「USB(揺れすぎバス)」問題を回避するための、もっとも安価で確実な解決方法。

 DACの音質を語るには、2つの評価軸がある。

  • Frequency domain、高音がどうこう……とか、そーゆーいわゆる「音質」に関する話。

 機器で使う部品には、それぞれ「周波数ごとの応答特性」がある……のだけれど、オーディオ機器に関して言えば「デジタル部分には高周波特性が良いもの」を使って、アナログ部分については「オーディオ帯域で特性が平坦なもの」が使われていれば、一般には音質が良くなると考えられる。
 ステレオ感を出すには、一般に「Frequency domainで、左右の帯域毎音量差と位相差がないこと」がすごく重要なのだけれど、部屋の特性までは電気屋が設計するわけに行かないので、たとえば近年のAVアンプは「音場自動調節」ってゆー静的なネガティブフィードバック機能を使って、それを補正している、と。

  • Time domain、こっちは「空気感」とかで語られる気がする。

 こっちは一般に語られることが少なかった……のだけれど、他のデジタル機器より精度が数桁悪い「USBサウンドバイス」が十分に普及したこれから、だんだん問題として取り上げられる機会が増えてくると思う。
 「揺れ」って言っても、音程が狂うようなひどい話ではなくて、測定器レベルで見る限りだと「こんなの人間の耳じゃ検知できないだろwww」って状態……なのだけれど、不思議とCDプレーヤー精度から数桁揺らぎが増えると、(単体では検知限界以下なのに)全体としては「違和感」として発現してしまう……という、厄介な問題をはらんでる。


 ……で、厄介なのは、「音楽が、正弦波のような特性から、ちょっと外れた性質を併せ持ってる」ってところ。
 これが絡むと、「Frequency domainだけ見たときによければOK」とも「Time domainだけ見たときによければOK」ともいえなくなって、両方がマトモな領域にならないと、安心して音楽を聴けない……ってゆー状態に陥ってしまう。
 それこそ、ずーッと正弦波を通して測定すると、全然問題がないように見える……ってやつでも、音楽自体は過渡特性をたぶんにはらんでるせいで、ある特定の楽器の音とかがすごく崩れたりする。
 オーディオ領域だけなら、それは「個性」として言い切れた……のだけれど、今後AVが普及するに伴って「画が変わっているのに、音ではその差をさっぱり聞き取れない」みたいな、今まで荒く解決していたことがさらけ出されるんじゃないかという気がする。


 幸いにも、「人の好みで大きく評価が変わる」Frequency domainの話とは違って、Time domainの話は「目標が普通の据え置きCDプレーヤーレベル」にあれば、まぁなんとかなる……ってゆー、わりと解りやすい目標があるので、まずはそっちからやっつけていこうと思う。
 #今後のUSBサウンドバイスでは、「Time domainを補正する、USB-TOSLINKコンバーター(DDC)」と「Frequency domainを人の好みに合わせて設定する、TOSLINK-アナログコンバーター(DAC)」の組み合わせが一般化したり、RATOCのナローASYNCモジュールを搭載する例が増えたりするんじゃないかという気もする。


 ……ってなわけで、いま思うところを候補として列記してみる。
 USBデジタルデータを、S/P DIFデジタルデータに変換する「DDC」についてのみ書く……ので、そこからTOSLINKで引き出してアナログデータに変換する「DAC」については、個々の好みに応じて選出して欲しいところ。

PCIサウンドカードの、デジタル同軸、TOSLINK、もしくはアナログ直出し。

 これが一番簡単。
 アタリのマザーボードだったら、マザー直出しでも結構良い音になる。
 ただ、「あたりが出るまでくじを引かなければならない」ところがあって、【総導入コストを見たときに、安価な解決方法】とは言い切れないところが問題かも。
 #ハズレを何個も引くくらいなら、同じ金を掛けて「あたりと解っているもの」を買うほうが遥かに確実だし。

LAN-DDC、もしくはLAN-DACの導入。

 サーバー側で操作して、iTunes音声だけ通せれば良いときは↓。内蔵の無線LAN区間はOFFにするほうが良い……けど、ONのまま使ってもLAN-DDCとして使う分には許容範囲かな、と思う。クロック精度は一般的なUSBDACよりも2桁くらい良い感触で、「とてもよくできたシリコンポータブルプレーヤー」か「普通のCDプレーヤー」と同等……と思ってもらって、そう間違いじゃない。

