懐かしくて新しい親指シフトキーボード、FKB7628-801。でも、問題点が一つだけ……。

 「懐かしい」ってのは、昔使っていたギヤリンク搭載ノートPCのときの印象から。
 「新しい」ってのは、このキーボードが「親指シフトエミュレータを搭載するシステムでさえあれば」どんな機種でも使えること。
 この記事自体も「やまぶき」で打っていますが、何のトラブルもなくすんなり使えています。
 あと、カラーリングが「青っぽい灰色」になってるのは面白いですね……識別性がある中で「視界の邪魔にならない」色が、上手く選ばれていて、清潔な印象があります。


 ……このキーボード、実際に「高級ノート機によくある、最初は重めで使ううちに軽くなってくる」パターンの押下特性をうまく出しているみたいで、使っていて心地よい打鍵感を得られます。
 それから、鉄板を入れて重くなることをぎりぎりまで避けようとして、シャーシ裏面を「エンボス加工風(絞り加工風)」にしてるのも面白いですね……ああすると金型代が高く付くので、普通は「量産化効果で価格を下げたい、量産機向け」の技術なんですけど、それを「軽さ実現のために」やった……ってところに、思い切りの良さを感じました*1
 わたしは「かえでライティあすか」で打っているから、一部のキー位置が違っていて戸惑うことはある……のですが、その部分を割り引いて考えると「安物パンタグラフよりも、一段上の打鍵感」がある感じで、【どうせ親指シフト仕様だから高いだけで、中身はただのパンタグラフなんだろ?】みたいな感じは受けないですね。
 10年以上たって「記憶が美化」してたかな……と心配になっていたのですが、2010年の今でも「ギアリンク方式はいい」って感触がそのままあったところには大満足。
 それから、キーボードチルトに「爪」が付いていて、起こしたり倒したりするのが「キーボードを裏返さなくてもできる」工夫もいいですね。


 全体的に、「いちまんごせんえん」のキーボードがやるべき品質目標は、きちんと達成してると思います。
 「マイナー配列用のキーボードだから」なんて甘えなど全く感じさせない、価格の高さに見合った「よくできたコンパクトキーボード」だと思います。


 ただ、惜しむらくは……親指キーのかさ上げによって、そのほかのA段キー&B段キーが打ちづらくなっていることかなぁ。
 そして、想像していたのよりも「A段下のふくらみ」が高くなっていて*2、これでは常用するにはちょっときついかも。

 A段下のヒンジが高すぎる&親指キーだけかさ上げしてごまかしてる……ってのは気に食わないのですが、評価打鍵してるときに因果関係がひっくり返っちゃったのかなぁ……。
 だからといって、A段キー全部をかさ上げすると、B段全てが打ちにくくなってしまうので……A段キーの高さと、A段下ヒンジの高さとの相対高さについて、もう一段踏み込んだ研究が必要なんじゃないかな、と感じました。


 それにしても、A段下のヒンジに端から端まで付いた「ふくらみ」は、一体なんなんだろう……親指キーの高さが「必要となった理由」が、この「ヒンジのふくらみ」だったりしたら、もー本末転倒としか言いようがないので、そういう「浮いてる」気がするところだけが気になりました……。
 それ以外のところは全部◎なので、「どうしてこうなったんだろう?」ってところが、すごく謎です。
 #上の絵にあるような「キーのスカート」なんかつけなくても、ヒンジを可能な限り低くするだけで、結構問題は回避できる気がします。


 「フレーム部手前ヒンジ側」と「親指キー」に関する金型の起こし直しが利くなら、今のうちに【FKB7628-801A】を設定してもいいんじゃないかと思いました。
 他は全てがイケてる……ので、ビジュアルも基本設計も、まるっとそのままで「あと半世紀以上」は使いまわしても良いと思います。
 ってゆーか、ぎっちょんさんとこを拝見すると「親指キーがもっと低い、謎の試作機」があったッぽいンですけど、個人的にはそっちを触ってみたいですね……。
 #個人的には、今から「A段下のヒンジ部分&親指キーを『それぞれ削って低くする』する」か否かで、結構迷っています……買ったばかりなのにどうよ?ッて感じですが、今のままでは使えないので。

*1:ただ、凹み付けのパターンには問題があって、いまの平行パターンでは「対角ひねり」に対する効果がないところはもったいないかも。×印と□印を組み合わせるとか、いろいろなパターンを設計してみて「ひずみパターン」を計測するとか、もうすこし研究の余地はあると思います……着眼点が良いので、そのうち良いパターンが見つかるでしょうね、これは。

*2:あれこれ試した感じからすると、「キーボードチルトを立てて」使ったときに、ちょうど良いヒンジの高さになるよう意図したのだと思います……が、これは「キーボードチルトを立てずに使う」には余計なお世話ですし、チルトは可変でもヒンジは固定なことを考えると、ふつうは「チルトを寝せても、邪魔にならない」ように設計するべきなので……どうにも納得のいかない作りなんですよね。チルトを立てる前提なら、チルトは立てた状態で「寝せることができない」設計になっているほうが自然なのに、チルトには耳が付いていて「いつでも調節しやすい」作りですし。こういう「(複数人の意図の間で揺れ動いてしまったような)微妙にちぐはぐな作り」ってのは、どうにも気になってしまいます。もっとも、【チルトは立てて使うことが大前提で、寝せて使うことは一切考慮してない】のであれば、割と納得いく話……なんですけど、そうするとこれは「私にとっては使えない」ので、手放すしかないですね……。