「JISかなは加齢に優しくない配列」は、真なのか。

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 JISかなをお使いの悠木さんが、JISかなについて「加齢に優しくない配列」と評価していらしたことに、実は結構驚きました。
 だって、僕にとってのJISかなイメージって、今では「出来る大先輩が、ゆったりテキパキと仕事をするシーン」なんですよ。
 ……ってことで、今日は「4段配列」と「3段配列」の差について、ざっくり書いてみようかな、と。
 ただ、それぞれ候補がいろいろとある……ので、今日は「JIS X6002」と「JIS X6004」に絞ってみようかと。


 基本的に、「JIS X6004」は、「JIS X6002」を「3段に畳みなおした」ものです。

── JIS X6002 JIS X6004
運指距離の総量 QWERTYロマかな同等 ←よりは短い
打鍵数 1.2打鍵/かな 1.25打鍵/かな
シフト面の範囲 狭い 広い
打鍵スタイル 2本指もしくはタッチタイプ タッチタイプ
誤打鍵率 訓練しないと悪い 悪化しにくい
習熟初期のシフトキー打鍵時間 0.2打鍵相当/かな 0.2打鍵相当/かな
習熟後のシフトキー打鍵時間 0.2打鍵相当/かな 0.7打鍵相当/かな

*1


 JISかなには、いくつかの「巧妙な仕掛け」があって、それが「4段配列なのに、効率劣化しにくい」という特性を実現しているのではないか、と考えています。
 その中でも特徴的なのが、「習熟後のシフトキー打鍵コスト」にあります。
 JISかなは、他の多くのかな入力法とは異なり、シフト側に事実上「極めて速く打たれるという要求がある、小書き文字だけ」が収まっています。
 もともとのカナモジカイ配列タイプライタでは、新JISとJISの間を取るように、シフト側にもいろいろな文字が入っていた……のですが、それらはほとんど全てが、アンシフト右手小指領域&英字面最上段に追い出されて、今に至っています。
 このような構造のJISかなは、当然のように「誤打鍵率がかなり上がる」性質があり、実際に新JISかなの測定時には、3段配列よりも倍の誤打が発生する、という計測結果が出ました。そして一方で、「シフトキーの打鍵時間が延びにくい、小書きかな中心の文字しかシフト側にはない」ことによって、シフトキーによる打鍵時間増加を強制的に排除することに成功している*2、ともいえます。


 JISかなが「加齢に優しくない配列」かどうか……については、たぶん【運指範囲の広さを許容できる程度に、誤打鍵を低く保つ能力を持っているか否か】に左右されて、個々人それぞれに決定されるのではないか、と考えられます。
 新JISかなは「誤打鍵回避のための執念」を要求しない代わりに、慣れていくにしたがって(グラフに掲げたとおりに)シフトのコストが相対的に上がっていく性質があります*3
 自分自身にとって「どちらが打ちやすいか&どちらが加齢に対する抗力を強く発揮するか」という問題の答えは、配列単独では導き出せず、それを使う操作者自身の「得手・不得手」に左右される部分が大きいと思います。

*1:なんかもう、「律」の字が間違っていたりする……のですが、修正する気力がないので放置予定です。

*2:これは、誤打率を低く保てている人にとっては「シフトレスの5段配列」と同等の効果を出せる、ちょっと変わった特性。JISかなの配列は、カナモジカイ配列から比べて「劣化している」と言えるのだけれど、その劣化が「結果的には、シフトキーの機能を先鋭化するために役立った」ってのは、いまさらに考えてもみれば、かなり変な話なんですよね……それこそ、【物事の良し悪しは、一次元的に評価することができない】例のうち、特に目立つものだと思う。

*3:……これを書いていて気づいたのだけれど、新JISかなが「計算量を削減するために」表と裏のかなをあらかじめ割り振ったのも、この手のシフトコストに対する「読みきれない部分」に振り回されることを防ごうとしていたのかも。実際には、「シフトだから速く打たれる……という設計方針の配列は、たぶんない」と思うので、この影響を受けるJIS系起源配列はまだ現存しないと思うのだけれど、シフトキーのこういう特性を「上手く利用しよう」として設計する場合には、習熟初期と習熟後期との間のシフトコスト差をよく観察する必要が出てくるのかも。そしてこの問題に、一番振り回されるのは「親指シフト系」なんだよね……ゼロだと思って設計すると、マジでひどい目にあうしorz。