それは「音の焦点」……なのか?誤解を恐れずに言い換えるならば、それは「音のバリアフリー」なのかもしれない。

(未来:妄想は、いつの間にか現実になる……という法則。 - 雑記/えもじならべあそび)
(過去:メモ。 - 雑記/えもじならべあそび)
(過去:JBL/JRX115をバイアンプ接続対応へと改造するための配線変更点メモ……というか、「音の焦点(?)」をプラセボ少なめで調整するための配線案(マニュアル・サウンド・フォーカスのための実験回路)のための追補。 - 雑記/えもじならべあそび)
(過去:(メモ)もしかすると、音の焦点合わせとかいう方法をするためには、ネットワーク回路中に含まれるBEFは外してしまったほうが良いのではないか……と思った。 - 雑記/えもじならべあそび)
(過去:「音の焦点(?)」をプラセボ少なめで調整するための配線案(マニュアル・サウンド・フォーカスのための実験回路)、その8。 - 雑記/えもじならべあそび)
(過去:プロケーブル関連でやり残していることのメモ。 - 雑記/えもじならべあそび)
(過去:これまでのプロケーブル追っかけ関連まとめ(2008年6月13日18:22:54追記あり)。 - 雑記/えもじならべあそび)
(過去:「音の焦点(?)」をプラセボ少なめで調整するための配線案(マニュアル・サウンド・フォーカスのための実験回路)、その7──超手抜きコピペ版──。 - 雑記/えもじならべあそび)
(過去:「音の焦点(?)」をプラセボ少なめで調整するための配線案(マニュアル・サウンド・フォーカスのための実験回路)、その6。 - 雑記/えもじならべあそび)
(過去:JBL/JRX115配線メモ(後に【音の焦点をプラセボ少な目で調整するための実験回路その5】となる部分を追記。)。 - 雑記/えもじならべあそび)
(過去:「音の焦点合わせ」とかいう珍妙な操作をするために最も適したソースは、実は「非音楽番組系の地上波デジタル放送音声」なのではないか?と仮定してみるテスト。 - 雑記/えもじならべあそび)
(過去:(メモ)プロケーブルさんが勝手に割り当てている「音の焦点」というものは、「等ラウドネス曲線」か「過渡応答特性一致」」には絡んでいて、「ダンピングファクタ」には絡んでいない? - 雑記/えもじならべあそび)
(過去:dbx Driverack PAを使って「音の焦点(?)」をプラセボ少なめで調整するための配線案(マニュアル・サウンド・フォーカスのための実験回路)、その4。 - 雑記/えもじならべあそび)
(過去:音響メモ──「音の焦点」をプラセボ少なめで調整するための配線案(マニュアル・サウンド・フォーカスのための実験回路)、その3。 - 雑記/えもじならべあそび)
(過去:「音の焦点」をプラセボ少なめで調整するための配線案(マニュアル・サウンド・フォーカスのための実験回路)その2。 - 雑記/えもじならべあそび)
(過去:「音の焦点」をプラセボ少なめで調整するための配線案(マニュアル・サウンド・フォーカスのための実験回路)。 - 雑記/えもじならべあそび)

 2008年7月10日5:28:13追記。
 このテキスト内で「下側波帯」「上側波帯」とかいう言葉を使っています。
 これは本来音響分野の言葉ではなくて、無線の分野から言葉を借りてきました。
 アマチュア無線の免許を取得したことがある方なら、「SSB」とか「DSB」とかいうものについて、少なくとも「スペクトラム模式図」を見たことがあるはずですし、基本的にそれらがどういうものであるかということについてもご存知かと思われます。
 あのイメージを思い出しつつ、SSBやDSBにおけるキャリア周波数と、本記事における実質クロス周波数とを重ね合わせていただくと、本記事でやろうとしていることを把握しやすくなるかもしれません。


 言葉の選び方は必ずしも適切ではありません……が、記事を書いた当時については、ほかに適切な代替イメージを提供可能な言葉が思い浮かびませんでした。
 この記事は、音響分野に新語を導入してやろうとか言うことを目的とはしておりません*1ので、その点にご注意いただきますようお願いいたします。