アップルコンピュータ AirMac Express ベースステーション with Air Tunes MB321J/A

アップルコンピュータ AirMac Express ベースステーション with Air Tunes MB321J/A

 クライアント側で操作して、DLNAサーバーからのデータさえ通せれば良いときは↓。↑よりは1桁くらい?精度が悪い感触があって、コストパフォーマンスはそれほど良くない(HDMI送り出しをするには良い選択だと思うけど、TOSLINK送り出しにはあまりメリットがない)。 いずれもLANDDC、およびLANDACとして動作する……けど、全部LANDACとして使うにはDACの性能が貧弱なので、一般的にはLANDDCとしてのみ使用して、TOSLINK経由で「お気に入りDAC」に導入するべきだとは思う。
 ただ、LAN-DxCの場合「PCの音声全て」を出すことができない……かなり出力アプリケーションが限定されてしまうので、それを許容できる環境(PC用サウンドシステムと、オーディオセット用サウンドシステムを分離したい場合)とかにしか適用できないってのが、運用上の問題点になると思う。

ASYNC受信対応の、USB-DDCもしくはUSB-DACの導入。

 あくまでもPCの全音声を通したいときは↓。

 実際に聞いたことがないから、内蔵DAC経由のアナログ出力についてはコメントできない……けど、同じナローASYNC機の↓と「揺れの出方」は同じはず……なので、USB-DDCとして使うには信用できると思う。
 DACとしての音質については、評価してる人が多い中で言うのもなんだけれど、構成上は「良く練られたポータブルオーディオプレーヤー(たぶんalneo@Victorあたり)と同等レベル」でしかないと思う。
ラトックシステム USB ヘッドホンアンプ RAL-2496HA1

ラトックシステム USB ヘッドホンアンプ RAL-2496HA1

ちなみに。

アップルコンピュータ AirMac Express ベースステーション with Air Tunes MB321J/A

アップルコンピュータ AirMac Express ベースステーション with Air Tunes MB321J/A

 ↑をLAN-DACとして使ったり、↓をUSB-DACとして使ったりして、これらをホームオーディオに繋いでテストした感じだと、まさに「普及価格帯のCDプレーヤー」か「良くできたポータブルオーディオフレーヤー」みたいな印象。
 Frequency domainとしてみたときの音質については「ツマラナイ」印象だけれど、Time domainとしてみたときの性能については「十分に聴けるレベル」だと思う。
ラトックシステム USB ヘッドホンアンプ RAL-2496HA1

ラトックシステム USB ヘッドホンアンプ RAL-2496HA1


アップルコンピュータ AirMac Express ベースステーション with Air Tunes MB321J/A

アップルコンピュータ AirMac Express ベースステーション with Air Tunes MB321J/A

 ちなみに、↑をLANDACとして使い、別階の音楽サーバーで出した音声を受けるようにして、音楽を聴く部屋のPCは操作時以外スリープモードにすると、これはこれで結構良い感じだったり。
 そういう使い方をするときの「操作用PC」には、タブレットPCが一番向いているきもする。
 #いままでは「PCのノイズに埋もれて、良い音が聴けていない」のだと思っていたのだけれど、PCを落としてもマトモだったので、そこにホッとしていたり。


 ……こっちもゆっくりテストで行こうと思う。
 おおむね「最も安いDDC」の候補は、こんな感じ……なのだけれど、あとはここからTOSLINKでつないだ先について、「最も安いDAC」として何をつなげれば良いのか……ってので悩みそうな気はする。
 ただ、もしも「Frequency domainでは良くできてるけど、Time domainの揺れが気に食わないというDAC」を持っていて、そいつにTOSLINK入力端子があるなら、素直にそれらを繋ぐのが、コスト的にも一番いいと思う……たとえば↓みたいな感じで。

アップルコンピュータ AirMac Express ベースステーション with Air Tunes MB321J/A

アップルコンピュータ AirMac Express ベースステーション with Air Tunes MB321J/A

サンワサプライ KM-HA12-10 光デジタルオーディオケーブル

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ONKYO SE-U55X(S) WAVIO USBデジタルオーディオプロセッサー シルバー

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 普通に考えて、そーゆー機種って「TOSLINK接続で良い音が出るように設計して、その先にUSBデコーダーをつける」構成のはずなので、DDC経由にすればむしろ理想的な動作状態に近づくはず……だから、「お気に入りのDAC」を無視するのは変な話だし。


 ……ただ、Time domain系もハマりすぎると「原子時計精度のクロックが〜」とか言い出しがちなので、切り上げるなら早めに切り上げたい気もする。
 個人的には、USB接続かつ無対策なモノだけが気になって、CDプレーヤレベルなら余裕で満足できるから、そこから先の精度なんて「どーでもいい」のだけれど。