yfi的視点による親指シフトキーボードレビューもどき 〜 FMV-KB231 NICOLA-J型109キーボード 〜

 【このレビューは、日付表示を伴う形での追記を行う可能性があります】


 親指シフト(NICOLA)キーボードとして富士通が販売し続けている FMV-KB231 というキーボードを買ってしまいましたので、これについてレビューしたいと思います。
 で、レビュー前に注意点を一つ。このレビューは、RealForce109(の30gモデル)を使用している方にとっては全く役に立たない可能性があります…というのも、本当はそっちを先に買ってレビューするべきものだったかもしれない気がしてきましたので。従いまして、キー挿下抵抗に関する記述については眉唾物と思っていただく必要がありますので、この点についてはご容赦下さい。


 本キーボードの特徴は、基本的には109キーボードを継承しています…が、機能キー段についてはかなり毛色が異なっています。


 まず目につくのは「親指左」「親指右」キーの存在です。これらのキーは、その下にぶら下がっている「変換」「無変換」キーと並列に接続されていて、物理的には別々ですが電気的には同一の機能を果たします。
 専用キーボードに慣れてきた人にとっては、この無意味にも思える「変換・無変換キー」の存在が(同一のインターフェースで扱えるという観点では)重要でしょう。
 また共用キーボードに慣れてきた人にとっては、下段の「変換・無変換」キーを無視して「親指左・親指右」キーでの変換操作もできるようになっています。
 なお、この「頻度の高いシフトキーと、そうではない変換・無変換キーが共用であることが許せない!」という方は、素直にIME側で「変換・無変換キーから、変換・無変換に関わる操作を一通り除去する」ことで、単なるシフトキーとして作動させることが出来ます。この場合、変換操作は空白キーを用いる(従来のキーボードでスペースキーを押しながらやっていたことと全く同じ)方法で変換できます。
 どちらが自分に合っているか…という点については、各自お試しいただくのが宜しいかと思います。
 ちなみに私は…「文字キーと同じくらい大切なキーに変換・無変換を共用させるとは何事だッ!」というスタンスですので、素直に空白キーを使って変換することにしました。そのうちキーボードをバラして配線替え(変換キーには空白を並列割り当て、無変換キーにはEnterを並列割り当て)をしようかと計画中ではありますが。
 「親指キーの高さ・位置・幅」は必要十分でして、きちんと「変換・無変換」キーの誤打を防止すると共に、あまり挿下に向いていない親指を無理に押し下げる必要もなく、この点でも快適に打鍵できます。

 ワープロ専用機の流れで、空白キーはセンタから外れています。当然英文を打つには少々窮屈ですが、英文などまるで打つ気配もない私にとってはまあ許せる範囲かな…いや、変換キーがセンタに無いのは許せないですけど、取捨選択で選んだからにはしょうがないですな。


 そして「ひらがな・右Alt・右窓・App」キーは3/4キー幅へと圧縮されています…これは頻度が低いでしょうから、まあ何とかなるかな。
 ただし、できれば「ひらがな」キーだけは1キーサイズにして欲しかったですね…「Alt+ひらがな」によるローマ字←→JISかな切り替えがしづらいキーボードというのは、ローマ字入力者とJISカナ入力者との関係を悪くする元凶となりますので、これだけは圧縮しないで欲しかったです。


 さて、肝心のキー打鍵感についてなのですが、キーそのものの打鍵感はそれなりに軽く、トップ付近に多少の抵抗感がある所(誤打防止の仕掛け?)を過ぎると、それよりほんの少し緩い力でスッとキーが降ります。
 残念ながらキーを押しきらないと文字が入らない(普通のスイッチ式か?)点や、まだまだ挿下抵抗を軽くする余裕があるはず(個人的な希望になってしまいますが、もうフェザータッチといわんがばかりの軽いキーボードにして欲しかった)点が僅かに残念ではありますが、経年劣化などによるヘタリを考慮すると、購入当初の特性としては非常に納得がいく内容に仕上がっています。
 この程度までキーが軽ければ、多少の無理な運指があったとしても指に負担がかかりがたいですので、別配列に使用する場合であっても十分納得がいくのではないでしょうか。
 むしろ、このキーボードに慣れてしまうと、ノートなどでの疑似親指シフトキーボードに戻れなくなってしまいそうで、その点が非常に心配になってしまいます。

 さて、他に気になることといえば…

  • 打鍵音は安っぽくはないものの、かちゃかちゃとうるさいですね。打鍵せずとも、キーに指をおいて左右に揺り動かすと、全てのキーがガチャガチャと甲高い音を立てます。静かに打鍵するにはまるで向きません。
  • キー上の印字は全てレーザーマーカーによるものらしく、その辺にある780円キーボードとほぼ同じ印字品質です。ただし文字のフォントはきちんと日本語ゴシックのフォント(異字体漢字などはない)ですので、「単に印字濃度が薄い」事を除いては、さして気にならないものなのかもしれません。
  • ホームポジションを示す凸マーカーが、なぜか「AFJ;」の4キーに存在しています。何を目的にこうマーキングしたのかは不明ですが、人差し指から小指までの間隔を常に保つために有効ですし、人差し指伸ばすな操作をしてもホームポジションを失いづらく、この小指マーキングは非常に便利な存在です。

 このような感じでしょうか。とにかく「いかにNICOLAのままでも打ちやすいキーボードとするか」という点にこだわっており、親指シフト系配列を打鍵するには非常に良いキーボードだと感じました。


 このキーボードを使用する場合、一般にNICOLAエミュレーション環境にありがちな「小指を使いすぎて痛くなる・人差し指を変に伸ばしてしまって痛くなる」という可能性をほぼ否定することが出来ます。
 NICOLAを試してみたけどどうにも自分の指には合わない…でも親指シフトは続けたい…とお思いの方で、懐に多少なりとも余裕があるようでしたら、是非とも購入を検討していただきたいですね。

ちなみに。

 キーボードを買ってみたけどどうしてもダメだった・キーボードを買うまでの金銭を捻出することは出来ない…という方は、そのままローマ字やJISカナへ戻ってしまう前に、一度「飛鳥」という親指シフト系配列の使用をご検討下さい。
 (注:現状の飛鳥は「最終リリース候補」でして、あと1回だけ配列替えが行われる予定です…約半年後のリリースを予定しているとのことです。従って、まだ万人にお勧めできるという状況ではありません)
 飛鳥とNICOLAでは、運指範囲やシフトの変移タイミングがNICOLAとはかなり異なりますので、「NICOLAは良いけど飛鳥はダメ」とか「飛鳥は良いけどNICOLAはダメ」という方が居てもおかしくはない状況ですので(というか私は後者でした)、検討の価値はあるものと思われます。
 #いや、ほかにも候補はありますが…それも提示するべきでしょうか…。


 また、ノートPCなどの浅いストロークに慣れきっている方は、文字落ちなどを経験することとなるかもしれず、少々辛いところがあるかもしれません(普通のデスクトップ用キーボードに慣れている方なら問題ないはず)。