ONKYOのVLSCメモ。

(未来:AirMac Expressよ、さよなら。そして、ありがとう……。 - 雑記/えもじならべあそび)
(過去:(メモ)ONKYOのSE-U55SX(SE-U55GXでも同じ)を買うべきか、あるいはROLANDのUA-25からONKYOのSE-U55Xに光接続でつなぐべきかを検討してみた。)
(過去: http://www.eurus.dti.ne.jp/~yfi/reviews/review_dac.html#ONKYO/SE-U55X )


 ひさびさにこの手の話を書いているような?……間違っていたらゴメンナサイ。


 ……って、書いた後で
http://www.jp.onkyo.com/technical/vlsc.htm
を読み返して、間違いまくりであることに気づきましたorz。
 デジタルフィルタの有無に関係なく効果があり、かつVLSCは「ローパスフィルタの代わり」に挿入されるものである……と。
 以降、間違って書いているのでとりあえず隠しています。


 ONKYOのVLSCは、DACのアナログ出力値(階段状になっている)に対して、「↑→の角ばった信号を/に置き換え」たり、「↓→の角ばった信号を\に置き換え」たりするもの。
 「↑」「↓」という急激な変化はいろいろな高周波成分を含んでいるので、それをなるべく少なくしようとして作られています。
 ふつうはDACの前に、オーバーサンプリング用のデジタルフィルタを置きます……こいつは「入力信号が正弦波であるものと決め付けて、それなりの値を生成する」ものなので、記録限界である1/2fsぎりぎりまで音声を再現できることと引き換えに、余計な付帯音がくっついてしまいます……それを嫌って作られたのがVLSC、というわけで。


 自作派はだいぶ昔から、ノンオーバーサンプリング特有の欠点を解消させようとして「1/4fs周期ずらしつつ4個のDACを並列接続」してみたり、「1/8fs周期ずらしつつ8個のDACを並列接続」してみたり……ということをしていた。
 この目的は「↑↑↑↑→→→→の大きく角ばった信号ではなく↑→↑→↑→↑→の細かな階段状信号に合成して出力」したり、「↓↓↓↓→→→→の大きく角ばった信号ではなく↓→↓→↓→↓→の細かな階段状信号に合成して出力」したり……と、要は「階段の目を細かくする」ことにあった。
 VLSCでは、この理屈が目指す先の理想点である「↑→の角ばった信号を/に置き換え」たり、「↓→の角ばった信号を\に置き換え」たりということを実践した代物ということになる。


 この方式が持つ欠点は、「1/2fsできれいなDC信号になってしまう」ことと、「1/4fsではきれいな三角波になってしまう」こと。
 前者はカップリングコンデンサで除去してしまうという手があるからいいとしても、後者は結構問題で……fs=44.1kHzの場合、1/4fsといえば11.025kHzの可聴帯域であるため、これがVLSC特有の「高域ほど再現性に乏しい」感触を生み出してしまう。
 もっとも、fsよりも十分に低い領域においては(発音素子がもつ質量などによって積分されることもあり)とても素直で通る音を出すし、負帰還の仕掛けを使って波形を再現しようとするデジタルフィルタのような余計な付帯音が原理的に出ない点は美点といえる。


 ONKYOhttp://music.e-onkyo.com/ で高品質音声の配信に乗り出したのは、たぶんこのVLSCの特性が原因なのだと思う。
 仮にfs=96kHzであれば、当然三角波になってしまう1/4fsは24kHzとなり可聴帯域外になる。
 デジタルフィルタをつかう機種であれば、fsの向上は「収録帯域の延伸(どーせ聴こえないけど)」にしか役立たないけれども、VLSCを使う機種にとってfsの向上は「可聴帯域における元波形の再現性向上」という直接的なメリットをもたらす。
 この特性からすると、VLSCが本気で活きる領域というのは、DVD-AudioSACDといった「高品位ソース」にあるのかもしれない。
 仮にfs=192kHzのようなソースが出れば、(可聴帯域以上が遮蔽されたソースであっても問題なく)さらにVLSCのいいところが活きそうな気がする。
 ただし、fsの「アップコンバート」を行ったソースでは意味がない(アップコンバートでデジタルフィルタのようなものが使われる)ので、収録時点から高いfsで記録されたソースが必要になる……というところは、(スペック表記では解らないだけに)ONKYOにとって悩みの種なのかもしれない。

VLSCのおいしい使い方。

 ……とにかく、1/10fs未満(fs=44.1kHzであれば、その1/10で4.1kHz未満)をがっちり再生してほしい!という向きには良いと思う。
 かりにfs=192kHzでの配信がされるようになれば、その1/10で19.2kHzぐらい(ほぼ可聴帯域全域)まではがっちり再生されると思う……のだけれど、そこはまだ夢の領域、ということで。
 #こう書いておけば、将来ONKYOはキッチリやってくれると思う。


 1/8fsより上(fs=44.1kHzであれば、その1/8でば5.5125kHz)については期待しないほうが良いので、その点については十分注意すること。
 低いfsで高音域をどーにかして再現するには、いずれにせよデジタルフィルタのようなものの力を借りないとダメなので、その点についてはあきらめるべき。
 本来ならば、fsと信号周波数に応じて「1/10fs未満の領域ではVLSCのみ、1/10fs〜1/4fsではVLSCとデジタルフィルタのハイブリッド、1/4fs以上の領域ではデジタルフィルタのみ」とかいう構成を取れる「HybridVLSC」のようなものがあれば良いのだけれど(VLSCが生成するベクトルのスルーレートに応じて動的に挙動が変わるようにするとか)、そっちもまだ夢の段階かなぁ……と。


 ボーカルの帯域あたりまでであれば、CD品質の音声でもVLSCの良さは活きるのだけれど、それよりも上の帯域ではVLSCの良くない点が出てしまうので、そのあたりについては(ソース品質とVLSCの改良の両面から)対策を講じていただきたいところです。
 個人的にはとても好きなのだけれど、なかなか人様に手放しで薦めるわけには行かないよなぁ……というのが現状のVLSCなはずで、その点がちょっと惜しいと思います。