどうがんばってもできない……と。転倒軌跡がまるっきり異なるものが4つなので、どう固定すればいいものやら……という状況。

*7:そのうちこれが転訛して「ジシン・カミナリ・カジ・オヤジ」になった……とか何とか。

*8:それこそ、一番はスピーカーを製造しているJBLが関わる「ハーマンインターナショナルの本社試聴室」で!

*9:こういう技術を向こうから持ってくる経営方法が「タイムマシン経営」と呼ばれるわけですが、この場合は対象が特許なので、「逆輸入」と言うよりは「再発見」として紹介されるはず。