【JISX6002かな入力】と【Qwerty英字配列(+JISX4063ローマ字入力)】にあるべき「本当の運指」……?

(未来:「かえでレフティあすか配列」テストから派生して、「かえであすか」の外方運指法による打鍵テストをしています。)
(未来:JISX6002メモ。)
(過去: PM 01:32 - Frank Edgar McGurrinのタイピング法(1889年製)を運指画像に変換。)

 2008年1月12日12:34:30追記。
 Qwertyがどうやって成立したのか、という点について、近々書籍が発行される予定です。
http://d.hatena.ne.jp/maple_magician/20080103/1199286302#c1199669313
 そのうち、以下などで購入できるようになるはずですので、しばしお待ちを……。
http://www.amazon.co.jp/s/ref=nb_ss_gw?__mk_ja_JP=%83J%83%5E%83J%83i&url=search-alias%3Daps&field-keywords=%88%C0%89%AA%8DF%88%EA&Go.x=0&Go.y=0&Go=Go

 昨日は延々と、下記の図が頭の中でぐるぐると回っていました。

 120年前にFrank Edgar McGurrinFrank Edward McGurrin氏が考案したタッチタイプ法の運指図です。


 これを「例外なし」に変換すると、下記のようになるはずです。

 【けん盤につけるアームの都合か何か】×【自然な手の動き】の条件から間を取ると、おおむねこうなるはずです。


 少なくとも、私たちが標準運指だと思っている(思い込んでいる?)下記の運指とは別物、ということになります。


 そこで、120年前当時の運指法を「今のコンピュータに生かす」ことを前提に、けん盤配列の間隔を再構成してみました。

 【QWERT】と【ASDFG】のズレを逆にすることで、見た目と運指法を一致させています。【TY】は小さくなり、【GH】の間には隙間を空けました。【TY】を小さくするのがイヤであれば、【6】と【B】を幅広にすれば良さそうです。
 ……これなら、120年前に彼女彼氏らが経験したであろう運指法を容易に想起できそうですし、自然な手の動きへと導く視覚的効果もありそうです。
 #この【左手逆ズレけん盤】(T-Y圧縮・G-Hアキ・左手中段と左手上段のズレ位置が逆転)、どこかで製品化*1しないですかね……。

 2007年8月24日12:54:56追記。
 raycyさんの指摘を拝見してようやく気づいたのですが、既にμTRONキーボードがそれを実現しているんですね、なるほど。


 ……ところで。
 この「左手も下段では外方に指を動かす」運指法、該当記事でも述べたとおり【JISかな入力をするのに都合がよい】はずです。
 #出現頻度が「ひこ」対「(Shiftを併用する)っゃゅょ、。」=「1」対「3.69」のため。


 ……そして。
 当時の運指法で「英文記述に向いている」らしいことがハッキリしていることと同じぐらいに「JISX4063ローマ字入力にも向いている」はずなのです。
 #出現頻度が「(Z)ざじずぜぞ」対「(BV)ぶヴぁぃぅぇぉ」=「4.71」対「1」のため。(2007年2月27日12:42:14修正)
 #出現頻度が「(Z)ざじずぜぞ」対「(BV)ばびぶべぼヴぁぃぅぇぉ」=「1.28」対「1」のため。
 ……って、再計算したらそれほどの差は出ないようで……うーん。


