新JIS規格関連について、神田さんから返信を頂いた。

(過去:親指シフト - Wikipedia の特定版(私が至近に変更した分一件)のみの削除を依頼してきました。)
(過去:「一次資料」を見てNICOLAを語ろうとしてみる「テスト」。)

 無断転載の顛末に関して、お許しをいただけたようでホッとしました……。
 ……の一行で終わらないあたりが今回の肝でして。


 頂いたメールからキーワードを拾い上げてみることにしました。
 #さすがにコピペはしません^^;

  • キーパーソンは「渡辺さん」
  • 新JISでの成果物はキーボードだけ「ではない」
    • 日本語処理の標準化
      • ペンタッチ入力式漢字配列
      • かな漢字変換用のカナ配列(新JISかな配列)
      • その他……
  • 一揃い、客観的な記録を残すべく尽くした
  • 全て http://www.ykanda.jp/ で公開している

……と、こういう趣旨のメールを頂きました。


 私には本件を調べる責任があると思います。ゆえに、じっくり調べてみようと思います。
 というか、新JISの資料を「神田さんが」律儀に公開し続けていらっしゃるというのは不思議な感じですね……。

とりあえずGoogle先生に聞いてみた。

 検索ワードはもちろん【site:www.ykanda.jp 新JIS】。19件あるようです。
 先頭から順に読む件は頓挫中・全域を読んだことはないので見逃しまくっていました……orz

読みつつメモ。

http://www.ykanda.jp/input/jis/jis.htm
☆JISかな配列(規格が閲覧できる)
 JISかなは濁音・半濁音のキーを右に置いたので、濁音になる清音かなの多くを(交互打鍵とするために)左側においている。
 この方法で唯一問題なのは「濁音になりうる文字≒使用頻度の高い文字」であること。
 親指シフトでは濁点キーがない(両親指どちらでも押せる親指シフトキーが濁点キー代わり)ので、濁音になりうるカナであっても片手に偏らせることなく配置できる。
 【2006年3月29日11:22:27追記:これには周知済みのトリックがある。濁音化可能なカナに関して「JISかなは左寄り」「新JISかなは頻度順に左より」に位置制限されているのに対し、「NICOLAは無シフト」に位置制限されている。制約が左右方向から天地方向に変わった……と表現するべきかも】


☆新JISかな配列(規格が一揃い閲覧できる)
http://www.ykanda.jp/input/jis/jis09.jpg
 3段配列アンシフト側の文字入力時間は、短い順に
  左手→右手
  右手→右手
  右手→左手
  左手→左手
 ワーストケースの「左手→左手」は、ベストケースの「左手→右手」に比べて10%程度打鍵所要時間が増加する(注:利き手に関する言及はない模様)。
 センタシフトにしても入力速度は変わらないが、正確性は上がる(理由は言及されていないけど、他の指をホームポジションに置いたままでシフトできるのだから、当然と言えば当然なのかも。実際飛鳥でやっていて「キーズレによる単独誤打」は少ないし。同じ理由で人指伸も少ない方が良いと思うけど、これは人に依るだろうなぁ……と思う)。
 小指シフトキーによるシフトは25%の打鍵時間増加で収まる(ロマかなユーザはこの操作を日本語入力で行うことについて嫌っている?)。
 被験者は「シフト側連打鍵が押しやすい」との感想(あっ、飛鳥がここに(違))。
 

 神田さんは「小指の使いすぎ」についても言及しているが、この「使いすぎ」の表現は「小指キー」ではなく「小指伸ばす」キーを指しているのかもしれない。( http://sapporo.cool.ne.jp/tsukimoriseki/lay/step4.html )
 もしも当時「中指プレフィクスシフト」を考案できていれば、あるいは……という気がした。


http://www.ykanda.jp/input/jis/jis10.jpg
 シフトキーの打鍵も文字キーの打鍵と同じく「1キー打鍵」と数えて、交互打鍵率を計測している。
 指の使用率は「薬指と小指」の使用頻度が「人指と中指」の使用頻度を超えないように設計している(あれっ、結構ルーズ?)。
 濁点・半濁点別打ちであっても全配列の計算は無理、事前に振り分けを行ってパタン制限を行った。

