(メモ)飛鳥カナ配列は「長時間の打鍵」に向くのか。

 このキーワードで何度となく検索されていた方がいるので、とりあえずメモ。
 ……で、この点ばかりは、「人と配列の相性」「人と親指シフトキーとの相性」「キーボードに対する(心理的なほうではなくて、物理的なほうの)姿勢*1」あたりがかなり関係してきそうな気がします。


 基本的に、飛鳥では親指シフトキーを「多数回操作する*2」うえに「押しっぱなしで文字キーをたたく*3機会が多い」ので、親指シフトキーを押すときに「バチン、バチン……と叩くように押す」のは絶対にダメです*4。変換するときにスペースキーを叩く……ということと同様の勢いで操作*5した日には、あっという間に親指が腱鞘炎になってしまいます。
 静かに押すことを心がけて打てる方は、普通の(≒中央のスペースキーがあまり大きくない)JISキーボードを使って「無変換=左親指キー」「変換=右親指キー」として使っていれば大丈夫だと思います……が、どうやってもこれらのキーを勢いよく叩いてしまう癖がある方は、思い切って【どうやっても勢いよく叩けないように、中央のスペースキーが大きめのJISキーボードを使ってみる】ことを検討していただくほうが良いかもしれません。


 私は東芝ノートPCを使っていて、これのキーボードでは「Dキーの下に無変換が・Iキーの下に変換キーが」それぞれ配置されています。
 親指を握り気味で親指シフト操作をしなければならない状況を作る*6と、どうがんばっても「親指単独では打鍵できず、手のひらごと押し下げるアクションを追加しないと打てない」様になります。
 この操作、一見面倒なように見えて、実際には「親指を保護するにはかなり有効」だったりします。
 ただし、「無変換=左親指キー」「変換=右親指キー」のそれぞれについては、元の機能──変換・無変換──を潰して使う必要が出てくると思いますので、変換・無変換の機能を残しておきたい方にはちょっとお勧めできないところが微妙ですけれども。


 基本的には運指距離が短くなるように設計されているので、(使い方さえ間違えなければ)入力量が多くなっても手指や手首には負担はかかりにくいはずです。ぎっちょんさんの試算によれば、対親指シフト比で3/4程度になる*7 *8とか。その効果が「速度の上昇」に直結するわけではないとしても、「速度上昇に向けてのマージン&同速度入力での余裕」につながることは確かだと思います。
 #というか、そうでなければ(入力環境を維持するコストを覚悟してまで)何年間も使い続ける気にはなれないですし。

*1:姿勢に関する問題は、飛鳥に限ればまず神経質になる必要はなさそうなのだけれど……これも配列だけではなく人に依存する部分があるようで、その点に関する注意は必要なのかもしれない。

*2:飛鳥では、同じシフト面がなるべく続くように設計されているので、見かけ上&初期練習段階では、とてもシフトを掛ける回数が多く感じるはずです。この点は、習熟するにつれて「(人間が本質的に持っている)楽をしたいと思う意識」に誘導されて、なかば自動的に「連続シフト」へと移行するきっかけとなるはずです。使い手があまり意識していなくても、自動的に作業改善が進む……というのは、飛鳥カナ配列が持つ面白い特性のひとつだと思っています。

*3:この動作を、私は仮に「同期連続シフト」と呼ぶことにしています。「同期」というのはNICOLAが採用した「同時打鍵」と同じく「大体一緒に押す」事を指していて、「連続」というのはJIS配列などが採用した「小指で押すシフトキーと同じ挙動」を指しています。同期的なシフトと連続的なシフトの両方を許容する場合、連続的なシフトが掛けやすい配列ほど誤打鍵は少なくなります。飛鳥はこの特性を使って、「日本語で使われるカナを、3つのグループに分けて配字する」ようになっています。50音近似配列では「50音順を使ってアフォーダンスを確保する」わけですが、飛鳥の場合は「連接しやすいカナ同士を続けて打ちやすくすることでアフォーダンスを確保する」ように設計されています(たぶん)。

*4:これでも大丈夫だよ!という方も、おそらくいらっしゃるとは思います……けれども、個人的に「親指でめいいっぱいシフトキーを叩く」というのは、ちょっと無理っぽい気がしています。

*5:これをやる頻度は(親指シフトキーの操作に比べれば)かなり低いので、ここを矯正する必要はないはずです……というか、私はいまだにスペースキーだけはめいいっぱい叩くことがあります^^;。

*6:これは、私がドMだから……なんて冗談を言いたいわけではなくて、「制約」(http://usability.novas.co.jp/glossary_09.html)を利用しようとしています。

*7:最終的な指標がNICOLAと変わらないのは、「指負担に対する重み付けの絡み」とともに「同期連続シフトが効かないエミュレータでの評価」となっているらしき事が理由かもしれません。

*8:ちなみに同指標によれば、飛鳥カナ配列対JISカナ比および、飛鳥カナ配列対Qwertyロマかな比では、ともに運指量は1/2.7程度になるらしい……って、6割強も改善になってるの?数字で出るとちょっと意外。