親指シフトは、何時から「ネガティブなもの」扱いされるようになってしまったのだろうか……orz。

(言及:『勝谷さんのコラムを振り返る。』)


 釈迦に説法とは、まさにこのことだろうなぁ……と思いつつも、感じたことを書かせていただきたく思います。


 なお、以下の記述は「物好きなただの素人が積み重ねた知識」をベースにしていまして、とてもソースとして使える代物ではありません。
 必要に応じて現場現物調査を行っていただく必要があると思われますので、その点についてはご注意願います。

はじめに。

 この記事(?)を書いた奴(=私)は、親指シフトについては4ヶ月だけ使ったことがあります。
 その後、諸事情により、以下のような入力法を使うようなりました。
 「親指シフトキーを2つ使う」「一回の操作で一文字を出す」というところは、親指シフトと同じです。


 ……こういう方法を使っていることもあり、いまの富士通において親指シフトが「ネガティブなもの」扱いされていることについては、実は結構ショックをうけました。
 本業の方が記事を書くための「切り口」として使えるかどうかは不明ながら、ひとまず書けそうなことを一通り書いてみることにします。

富士通にこの間、親指シフトの取材をしようとしたら、そういうネガティブな取材はしないで下さいと。許し難い。】という件。

 NICOLAの普及活動を行うための団体は http://nicola.sunicom.co.jp/ であり、今の富士通は「NICOLA仕様準拠のキーボード・IME・ノートPC・ワープロソフトを生産しているだけ」という立場のはずです。
 また富士通は、全社的にNICOLAのサポートをするだけのコストがかけられないためか、個人向けの製品に関しては http://www.saccess.co.jp/ がその役目を引き受けているようです。
 翻って、YOMIURI PC 2007年5月号p159には「富士通提供」としてNICOLAキーボードの写真が載っていますし、同年2月号pp.142-147では「親指シフトの生みの親」でもある神田さんの話が掲載( http://www.ykanda.jp/ )されていたりします。


 富士通としては、(現状では商業的な旨みが薄い?)NICOLAを単独で取り扱うことについて、難色を示したとしても仕方がないのではないか……と、私はそう感じています。
 一方で、富士通にとって「イメージアップにつながる」ような方向性が見えれば、取材をしやすくなるかもしれません。
 たとえば、いわゆる年金問題では「カナと漢字の変換扱いを適当にしていたことが原因で事故を起こしていた( http://b.hatena.ne.jp/entry/http://www.itmedia.co.jp/news/articles/0706/18/news060.html )」ことが焦点の一つになっているようですが、当時の富士通は「全く同じ年に、極めてまっとうな方法を用いて、同種の問題が発生することを回避していた」実績があります( http://www.ykanda.jp/ )。


 たとえば、記事構成として【富士通=昔から真剣に日本語のことを考えていた企業】という紹介からはじまり、【そういう企業が作ったOASYSというワープロも、また日本語のことを真剣に考えて作られていた( http://www.kanshin.com/keyword/1082610 )】という点を経由し、NICOLAの話に結びつける……という形をとれば、少なくとも「日本語というものについて敏感な方」にとっては、はっきりと印象に残る記事になるはずです。

親指シフトが出てきた頃いろんな規格が出てきて、結局なくなってしまった。】という件。

 「ハードウェア単体」という意味であれば、親指シフトも含めて全滅といえそうです。
 そして、「基本はソフトウェア方式、たまに専用キーボード付き」という意味であれば、なくなったものを探すほうがかえって大変です……それが現状となっています。


 NICOLAは「エミュレータ」というカタチのソフトウェアによって、あきれるほど多くの環境で、いわゆる親指シフト入力を可能にしています( http://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%A6%AA%E6%8C%87%E3%82%B7%E3%83%95%E3%83%88 )。また、NICOLAのやり方を発展させた入力法もいくつか提案されています。
 TRONの入力法はBTRON OSなどで使えますし、つい最近キーボードも復活しました( http://www.personal-media.co.jp/utronkb/index.html )。
 新JIS(かつてのJIS X 6004)はエミュレータ経由で利用可能な状態を維持していますし、変わったところでは「月配列」( http://jisx6004.client.jp/tsuki.html )という派生入力法も誕生しています。
 NECのM式は「五十音(M式)キーボードソフト」として復活済み( http://www.avis.ne.jp/~qpress00/M_KB/morita_shukuji.htm )ですし、最近はキーボード付( http://store.yahoo.co.jp/d-tech/kkbox98.html )のものも復活しました(しかも、最新のエミュレータではNICOLAも使えます!)。