 こう考えると、一つの連続的な仮説が成り立ちます。

  • 英文タイプライタでは、左手下段を外方に振る運指法(以降、外方運指法と呼ぶ)が標準だった。
    • もしかすると、ピアノ様鍵盤を見ていた可能性があるChristopher Latham Sholes氏は、氏自身が「二本指で使う」ことを前提に設計していたらしいにもかかわらず、心のどこかで「タッチメソッドで使われることも考えつつ」設計していた可能性すらあるのでは……と。
  • カナタイプを設計した山下芳太郎氏は、外方運指法で使うことを前提にそれに見合う配列を設計した。
    • 外方運指法で利用するという前提であれば、カナタイプ(と後のJISX6002)は、案外と良く出来た入力法であるとも言える……これは頻度計算値からの推測だけれど。
  • もしかすると、始めに導入した初期導入先企業では、外方運指法を使っていたかもしれない。
  • 後に国内でタイプライタを製造したメーカーは、外方運指法を知らずに練習マニュアルを現在の運指法(以降、平行運指法と呼ぶ)書いてしまった。
  • 国内のタイプライタユーザは皆「平行運指法が正しいのだ」と【思い込んで】利用するようになった。
  • 国内の配列設計者はその慣例のまま「平行運指法で」過去の配列を評価するようになった。
    • 仮にそうであれば、これは「歴史を調べずに評価した」ことになってしまい、非難の対象とさえなりうる。
  • 親指シフトはけん盤評価でスクエアけん盤を用いたが、これをタイプライタけん盤へとインプリメントする際に「平行運指法で」処置してしまった。
  • 後続の入力方法(μが付かないTRONキーボードを除く)も、全く同じく「平行運指法であることを前提に」けん盤配列を設計してしまった。
    • 配列選定や、配列設計で【打鍵評価を行った配列】に限っては、「平行運指法で最も高いパフォーマンスが引き出されるように」調整されたので、現行配列のままでも難を逃れることができている。

 ……さて、この過程は正しいのでしょうか、あるいは間違っているのでしょうか。
 ひとまず、あとは「史実」がこれらの正解を指し示してくれるはずです。


 ……そういうわけで、旧配列系については「評価する場合には、本当に平行運指法で評価してもよいのかどうか」を、きちんと確認してから評価しないと痛い目に合うかもしれません。
 下手をすると、カナタイプを作った山下氏・スチックネー氏や、Qwertyの運指法を製作した諸氏から笑われてしまいかねませんので。


 安岡さんの記事にあった、このコメントが妙に気になってみたり。

19世紀のタイプライターを研究せずに19世紀のキー配列について述べるのは、正直なところ、あまりに無謀な試みだと言わざるを得ない。
(from http://slashdot.jp/~yasuoka/journal/301838 )

 同じことが、日本語入力法についても言えるのかもしれません。
 #というか、今のJISカナやQwertyローマ字って結構「無茶な使い方をしている」のかも。


 うーん……これが1980年代時点(私がワープロを触り始めたのは最後半ですけど)で解っていたら、素直にそういう運指法で使い始めたかったですね……。
 そうすれば、JISカナもQwertyローマ字も多少は使いやすかっただろうに。
 #微妙な事務効率のまま「四半世紀を過ごしてきたこと」そのものは既に取り返しが付かないし、今となっては運指法を変えても限界は見えている(下手をすると別の入力法へと乗り換えるほうが手っ取り早い)ところは微妙ですが……うーん。


 ……後は、気になることが2つ。
 一つは、(国内ではない場所で)Qwerty配列によるタイプライタ教習を受けた方が、どういう運指法をされているのか?というところで。
 これが「20世紀において、全世界的に外方運指法→平行運指法へと入れ替わった」のか、あるいは「たまたま日本国内のみで、外方運指法→平行運指法へと入れ替わった」のか、というところが、妙に気になっています。
 もう一つは、他の(たとえばDvorak)配列はどういう運指法を前提に設計されたのか?ということ。


 うーん……そういえば、Rayさんは飛鳥を「どちらの運指法で使うことを前提に」設計されたのでしょうか。ちょっと気になっています……。
 #なにやら「開けてはいけない箱を開けてしまった」&「黙っていればエイプリルフールネタに転用できた」気もするのですが^^;、ひとまず。

*1:A4TECHの「A-TYPE keyboard」はこの条件を満たしていません(左手側が綺麗に揃っていない)ので、アレではダメなんです……。