 とりあえず、こんな環境であれこれと調整していました。

  • ミキサー……MACKIE/1402VLZ。ミキサーと言うよりは「実験回路を簡単に組めるルータ」というべき存在、とっても強い味方。
    • Ch5-6inはソース機器からの導入。
    • Ch11/13inはDriverackPAからの戻し。
    • AltOutputはDriverackPAへの送り。
    • XLR-MainOutputはCROWN/D-45への送り。
      • XLR Output Levelは通常通り(+4)に設定。
    • TapeOutputはKENWOOD-SOTEC/VH7PCへの送り。
  • ソース機器……SONY/PLAYSTATION®3(映像出力回路が作動するとノイズが載るので、選曲時以外は映像ピンを抜いて使用)
  • スピーカ……JBL/JRX115、バンドエリミは両方とも無効化、高低ネットワーク回路分離、ドライバは位相反転せず(オリジナルとは逆相)に使用。
  • ウーファー側アンプ……CROWN/D-45、こちらは調整する必要なし、かえでオ調整法そのまま。ほんとはスピーカ1本に対してアンプ1台を割り当てる(高低分離ではなく左右分離)ほうがよいのだけれど、以下に示すように「リモコン調整」のために、今回は例外的に「高低分離」法をとることにした。
  • ドライバ側アンプ……KENWOOD-SOTEC/VH7PC、これはリモコンで音量を調整するために「ドライバ2個」を割り当てた。
  • リミッタ……dbx/DriverackPA、ソースが決まっていなかった段階で、周辺への迷惑防止のために使用。ミキサーのAltOutput送り→DriverackPA→ミキサーのCh11/13受けという経路でソース選別時に使用して、本試験時にはAltOutput送りそのものを停止(=DriverackPAをルートから除外)した。


 こんな環境で、あれこれと高音側を「リモコンで上下させながら」調整してみました。
 注意して聴くべき周波数帯は、「実質的なクロス周波数から±1オクターブくらいの狭い帯域」。
 この帯域はHPFとLPFで両端からだら下がりになってくるポイントなので、高音側の音量を上下させることによって「聴感上の帯域バランスが、音量調整に従ってシーソーのように傾いているかのように」聞こえます。
 もう少し正確な表現のみで行くと、ウーファーがドライバよりもドライバがウーファーよりも上に来るように(要は普通に)スピーカを置いていれば「音像の定位点が、音量調整に従って上下に動く」わけです。
 で、聴くべきポイントは「クロス帯域で真っ二つに分断された音声帯域人間の声の帯域のうち、下側波帯(声の基音をより多く含む)と上側波帯(声の基音に対してXオクターブ上をより多く含む)とのバランスがしっくり来る」かどうか、という点。


 調整方法としては、だいたいこんな感じ。

  • KENWOOD-SOTEC/VH7PCのボリウムを完全に絞った状態から徐々に挙げて上げていって、「これはさすがに高音がうるさすぎるよ!」という位まで、まず上げてみる。で、このときの値を紙にメモしておく。
  • つぎに、その状態から少しずつ下げていって「いや、ここまで行ったらさすがに下がりすぎだよ!」というところまで下げる。で、このときの値も紙にメモしておく。
  • 先にメモした最大値から最小値までの間で10回くらい、高音側音量を増減させてみて、変化の具合をじっくりと聴く。
  • 徐々に「この値では大きすぎる」というところと「この値では小さすぎる」という値を捨てていって、調整範囲を狭めていく。
  • だいたい数ステップ(数db)ぐらいの範囲まで候補を絞ったら、あとはその範囲内で1ステップずつ音量を変更してはじっくり聞き込んでいって、「基音と倍音のバランスが【いちばん最もらしく聞こえるポイント】がどこなのか」を探す。