  • 高頻度文字群はアンシフトに、低頻度文字群はシフト側に。
  • アンシフト分を左15文字と右17文字に分けるため、この32文字に限って交互打鍵率を全手順測定し、左右に振り分けた。
  • 左は左で、右は右でそれぞれ個別に、同手跳躍が最小になるよう段振り分けを行った。
  • 最後に指分担をこの範囲内で決めた。

……って、これ私がやろうとしていたこととまるっきり同じ気がするのですが^^;

  • ここまでの各手順には成績順に256パタンを計算で求め、人手評価と2字連続データを参考にしたシミュレート結果を元に決めた。
  • シフト側は、このアンシフト側配列に対し「シフトを含めて交互打鍵率が最大になり、かつ中段使用率が高くなるように」設計した。


http://www.ykanda.jp/input/jis/jis11.jpg
 新JISは、JISカナではほとんど使われなかった「遠い右シフトキー」を多用している(センタシフトが規定され、そして右代替シフトキーが使われる例があったのはそのため……?)。


http://www.ykanda.jp/input/jis/jis14.jpg
 jis09.jpgでは「シフトによる時間増は25%」としていたが、これは自由打鍵データに限っての話。実際の新JISでは40%に増加した。理由は「シフト側に高頻度文字が少ないので、習熟に時間が掛かるから」という感じらしい。
 濁点が右手になったのは、先の「左手→右手」が最も早いというデータによる(JISかな起源ではない)。プレシフトキーの打鍵よりも濁点キーの方が使用回数が多いので、プレシフトキーよりも時間増は少なかった。右手薬指の打鍵は70%が濁点、薬指は小指に次いで動かしがたい指なので、この選択は妥当だったと結論付けている。

ふと思った結論。

Q:なぜ新JISは普及しなかったのですか?
A:以下の中から、いずれかをお選びください……という感じなのかも。

  • 「キープリントの置き換えを強制しなかった(シール対応では剥がれ易いので嫌われる)」
  • 「(NICOLAのそれと同じく)見ながら入力するには向いていない(=イージーユースには向かない)、当時の(そして現在のサイトメソッドユーザーにとっても)要求に合致していない」
  • 「評価打鍵に使用したテキスト(=一番打鍵練習に向いているテキスト)が公開されていなかった」
  • タッチタイプをしやすくするための方法論が提示されなかった」
  • 「規格書が数字至上主義になってしまい、良さを表現するほかの記述がなかった」
  • (親指シフトのときと同じく)販売店の店員さんに納得していただくだけの努力をしていなかった。
  • 結局、「モノは出来たがヒトは動かせなかった」のかもしれない。

 ……正直言って、もう一回規格書を読み直してみないと怪しいかも。

もう一つ追加。

 例の「渡辺さん」の論文。
http://www.ykanda.jp/input/nihon/39.jpg
 カナタイプライタと英字タイプライタによる入力「速度」差があまり変わらないという点に関する言及(当時は「打鍵数の少なさ」はほとんどメリットとして語られていなかったらしい?)。


 「カナが倍あるのだから、シフトで折りたためば3段に収容できる」というのは神田さんの考えと同じ。ついでに言うとカナタイプにも3段配列がある。
 濁点を別打ち・文字キー扱いとするか、あるいは同時打ち・シフト扱いとするかで意見が分かれた……と考えるのが自然か。

こういうことを調べていると……

 「いっぺん、数十人くらいの被験者を相手に【飛鳥×増田式】とかで入力速度と入力感触に関するテストをしてみたいよなぁ……」とか思ってみたり。
 もちろん予算も時間もないですけどね。