タイピング界が衰退?する原因について愚考を試みるテスト。

 悠木さんとtomoemonさんが話題にしていらしたあたりに関連して。
 ……これはただのメモです。

新規参加の主要層について。

  • そもそも、10代ユーザの主たる入力デバイスが「フルキーボード」から「ケータイのキーパッド」に移ってきている。
    • ローマ字入力とケータイでは体感入力効率があまり変わらないうえに、ケータイは「身に着けて持ち運べるメリット」があるので、どーにも勝てない。
  • そもそも、20代ユーザには「時間」がない。
    • このあたりはたまに統計を見ることがあるけど、労働関連の拘束時間がとても長いという事情がありそう。
  • 「やりこみ」を渇望する時代から、徐々に「コミュニケーション」を渇望する時代へとシフトしている(=全体で見れば衰退とはいえない)のかもしれない。
    • (電子的な方法を含めた)直接的な対話のみならず、(手順やドキュメントを通じた)間接的な対話も有効になりつつあるのかもしれない。

記録の問題について。

  • タイピングがWebで話題になり始めた当初とはたぶん異なり、すでに「とんでもない時間を投資して、とんでもない記録を持っている先人」が多すぎる。
    • 「高い目標を持つことができる」ごく少数の人しか、その領域にチャレンジする意気を持てない……のかも?
    • 全員が同じスタートラインに立って、一斉にスタートする……ということができれば理想なのかも。

手順と訓練の問題について。

  • 訓練は「それを行った方自身にとってしか効果がない」ので、全体への波及効果が期待しづらい。
    • 配列設計のような「多くの利用者にとって効果が期待できる」訓練方法を提供できる可能性があるのかどうか。

下世話な提案その1。

  • 特定の配列を選定して、みんなでそれをやってみる……というのは無理な話、と。こういう強制は嫌いなんですよ。
  • 現実的には、【タッチタイプソフトで、ネイティブに月配列対応をする】というのが、唯一の選択肢かも。
    • ローマ字系・JISかな系・月配列系ともに、その枠内で自由に配列を設定できるようにして、「運指の最適化ではなく、配列側の最適化に取り組んでもらう」形にする……と。
    • タイピングの評価ポイントとしては、「使用者自身の記録」だけではなく「使用者が最適化した配列を使うユーザによる投票*1」も加算する。
    • 月配列系の基礎配列としては、ひとまず次の2つを用意する。あとは2chの新JIS/月配列スレッドから各自発掘してもらう。
      • 月配列2-263版──これはデフォルトで必要。
      • 月配列U9RC版──配列界では珍しく「タイパーのための配列」であることを目指して設計されたため。
    • 月配列系はバリエーションを展開しやすいうえに、もともとネットコミュニティ発の配列なので、こういう企画とは本来親和性が高い。
      • この段階が成功したら、次は「エミュレータ経由でJISかな変換扱い」のについても……と。
      • バズル的なものに対して才能がある人が、タイパーの世界で「速度以外の分野で」知られるキッカケになるかもしれない*2
    • 記録は、配列とともに送信され、両者はともに「日付@ユーザ名」にひも付けして公開される。ユーザ名がついた配列を一時的にダウンロードしてきて使うこともできるようにする。

下世話な提案その2。

  • 「決められた文字数を、いかに短い時間で打つか」ではなくて、「決められた時間で、いかに多い文字数を打てるか」を競う。
    • 出題する文章は人工無能的なシステムにより、毎回自動生成する。
      • 出題する文章におけるかなの出現頻度は「かな下しした平文の2-gram連接頻度」として、打つ文章が長くなるほど連接頻度が正確になるように出題する。
      • 出現頻度を算出する元となる2-gram連接頻度データは、有志からの提供素材(自身が著作権を持つblogのバックアップログなど)を全部合成したものから生成し、ソフトウェアのバージョンアップにあわせて(もしくは定期的に)2-gramデータを更新する。


 ……と、ひとそろいメモを書いたところで、今日はおしまい。
 こういうものが「将来タイパーになろうとしているタイパー志願者さんにとって魅力的なのかどうか」は解らないけれども、ひとまず書かないことには話が始まらないような気がするので……。

メモ。

× 通常のタイピング 今回提示する方法
けん盤配列 変更はチートと等価 変更こそ最適化の主要手順
運指手順 最適化する 最適化は必要としないほうが好まれる
技術の適用範囲 主に「私」 「私」と「私に近い人」が不分別
要求技術 個別最適化技術 全体最適化技術

 やるべきことも要求内容も大きく変わるので、今までとは違ったヒーローが生まれるかもしれない。
 そして、いろいろやりこんでいる人は、(技術の投入方向が変わるのみで)今までと変わることなく活躍できる。
 そこで必要なのが「速度以外の基準を新たに設けること」なのかも、と。
 人はいつか老いていき、速度競争から脱落する日が必ず来てしまう……のだけれど、そういうことがあっても「目的を見失わずに済む」ようにするために、あるいは役立つ日が来るのかもしれない。

*1:多くの人にとって有用な最適化案を考案した人が、そうではない人よりも高く評価されるシステムを作る、と。タイパーさんの運指最適化に関する熱意が「配列最適化」へと転化するための土壌が出来上がれば、月配列だけではなくほかの入力法も含めたうえで「すばらしいアイデア」がもたらされることはほぼ確実だと思う。特に月配列は、それをしっかりと受け止めてバザールモデルで進化するための土壌が既にできているので、GA手法による配列設計とは違った方向での進化が期待できる。

*2:個人的には、自称他称を含めた「配列屋」が、5桁かそれ以上いるような世界が理想だとすら思う。職業分野の「改善屋」気質な人がのめりこめる「場所」を構築できると、この分野はまだまだ飛躍する余地があると思う。