 正直言って、ケーブルちょきちょき方式ではフラストレーションが溜まりすぎると思います。数十本〜数百本くらい新品を切っていくだけの精神的な余裕があるなら良いかもしれませんが、今回あれこれと調整していった感じでは「始めからケーブルでどーにかする」というのは無謀ではないかと感じています。どうしてもやるというのであれば、順序としては逆で「バイアンプ接続によって現象のすべてをきっちり確認→ケーブルちょきちょき法で再現」という風にしないと大変そうです。
 また、聴いている位置が変わるとバランスも変わってしまうので、据え置きアンプのところに行って調整して戻ってきて……とかいうのもかなり微妙。アンプかミキサーを手元に置くならリモコン無しでも大丈夫かと。
 それと、デジタルチャンデバをかませる場合は、すくなくとも88.2kHz以上のサンプリング周波数でA/D変換してあげないとダメだと思います……DriverackPAの48kHzでは、高音域表現がズタズタになってしまい、デジチャンを噛ませるか否かで大きく印象が異なってしまいますので。


 ざっとやってみた感触では、低音を担当するアンプについては(NFB掛けまくりでも良いので)なるべくダンピングファクタが「400Hzあたりで100以上」あるようなモノを選ぶ方が良さそうです……振動系が軽い小口径ウーファーなどであればまだしも、振動計振動系が重いものについては要注意かもです。
 それと、ドライバについては振動系が軽いので、ダンピングファクタは「ネットワーク素子に影響を受けて暴れない程度(せいぜい4000Hzあたりで10以上とか)」が確保されていれば、あまり気にしなくても良さそうです。


 ちなみに、この調整にはだいたい「じっくり納得いくまでやって10分くらい」掛かったかしら……耳の善し悪しにはほぼ関係なさそうで、人間が本来持っている「声によって人を弁別する能力」を元に調整できるはずです。
 「最近まるっきり他人様の声を聴いたことがなくて」……という場合はかなりきびしいかもしれませんが、日常的に数人〜十数人とかの声を弁別しているのであれば、まず大丈夫だと思います。
 どうしても迷ったときには「小口径フルレンジ」か「3WAYスピーカのスコーカー」の鳴り方を思い出して、そこに近いところの上下を試してみると、まずちょうどのところが見つかるはずです。
 ちなみに、「2つのスピーカで声の帯域を分断する」ことが肝……という仮定が正しければ、この調整方法は「フルレンジ」に対しては全く役に立たず、「3WAYスピーカ」は声の帯域をスコーカだけで持ってしまうので同じく役に立たない……ということになるのかもしれません。また、2WAYスピーカであっても「声の帯域の上方あたり」にクロス帯域があったりすると、ほとんど調整の効果が発揮できないことになりそうです。


 仕掛け上はグライコorバライコパライコなどでもできそう……なのですが、グライコorパライコの場合は「中心周波数帯の両側帯に、音量変化と位相変化をもたらしてしまう」ので、この調整方法にとってはあまり向いていないことになりそうです。


 ここまでで聴いてきた感じからすると、わたしの少ないボキャブラリからこの現象を表すとすると、たぶん以下のうちのどちらか、ということになりそうです。

  • 「音のバリアフリー
    • 実質クロスポイントに対する「下側波帯(声の基音をより多く含む)」と「上側波帯(声の基音に対してXオクターブ上をより多く含む)」との間にある「段差」を、上側波帯側の上下動によってなくす……ということからすると、意味的にも挙動的にも、バリアフリーの考え方にかなり近いモノがある様に感じる。
      • このばあい、実質クロスポイント近傍に限っては、いわゆる「フラット」と表現できうる音になる。ただし、これはもちろん「全帯域に渡るフラット化」などではない。あくまでも「実質クロスポイント付近のフラット化」を意味するのみという話。実質クロスポイント近傍以外の鳴り方はユニットやアンプなどに依存することになるので、実質クロスポイント近傍から離れたところについてはグライコなどで調整するというのはありだと思う。
  • 「ボイストーンコンパス」
    • Luxman/L-10には「1000Hzを中心にして、100Hz〜10000Hzのトーンバランスをシーソーのように傾ける」という機能(トーンコンパセータ)があった……のだけれど、アレの考えをまさにそのまま、単にパラメータを「中心周波数1600Hz近傍・調整範囲±1オクターブ?」に変更しただけ(≒ボイストーンコンパセータ)、という感じ。

