【思考実験】シフトキーの時間軸押下コストを「何パーセントとして配列設計する」べきなのか。

 【何かのキーを打ち終わる→次の文字をシフトするために、文字キーではなくシフトキーを押下する】ってゆーアクションが、【何かのキーを打ち終わる→シフトをかけずに文字キーを押す】ってゆーアクションに対して、どの程度短い時間で打鍵されることを想定して、配列を設計するか、ってゆー話。

 ……これは「外部要因によって勝手に決定される」んじゃなくて、たぶん「利用者がどの程度の使い込みをするのかを予測して、配列設計者がうち決めする」ものだと思う。


 運指律速ぎりぎりの領域でコピータイピングするなら、当然100%(シフトキーも文字キーも、同じ時間かけて打鍵する)と考えて設計しなきゃ、配列の性能が出るわけない。
 「近くの2打より、遠くの1打」を突き詰めると、この領域に到達する。
 たしか、新JISかなは(シフトキーに係数をかけていなかったと思うので)100%設計になっていると思う……ってゆーか、もしも20%設計にしていても「高頻度かなは問答無用でアンシフトに」ってゆールールがあったわけで、大勢に影響はないのだけれど。


 逆に、運指律速に対してすごく余裕がある習熟初期領域で「すばやく打てるように意識させる」なら、見かけ上10%程度となるように特異的な打ち易さを提供するってゆー手もある。
 「遠くの1打より、近くの2打」を突き詰めると、この領域に到達する。
 行段系だとこの性質が特に活かせて、たとえばM式はこの特性をうまく使って「初期習熟曲線が、極端に早く立ち上がる」グラフを提示してたよね。これはインチキでもトリックでもなくて、シフト打鍵時間率を低く(30%と見なして)設定して設計したから、と。


 ……って、そーゆー極端なのを除くと、新JISかなのグラフから推測する限り、「アンシフトもシフトも極限まで有効に使う」ためには、シフトの押下コストを67%くらいと考えて設計するのが現実的だと思う。
 コピータイピングでのアンシフト打鍵速度が300keys/min(0.2sec/key)の人にとって、1.3打鍵系配列(ほとんどの単字かな系が、このあたりの効率を持っている)では以下のような振り分けができる、と。

── 文字キー シフトキー 最適用途
100%として設計 230.77打 69.23打 コピータイピング用配列・競技タイピング用配列
67%として設計 152.31打 69.23打 長期間かけて習得するタイプの創作文タイピング用配列
33%として設計 76.15打 69.23打 中期間かけて習得するタイプの創作文タイピング用配列
10%として設計 23.08打 69.23打 短期間で習得するタイプの創作文タイピング用配列

 シフトキーの打鍵所要時間は上限(0.2sec/key)にはりついたまま、文字キーの入力速度のみを落としていくことになるので、こんな感じになる、と。
 平坦に入力する人なら、33%設計の配列でも使いこなせると思う……けど、入力速度に偏りを持たせてつかう入力法の場合は、100%設計にはしなくても67%設計でちょうどよくなるようにするほうが、感覚的な打鍵速度は向上すると思う。
 大和言葉のような最適化しにくいところは33%設計(シフトに割りと頼る)で、漢音や普段使いの言い回しなどは67%設計(シフトの切り返しを避ける)にするとか、そーゆーあわせ技的な設計もありだと思う。


 100%設計にすると、一見速く打てる……様に思うのだけれど、「遅くなってもいいからシフトにするほうが、楽に打てる」パターンを取りこぼす機会が多くなってくるし、実際の創作文打鍵とはだいぶ乖離してしまうから、「コピータイピング用配列」を目指さない限りは、もう少しシフトキーが「かなキーと比べて差別的に」操作されていると看做す設計をするほうがいいのかも。
 ……って、「かえであすか」自体をこういう考え方で設計してなかったから、正直言って自分でもピンと来てません……ダメじゃん。

どうやって設計するべきなのか──計算配列編。

 ……単純?に、「とあるキーからシフトキーへの指移動時間(打鍵時間間隔)」に対して、あの表のように係数を掛ければいいだけ。

 下の表では、「濁点・半濁点」キーもシフトキー扱いとしている点に注意。ゆえに「文字キー打鍵数=入力されるカナ文字数」とみなしてかまいません。
 手書き速度の倍(漢字かな交じりで60字/分)で実用速度に達する……ので、省入力を使わない文字入力法では、60字/分の「倍の二割り増し」(シフトを除いて144打/分)を打てる領域の多い配列ならば、十分な入力速度を得られると考えることができます(これは平凡な「かな入力法」の目標値として使えるはずです)。
 省入力を使う入力法では、シフト打鍵時間率を33%位にまで落としても、「かわりにたくさんの手順を覚える」ことによって、実質的には67%配列と同じような機能を満たす設計が可能になります(これは平凡な「行段系入力法」の目標値として使えるはずです)。

── 文字キー シフトキー 最適用途
シフト打鍵時間率を100%(1/1倍)として設計 230.77打 69.23打 コピータイピング用配列・競技タイピング用配列
シフト打鍵時間率を67%(2/3倍)として設計 152.31打 69.23打 長期間かけて習得するタイプの創作文タイピング用配列
シフト打鍵時間率を33%(1/3倍)として設計 76.15打 69.23打 中期間かけて習得するタイプの創作文タイピング用配列
シフト打鍵時間率を10%(1/10倍)として設計 23.08打 69.23打 短期間で習得するタイプの創作文タイピング用配列

 下に行くほど「遠くの1打より、近くの2打」に高頻度かなが配置されるようになるので、打鍵数は増えます。
 下に行くほど、(律速操作のシフトキーよりも、文字キーが遅く操作されるので)実効打鍵速度は低下します。
 下に行くほど、高頻度文字群を打つための運指範囲は狭くなるので、誤打鍵率は低下します。


 たとえば、オフィスで使うのならば

  • オフィスワーカーが長時間にわたって重負荷で使うのならば、シフト打鍵時間を67%(2/3倍)として設計するのがいい。
  • オフィスワーカーが長時間にわたって軽負荷で使うのならば、シフト打鍵時間を33%(1/3倍)として設計するのがいい。
  • フィールドワーカーが少量データインプットをする用途には、シフト打鍵時間を10%(1/10倍)として設計するのがいい。

……とか、そういう感じになると思う。

どうやって設計するべきなのか──手捏ね配列編。

 目指す速度で安定して打てるまで練習して、そこから半年〜1年くらい評価打鍵してから問題点を一気に解消する、とか、そーゆーアナログ名方法しかないと思う。
 シフト打鍵時間率は、外側から測定して「平均値」は求められる……けど、あまり気にしても仕方がないのかも。