「あらゆる意味で優れているけん盤配列」は存在するのか。
んー……「その配列の欠点は、私にとって気になりません。その配列の利点は、私にとって快適さをもたらしてくれます。」ってのが、「私にとってのよい配列」ですよね。
……で、それが「他人にとってもよい配列」か、というと、そうは限らないわけで。
このあたりは、まともなけん盤配列の設計者さんであれば「利点と欠点の両方をドキュメントとして公開している」か、あるいは「利点も裏側から見れば欠点になる」ルールで欠点を読み取りやすいように、利点を注意深く記述しているはずなので、その点を探してみるとよいのかも。
大雑把に言うと、各種鍵盤配列は方式別に以下のような欠点を「原理的に」含んでいて、その代償を支払う代わりにほかの利点を得ています。
- 標準ロマかな系──打鍵数&運指距離が多い。
- 拡張ロマかな系──拡張定義を覚えるのが大変。
- JISかな系──運指範囲が広い。
- 新JISかな系──右小指シフトがちょっと遠い。
- 文字キー逐次打鍵かな系──打鍵数ちょっと多い&シフト面の連打が面倒。
- 文字キー同時打鍵(非連続)かな系──ロールオーバーが許容されない。*1
- 文字キー同時打鍵(連続)かな系──シフト変移を伴う連打が面倒。*2
- 親指シフト(非連続)系──キーボードを選ぶ&シフト面の連打が面倒。
- 親指シフト(連続)系──キーボードを選ぶ&シフト変移を伴う連打が面倒。
- 速記系──ロールオーバーが許容されない&覚えるのが大変。
- 無連想漢直系──覚えるのが大変。
- 連想漢直系──覚えるのが微妙に大変&打鍵数が多くなる。
……と、むちゃくちゃ大雑把なのですが、どの入力方式も「ある種の欠点には目を瞑る」というコストを負担した上で、その代わりに得られるメリットを最大限に活用しようとしています。
ここで、その「ある種の欠点」が「利用者自身にとっては特に不満には感じない」場合に、そのけん盤配列は「利用者自身にとって使いづらくない」配列となり、それを習得することができれば「利用者自身にとって使いやすい配列」となる……と、そういう過程をたどるものなのだと思います。
ここで一番肝心なのは、「快適じゃない」と思ったものは、いくら練習しても「快適」には変わらないかもしれない……というところ。
初期練習だけで「この配列は自分にとって快適じゃない」と直感で思ったことが、実際に練習して行ってもそのまま残る場合がある……というのは、こういうところが理由なのかも。
私にとっては、今のところ「かえであすか」が使いやすい、と思っていても、それを何も考えずに方々に宣伝してまわったりはしない(というか、できない)……というのは、そういうところが理由だったり(、他にも最近いろいろと問題点を書いていたり)。
Blog系でもけん盤配列系スレッドでも「最終的に選ぶ配列は、人それぞれでしょ。」と言う方が多いのは、つまりはこういうところが理由なのだと、私なりにはそう理解しています。
#ゆえに「○○配列は世界一ィッ!」とか言うと、思いっきり不思議がられる……と。もちろん、それに対するリアクションを全ての方が表明するとは思えませんけど。
つまりは。
「利用者自身にとっては特に不満には感じない」欠点が何なのか、というところを大多数に対して(聞き取りではなくユーザテストで)調査することによって、「多くの方にとっては特に不満には感じない」入力方式を探し出すことはできるのかも……という理屈も、あるいは成り立つのかも。