 とりあえず、追試できそうな方がいましたら、一度お試しいただけますと幸いです。
 すくなくとも、従来「音の焦点」と呼ばれていたモノの実態がこれであれば、この現象は「音の焦点」という表現方法で表されるべきではない(=通常は焦点合わせといえば前後方向の挙動を連想させてしまうモノですし)と、私はそういう感触を(いまのところは)得ています。


 仮にここで言葉をうち決めにしてしまうとすると、

  • 現象を認知しやすい
  • 調整方法を連想しやすい
  • 電気的な挙動から乖離していない

というあたりが挙動に対して求められるべき言葉だとすると、一致度からいって「音のバリアフリー」のほうが、より現象に対する誤解が少なく済むのかも、と。
 日本では「バリアフリー」というと、とにかく段差をなくすこと&手すりなどを付けること、といった物質的な面だけが真っ先に思い浮かんでしまうという問題がありますが、その印象から乖離していないので、まずそこでの問題は起きないはずです。
 それと、本来「バリアフリー」という言葉には「バリアのせいで困っている人がいれば手助けをしよう!」という、心理的な意味でのバリアをなくそう……という意味もあります。心理的なバリアのない電気音響趣味が成立して欲しいなぁ……という小さな願いもこめていきたいところなので、個人的には「音のバリアフリー」という表現が適しているのではないかと、そう考えるに至りました。

おおざっぱに追試する方法。

 とりあえず、アンプを2台(うち1台はリモコンで音量調整できるモノ)用意してください。
 それと、ソース機器の音声を2台のアンプへと振り分けるために「2分岐ケーブル」を用意する必要がありますね。
 ソース機器については、テキトーに用意してください。
 スピーカについては、JBL/JRX115にかぎらず、実質クロス周波数が1500Hz〜2000Hzあたりであって、バイアンプ接続対応(あるいはバイアンプ接続用に改造済み)のものであれば、多分なんでも良いと思います。


 この状態で、「リモコンがついているアンプで、高音側のユニットを鳴らす」ように結線してください。
 結線が終わったら、低音側ユニットを鳴らすためのアンプを実際に鳴らして、普段通りの音量にします。
 その後、高音側ユニットを鳴らすためのアンプについて音量を上げ下げして、「クロス帯域で分断されていた音が、きちんと(耳で聴いた感じで)段差なく合う」ポイントが見つかるまで、いろいろと弄ってみてください。


 理想的には、低音用アンプと高音用アンプが同一機種であって、かつ音量表示が「デシベル表示」のものが良いのかもしれません。
 そうすれば、実際に調整したあとから、テキストとして「○○というアンプと○○というスピーカを使ったときに、高音側を低音側に対して○○dBにしたときがちょうど合っていた。」というふうに書くことができるので、追試による再現性を確保できることになるはずですので。
 #デジベル表示があるミキサー&相対特性がそろった4ch分のアンプを用意すると、機種が違っても追試できる、という可能性もありそうですし。


 ……と、インピーダンス測定のための部品*2が見つからないのでお茶を濁してみるテスト……まるでダメじゃんorz。

ふと思った。

 基本的な実験をするだけなら、高音用アンプとしては「中古屋で売っている数千円のアンプ」で十分だと思う。
 ラインケーブルについても、実際には「どこにでも売っているモールド品」で大丈夫なのかも。
 スピーカケーブルについては、端子にきちんと刺さるのならばVVFかEM-EEFかなぁ。好きなケーブルを使えばいいと思うけど、なるべくカラーがつかないものを、短めに使う方が実験しやすいと思う。

*1:正直、できるだけ「圧縮音源」と同じ過ちは繰り返したくないのです……orz。

*2:たしか、どこかに8Ωのメタルクラッド抵抗器が4個くらい転がっていた気がしたのだけれど、どこにあるのかさっぱり解らないんですよね……。