年末らしく、日本語入力用配列環境について、超ざっくり振り返ってみたり……。

 ……って、ホントにざっくり、ですけど。
 あと、途中から妄想モードになります(現在位置を元にしながら、今のうちに予測してみようかな、という試みとして)。
 ……ってゆーか、70年分を「こんな纏め方」しちゃって、ホントに良いのだろうか……すごく不安だ。

1970年代──かな漢字変換技術の、夜明け前。

 この頃は、タイピング技術が「職業的であるべき」か「読み書きソロバンの続き」か……ってところで、設計者のビジョンが揺れていた時代だと思う。
 今でも、大量のコピータイピングをするには「速記法またはその簡略法」とか「漢直法」が使われる……けど、それよりも下の「創作文タイピング」用途として使える「かな漢字変換」ってのが実用化段階に差し掛かったのは、この時期。
 このあたりについては、古瀬さんが書いた【ワープロ発明者の知られざる末路(PDF)】を読め!といいたい。

1980年代──かな漢字変換技術の、夜明け。

 東芝とか富士通とかが『かな漢字変換』でヒットを飛ばして、民生機がどんどん『かな漢字変換』にシフトしていった時代。
 「JISかな」「Qwertyロマかな」「親指シフト」あたりの実装は、このころ「かな漢字変換用として」固まった。
 その後もこの年代のうちに、コピータイピング屋さんが引き継いだ簡略速記的な性質を持つ「M式」とか、大規模分析系のカナ配列にとって始祖的存在の「新JISかな」とかが生まれてる。

1990年代──「清書機・年賀はがき印刷機・定型文保存機」。

 何でもかんでも紙媒体にしてから受け渡ししてた、最後の年代。まだ「一般人が創作タイピングをする」ってのが一般的じゃなかったし。
 ……ただ、大規模解析は無理でも、小規模改定ならイケる……ってのが認識としてあったのか、この時点で「拡張ロマかな系」は発表され出してる。
 個人ユーザーにとって特に有名な例だと、bemuさんによる「AZIK」かなぁ。
 M式とか、SKYとか、そーいったところとの絡みもあって「行段系」の研究はだいぶ進んだと思う。

2000年代──インターネットが作り出した、創作文の文化。

 行段系配列の成熟期──特に前年代から2005年頃に掛けて、ほとんど一揃いで尽くしたんじゃないか?ってくらいに行段系配列が公開された。この傾向は、おそらく2015年頃までは緩やかに続くと思う。
 一方で、ようやく「かな系の配列を、個人所有のコンピュータで処理するための、ソフトウェア&ハードウェアが揃ってきた」ってことも手伝って、一旦『花配列』以降途絶えていた『かな系配列』の開発が、2003年頃の月配列2-263登場を境に、爆発的に増えた。計算配列と手捏ね配列がたくさん提案されて、それぞれのメリットを吸収しつつ深化してる……ってゆー状況。

2010年代──「ロマかな育ち世代」が、三十路の壁にぶち当たる。

 ここから徐々に【日本語入力について『経験者として、語れる』人】が増えてくる
 「ロマかなオッサン共」に育てられた「ロマかな育ち世代」が、続々と「運指律速」の壁にぶち当たりはじめる……オッサン共は「オッサンになってから覚えはじめてる」から影響が無くても、「運指速度のピークを経て、ディップ期に差し掛かった」コ達の中には、『騙された!』って感じるのもいると思う。
 20代前半頃だったら『拡張ロマかな系×数%落ちただけの運指速度』で十分でも、三十路に差し掛かると『かな系×十数%落ちた運指速度』くらいでなきゃ、十分余裕を持ったカバーリングはできなくなってくるんじないかと。
 「勉強本」による加速効果は既に消えているので、「親指シフト」については別の普及策が必要かも。
 かな系配列は、ここあたりから成熟期に突入して、あとはだいたい2025年くらいまでかけて、緩やかに開発が続くと思う。
 「ロマかな育ち世代」で、三十路に突入して苦しみはじめとしても、この年代には『既にたくさんの手法・配列・概念』が開発済みだから、十分選り取りみどりで『自分で一から作らなくても、合いそうなものを選んで試せる』状態になってる……って意味では、【きちんと、納期に間に合った!】って感じだと思う。


 唯一納期に間に合ってないのは「ホップ(ロマかな)を経験した人が、ステップ(道具の選択眼を養うためのテスト乗り換え)を経由して、ジャンプ(3配列目では、きちんと自分に合う入力法に到達できる)」を実現するためのコンテンツがない……って事か。現状では『何ステップすれば良いのか?さえも見えない』ってのが、とても厄介だと思う。
 個人的な取り組みとしては、ここを「マルチシフト対応の1配列」で実現できないかって考え方で「かえで配列」を作ったんだけど、あまり上手く機能しないことが確定してる*1ので、代替案をさがしてるところ。

2020年代──「鍵盤配列」か「ジェスチャ」か……。

 この頃には、実際に「鍵盤配列」か「ジェスチャ」か……ってところで拮抗するようになると思う。
 もっとも、鍵盤配列だって『配列によって固定された、押下型ジェスチャ』の一種だから、この2つは共存するだろうけれども。
 ジェスチャの方が情報密度は濃く出来るから、ジェスチャでもやっぱり「擬似速記方式」とか「擬似漢直方式」みたいなのは開発されると思う……それと、「鍵盤配列(絶対位置指定)+ジェスチャ(相対ベクトル指定)」になってるもの(たとえば、appleのflickとか)は絶滅して、「ジェスチャ=完全相対式」って図式になってそうな気がする。
 この頃のジェスチャは、たぶん「手話」の技術に近いところを取り込んでると思う。

2030年代──「日本語入力用キーボード配列」が、技術史カテゴリで本になる。

 ここは安岡センセか、同じくらいとことん調査する人による記述を期待したいかも。
 

*1:……ってゆーか、ここは「かえで配列wiki」とかを作って、そーゆー目的のために使うことを前提にしたコンテンツを作らなきゃダメなんだけど、そこに着手できてないのも一つの原因。鍵盤配列を習得するために必要な、『たった二つ』のこと。 - 雑記/えもじならべあそびの考え方を使って、あのあたりのWikiを全部ひっくるめて再構成して『90カナの1-gram運指を、累積22.5時間で覚える』事を前提にしたコンテンツとして、真面目に再構成する必要があるところ。