誰のためのデザイン?―認知科学者のデザイン原論 (新曜社認知科学選書)を読了。

(未来:(メモ)【気づく化】=【良い気づきの種】=「デザイン本」+「非常識な常識本」+「第一感本」+「速読本」+「見える化本」=【視点の変更】。)


誰のためのデザイン?―認知科学者のデザイン原論 (新曜社認知科学選書)

誰のためのデザイン?―認知科学者のデザイン原論 (新曜社認知科学選書)

 ざっと読んでいって、まず思い浮かんだ感想は【ふーん……それほど目新しいことは書いてないよなぁ……でも、妙に例示された事柄が古くない?】ということ。
 ……で、初版第1刷がいつなのかを見て驚きました。この本は、日本語入力に関する第一次(?)提案ラッシュがあった直後の、1990年1月に発行されています。それから進むこと20年弱、私は2007年7月に刷られた初版第22刷を手にしていたのです。


 現在の身の回りに目を向けてみると、コンピュータのGUIから赤外線リモコン、はてはドアに至るまで、この本が提示したデザイン指針は見事なまでに「今の現実世界にきれいに取り込まれて」います。そして、その一つ一つが「失敗を学んで次に生かす」という、当たり前のフィードバックループをつかって改善されてきたことを、本書を通じて知ることができるわけです。


 本書のすばらしいところは、「世間の技術は進歩しても、人間は進歩するわけではなく、学習するだけだ」「悪いのは常にユーザではない。悪いのは常にデザインやデザイナだ」というところを、常に軸として話を展開させたところにあると思います。こういったところは著者のセンスと心情がそのまま反映されていて、見ていて考えさせられる部分が多いと感じています。
 そして、本書において残念な点は、翻訳が完璧ではないこと(ほんの少し、読んでいて「?」がつくところがある)と、文献調査が完璧ではなかったというところになると思います。
 いずれにせよ、何らかの形で「デザイナ」であることを自認されている方と、何らかの形で「ユーザーインターフェース」にかかわっている方には、ぜひともお読みいただきたい内容であることは確かだと思います。
 本書は、あなたにとって「現代的なデザインに必要な注意点を、すばやく学習・復習するために役立つ」はずです。


 こういう風に思わせられる本はとても少ないのですが、個人的には、この本は「何度も読み返して、しっかり理解しておきたい」と感じました。