失敗から学ぶ、ということ。

 ごくごく初期にぎっちょんさんから教えていただいた「セールスマンは失敗から学ぶ為にレポートを書く」という話に絡んで。


 科学技術振興機構による試みとして、JST失敗知識データベースが公開されたようです。

失敗事例を分析して得た教訓を知識として活用できるようなデータベースを目指して開発しました。
(2005年3月23日 失敗知識データベースの一般公開開始について〜より。)

 失敗を元に事故を減らして来たものとしては、主に飛行機事故が挙げられるでしょうか。
 墜落―ハイテク旅客機がなぜ墜ちるのか (講談社プラスアルファ文庫)という書籍が出るように、飛行機事故自体は無くなっては居ません。しかしながら飛行機は、自動車などよりもよほど安全な乗り物へと変化していったこと自体は、誰にも否定できない事実となっています。


 これを実現するきっかけとなったのは「事故調査」という仕掛けでしょうか。
 例えば自動車事故では「警察」と「保険屋」が関わって、「誰が事故を起こしたか」とか「誰がどれくらい弁償するか」と言ったことが話し合われます。
 実際の事故自体について正直に言及されることはほぼ無く、「互いの言い分のみを聞いて、現状の証拠のみを頼りに」事故処理が行われておしまい、というのが現状なのでしょうか。
 飛行機事故が起きた場合は、これに「事故調査」が加わります。
 「あなたが何を聞き、何を知り、何をしたのかを話してください。証言内容は秘密のままとしますし、証言が何らかの証拠として採用されることはありません。あなたが不利になるようなことはありませんので、全て正直に話してください。
 …と、こういったことを言って、事故の原因そのものについてを聞き出すのが「事故調査」の役割です。
 ここまでしなければ本当の話・失敗の理由を聞き出すことは出来ません(失敗を責められると思えば、誰も自分にとって不利なことなど言いません)から、こういう仕掛けは重要なのだと思います。
 そうやって、根本原因を発見しては対応する…というサイクルを重ねることによって、飛行機事故は減ってゆきました。


 果てさて、他の業界ではどうでしょうか?
 クレームなどなどが発生したときに、口では正直に言えと言っても、あとでそれを元に叱責するなどということがあるのではないでしょうか。

 同じ事が、製品やサービス以外についても言えます。
 例えば文字入力手法が覚えられなかった場合、大抵は「覚えられなかったから止めた」と言うのみで、その原因を追及しようとはしません。
 では、覚えられなかった本当の原因は、一体どこにあるのか?と言う話になると、これをきちんと追求している例はほぼ皆無なのではないでしょうか。


 例えば私は、未だに(かつて挑戦し2度挫折した)エミュレーション環境下でのNICOLAについて、「自分がなぜそれを習得できなかったのか」を知りたいと思っています。(恥ずかしながら)習得し損ねた記録は残し公開していますし、専用キーボードを買って「はじめからこれを買っていれば…」と後悔したことも書いたりしました。

 飛鳥を習得し損ねた方が悲鳴を上げられていたときも、「その悩みをあらかじめ解決する方法はなかったのだろうか」と悩んでみたり、「そういう方には本当に飛鳥を勧めて良いのだろうか」と考えてみたりもしました。


 今はとにかく、色々なことを試してみるしかありません。
 飛行機事故の調査と違って、できることは限られています。
 でも、何もしないままでは絶対に良くはなりませんから、今は「誰にどういう入力手法が合っているのか」とか「その入力手法を無理なく覚えるには何が必要か」とか、そういうことを手探りで探していきたいと願っています。