NIOCLAの復活に必要なもの。

 ……それは「戦い」なのかもしれません。
 しかし、その戦いは「ローマ字入力との戦い」でも、「JISかな入力との戦い」でもありません……そのアプローチでは既に大敗していますし、同じ手法をとる限り、結果も同じになるはずです。
 「歴史は繰り返す」といいますが、ここで繰り返すべきことは「失敗した手順を繰り返す」ことではなくて、「使いやすかった時代をもう一度取り戻そう!」ということになるはずです。


 そうしますと、私たちが本当に戦うべき相手*1は、特定の入力法などではなくて、もっと根源的な「日本語入力という行為について無関心であること」そのものなのかもしれません。


 最近では、勝間さんという方が『無理なく続けられる年収10倍アップ勉強法』という書籍で、親指シフトのことを取り上げています。
 http://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%A6%AA%E6%8C%87%E3%82%B7%E3%83%95%E3%83%88
 これに関連して、blog検索中に「親指シフト」というキーワードを見かける機会が比較的多くなってきています。
 Wikipediaにも同書の要約を書いてきましたが、勝間さんが同書内で物事を勧める姿勢は、一貫して「いろいろいい方法はある、そして私は○○を使っている」という方針であり、これは同書における親指シフトの推薦に関しても変わっていません。


 「日本語入力という行為について無関心であること」と戦うのであれば、【親指シフトを勧めよう】として書くよりも、むしろ【使いやすい日本語入力法があることを知ってもらおう】という方針を打ち出して、その中の一つとして親指シフトについて言及する……と、そういう方針で行くほうが、より自然な内容になるのかもしれません。
 そうしますと、、取材する対象についても【親指シフトに関わった方だけ】に限るよりも、【当時から日本語入力法に関わっている方】へと手を広げて取材するほうが、より広い視点を持って書き始めることができるかもしれません。
 このあたりの可能性については、書籍「考える道具―ワープロの創造と挑戦」の最後尾にある対談部分をお読みいただくことで、はっきりとしたイメージをつかんでいただけるものと思われます。


 今は「工業分野での生産革新」から「非工業分野での生産革新」( http://d.hatena.ne.jp/asin/4833151472 )へと、徐々に革新活動の範囲が広がりつつあるように思います。
 そんななかで、特に事務分野において多用される日本語入力という技術の変更に関しては、「パソコン一台&ヒト一人から始めることができ、カネがあまりかからず、基本的な考え方を他の作業へと応用しやすく、かつ安全性&文書品質&生産性を向上できる可能性がある」( http://d.hatena.ne.jp/maple_magician/20070416/1176654660 )という、面白い特徴を持っています。
 個人ベースでの話とは別に、こういった企業ベースでの話につなげることができれば、日本語入力法に関する関心はさらに高まるのかもしれません。


 ちなみに……1990年頃以降、個人製作による日本語入力法が多数公開されるようになりました。
http://www4.atwiki.jp/japanese_keyboard_layout/
 始めの頃から「ローマ字入力法の改定案」は割と提案が多かったのですが、近年の傾向として「ひらがな入力法の改定案」がぐっと増えた……というところは、一つのポイントになるかもしれません。
 こういった【様々な入力法】が、【自由にどこの機械でも使える】様になれば、【「どの入力法を使うのか」という点に関わらず、みんなが幸せになれる】( http://d.hatena.ne.jp/maple_magician/20070301/1172679005 )……のかもしれません。

親指シフトネタを扱ううえで、ひとまず読むべきかもしれないもの。

 あらかじめ、以下のうち未読のものを予備知識としてお読みいただきますと、取材をやりやすくなるかもしれません。

コンピュータ―知的「道具」考 (NHKブックス (478))

コンピュータ―知的「道具」考 (NHKブックス (478))

考える道具―ワープロの創造と挑戦

考える道具―ワープロの創造と挑戦

無理なく続けられる 年収10倍アップ勉強法

無理なく続けられる 年収10倍アップ勉強法

  • 生産革新関連。

トヨタ生産方式――脱規模の経営をめざして

トヨタ生産方式――脱規模の経営をめざして

大野耐一の現場経営

大野耐一の現場経営

実践!!IT屋のトヨタ生産方式

実践!!IT屋のトヨタ生産方式


 以上、長文失礼しました……。

*1:注:コメントを参照願います。