入力法の耐忘却コスト。

(言及?:2010-08-24 - 日本語どう書いてます?raycy - how-do-we-write-japaneseグループ)

 注)以下は「言及」を試みたものの、結果として単なる「雑文」に成り果てたものです。申し訳ないです……。


 「キー単位」「かな単位」「モーラ単位」「文節単位」の全ての単位で成立しうる入力法は、もっとも低コストで記憶を維持できると考えられます。
 たとえば……【かなめくり】【ポケベル入力】【(単かな入力綴りのみを使う)ローマ字入力】などでしょうか。
 1ステップごとに拘束性があれば、習熟が進んだ後でも「複雑なバイパスネットワークを必要としない=無意識の手戻りが効く密な記憶しかない」ので、より忘れにくい入力法になるでしょう。


 一方で、上記を満たす入力法は「入力効率がよくない」ので、一般的にはどれかを諦めることになります。
 「キー単位」「モーラ単位」「文節単位」のみを満たすものとしては、たとえば「普通のローマ字入力」が挙げられるでしょう。
 「かな単位」「モーラ単位」「文節単位」のみを満たすものとしては、たとえば「普通のかな入力」が挙げられるでしょう。
 「モーラ単位」「文節単位」のみを満たすものとしては、たとえば「普通の速記系入力」が挙げられるでしょう。


 変り種?として、標準定義では「キー単位」または「かな単位」を満たすにもかかわらず、拡張定義として「キー単位」および「かな単位」を満たさない【拡張定義定義付きキー配列】もあって、たとえば「AZIK」が挙げられるでしょう。
 変り種入力法の場合、一つの入力法の中に「部分的に複雑なバイパスネットワークがある=密な記憶と疎な記憶が交じっている」ので、疎な記憶への依存度に応じて「忘れやすい」入力法になるでしょう。


 同時打鍵を採用するものについて、一般的には「キー数」を仮想的に増加させたものと等価である、と考えるほうが自然だと思います。
 たとえば親指シフト系ですと、事実上「キー単位」と「かな単位」の数が同一となるほど仮想キー数が増える*1ので、一般的には記憶が疎になり忘れやすくなる」と考えることが出来ます。この場合には「運指範囲は変わらないので、仮想キーピッチが1/3になっている」と考えることもでき、運指距離の増加による「遠くのキーを忘れやすくなる」現象は現れずに済みます*2
 清濁同置や清濁隣置などのルール化をすることによって、「(半)濁点分離」型と同等の密な記憶を確保することも可能で、このルールを積極的に使えば「(半)濁点分離」型と同等の密な記憶になりますが、当然それと引き換えに「清音かな→(半)濁音」を必要とする配列(ex.新JISかな)との違いがなくなります*3……この性質は、配列だけで決定されるわけではなく、「ユーザーが、その特性を積極的に使うかどうか」という使い方によっても変動するため、たとえば「清濁同置」ルールを使う配列であっても、ユーザーがルールを完全無視して「清濁分置」と見なして運指記憶すれば、「(半)濁点分離」型について発生しうる影響は出ません。そして、清濁分置を強制化した純正飛鳥などでは、ほぼ「段系入力法」として動作するのみであるため、結果として「(同/隣)置ルールを使うものよりは忘れやすく、デタラメ配列よりは覚えやすい」と考えることができます。


 新JISかなのように「(半)濁点分離」型の場合、「かな単位」のパターン数自体は親指シフト系と変わらないものの、そのうちの25文字が「清音かな→(半)濁音」のプロセスで構成されるので、パターン内の打鍵数は増えてしまうものの、パターン自体はより密な記憶になります。
 JISかなのように「(半)濁点分離」型かつ「打鍵範囲が広い」場合、ほぼ新JISかなと同じですが、運指距離の増加により「遠くのキーを忘れやすくなる」現象が現れます。


 忘れにくさを強固なものとするためには、運指距離を「徹底的に短くする」ことが有効ですが、それを達成するためには必然的に「何かを捨てなければならない」ため、捨てたものに応じてその配列は『忘却に関する、配列に固有の癖』を持つようになり、結果として「ある特定の人にとって特異的に、特に忘れやすく」なります。
 結局は、個々人それぞれが持つ【これは捨てたら忘れちゃうから無理だよ!】ってところのみをぎりぎりで捨てずに残し、それ以外の部分を極限まで捨てた入力法が、『その個人にとって、もっとも忘れにくく、かつもっとも効率の良い入力法』になるのではないか、と、私はそう考えます*4


 全てのニンゲンが、かなり許容差の少ない公的規格に沿って『製造』されたのであれば、「全ての人にとって忘れにくく使いやすい」入力法はいつか見つかるでしょう。
 ……でも、ニンゲンはキカイじゃない。ゆえに、「忘れやすさ」とか「ストレスの掛かりやすさ」ってのが、配列単独では決定できず、ユーザーとの組み合わせによって決まるのではないかと思います。

*1:親指シフト系の単字かな系配列は、単字ローマ字系入力法と同じく「キー単位」「かな単位」「モーラ単位」「文節単位」の全ての単位で成立しうる入力法ではあるが、「キー単位」がとても多い入力法である……と説明することが出来る。

*2:ちょっと乱暴な話かもしれませんが、この考え方では「打鍵順序に関係なく、押してから離すまでの間の押下キーの組み合わせによって、一意に文字が決まる配列」について、一つの例外もなく「手順数=仮想キー数」と考えることになります。たとえば、文字キー領域同時打鍵系配列として作った「かえでおどり配列」は、「仮想キー数が」約450個ある配列と考えることが出来ますし、「スピードワープロ」なら「仮想キー数が」2000個以上ある配列と考えることが出来るでしょう。

*3:たとえば、「かえで****あすか」における低頻度(半)濁音カナは、実際に「『ぺ』は「へ」の2つ隣にある」ってゆー連想を伴って打つ機会がある……ッてゆーか、そんだけ使わないから忘れやすい。こういうときに「連想」を使うということは、その瞬間に打つキーに限っては「(半)濁点分離」型と同等の密な記憶を使って打っているので、その瞬間には新JISかなのような性質を持つ配列として動作する。

*4:たとえば、私にとっては「清濁半隣置の、かえで****あすか」よりも、「清濁同置の、NICOLA(親指シフト)」のほうが、よっぽど覚えにくい&忘れやすいんじゃないかと思います……というのも、NICOLAの「ぱぴぷぺぽぁぃぅぇぉ」の配字が、『私にとっては』4ヶ月やっても運指記憶できなかった記憶があるのです。私の場合、「高頻度濁音とかはバラバラ配置でもいいから、低頻度(半)濁音とかこそ『私にとって解りやすい』規則性があって欲しい」と感じていたのですが、それがなかったがためにNICOLAは「私にとって、合わなかった」んですね……。たぶん、そんなの変だ!ッて思う方もいると思うのですが、「私自身にとっての真実」はそうなっているので、それ以上にはどうにも説明のやりようがないというか。