ひらがなベースの日本語入力法【飛鳥カナ配列】の歴史。

(参考:慨嘆。。。)


 ひらがなベースの日本語入力法【飛鳥カナ配列】は、「一般的かつ安価な日本語JISキーボード」の利用者をターゲット*1に、75人×月の労力を費やして製作された入力法です。
 現状ではWindows環境(姫踊子草・繭姫・やまぶき)とMacintosh環境(Tesla──有志による対応中)で利用することができます。

開発時期 累積日 累積人月*2 版号 世代換算 備考
2000年10月30日〜 ── ── 零式〜 飛鳥0.x 飛鳥の開発過程を整理(メモ)
2005年1月12日 1535日 50.43人月 飛鳥21c290 飛鳥1.0 「安定版」宣言。
2005年02月18日〜 ── ── 飛鳥21c291〜 飛鳥1.x 「開発版」リポジトリでの継続開発。
2006年04月25日 2003日 65.81人月 飛鳥21c333 飛鳥2.0 旧記号位置系の最終安定版。
2006年12月08日〜 ── ── 飛鳥21c334〜 飛鳥2.x 8ヶ月後の改定&記号類移動。
2007年02月04日 2288日 75.17人月 飛鳥21c341 飛鳥3.0 新記号位置系に移行して完成。

 飛鳥の歴史は、つまりは

  • 【低コスト時代での適合性検証】──生産性重視で設計された「安物キーボード」で徹底的な評価打鍵が行われた入力法である。
    • 低コスト化の波にさらされ続けたキーボードの現状は「キーボードというデバイスが普及している限り永遠に変わらない事実」でありつづけるから、これは非常に重要
    • 安物キーボードでも問題なく打てれば、打鍵性重視で設計された「高級キーボード」でも使える……と。逆はありえないところがポイントなのかも。
  • 親指シフト方式の可能性検証】──神田さんが示したコンセプト製品「日本語電子タイプライタ」のうち、なかば置き去りにされていた「けん盤配列の改善」を行った成果物である。
    • 同製品に採用された配列コンセプトの「親指位置シフト」「同時打鍵」「かな配列」を引き継いでいる。清濁同置は「設計上の工夫」であって「設計上の必然的な方針」ではない*3点に注意。

 というところにあったのかもしれません。


 飛鳥21c341が「開発版リポジトリの一つ」でも「新しい安定版の一つ」でもなく、真に「飛鳥カナ配列の完成版」として認知されるために必要なのは、【宣言】ではなく【長い時間】だと思います。
 それも、半年や1年などというレベルではなくて、【飛鳥が飛鳥と呼ばれ続け、使い続けられる限り永遠に】……かつて神田さんがそうして配列を固定し続けてきたように。
 ユーザからの「配列固定要求」を受けて「配列を固定し続ける覚悟があるかどうか」が重要なのであって、「配列変更願望」を既に完全に満たしているのか、あるいはそうではないのかというあたりが読みきれない状態でした……故に、これからやるべきことは【配列を変更せずに、(内容はどういうことでも構わないので)書き続けること】なのではないかな……と、私はそう思います。


 そういう意味では、今日公開された【慨嘆。。。】という記事が持つ意味は、とても大きいように思います(特にハンダゴテを持っていらしたあたりなど)。
 75人月以上にもわたる長期の開発を無事終えたとのこと、お疲れ様です。
 個人的には「宣伝広報はしない」と表明されていたことはちょっとばかり残念だな……と思う部分もあるのですが、今後は飛鳥がらみ以外の話題も含めた記事を拝見させていただければ、と思います。
 最近では、Windowsに続いてMacintosh(Teslaというエミュレータ経由)でも飛鳥が使えるようにと尽力されている方がいらっしゃるようですし、飛鳥には今後「存在し続けるために必要な場と雰囲気」が、徐々に確立されていくだろう……と、勝手ながら予想していたりします。


 
 ほんとは「新風舎( http://www.shinpusha.co.jp/ )」経由で書籍を発行するために原稿を書いていただきたいなぁ……などと当初思っていた(書籍コードをつけて通常の書店経由でも発注できるという話)のですが、新風舎 - Wikipedia新風舎出版賞 - Wikipedia経由で拝見した以下の記事を拝見して、この方法では目的を果たせそうにないことに気づきました。
 「新風舎」なるどうもちょっと気になる出版社
 有田芳生の『酔醒漫録』: 「新風舎」のあくどい商法
 論文を書くなり出版するなりすれば「できることの自由度が増える(宣伝効果は上記の理由により微妙でも、検証可能性要求は満たせるというメリットが出てくる)」とばかりに焦っていたのですが、とりあえずこの方向性での力添えはできそうにありませんで……すみません。


 うーん……(飛鳥だけでなく、日本語入力法のスイッチという行為全体の)普及活動については「のんびりやっていく」しかないのかもしれないですね。
 何ができるのか?という手法については見つかっていないものの、利用してくださる方が増えるように「色々なキーワードを持つ記事を書く」=「気づいていただけるような状況を作り出す」ぐらいしかない気もします。
 いずれにしても、【できることからやっていく】しかないですね……。

飛鳥カナ配列の表現方法テスト。

 【飛鳥カナ配列】は、以下の文字をキーボードへと割り当てた「ひらがな入力」の一種です。
 「姫踊子草・繭姫・やまぶき・Tesla」などのソフトウェアを利用することで、普通のパソコンが解釈できる「ローマ字入力」や「JISかな入力」などと同じように、この入力法を使用することが出来ます。
 始めてパソコンでの文字入力を覚えるために要した時間よりは、短い時間で習得できるはずです……いくつか練習するための方法が公開されていますので、それらを見つつ「やりやすい練習方法で」習得していただければ幸いです。
 色々事情があって変わり続けていたのですが、今回で入力法が定まったようなので、以下に入力法を示してみたいと思います。

 
  タッチタイプ用の代表的な指使い
Tab  
英数   BS ←灰色キーはホームポジション
Shift  ば  け  に  み  ・    ゃ  っ  ょ  ゅ  め  ,  Shift

 ホームポジションから遠いほどに「あまり使わない」文字を配置しています。

 そのため、こんな感じであまり手を動かさずに入力できるところがポイント。
 ……これだけでは全然文字が足りませんので、残りの文字はちょっと工夫して入力します。

 
  タッチタイプ用の代表的な指使い
Tab   _
英数   ESC ←灰色キーはホームポジション
Shift  ぜ  ひ  せ  び  &    や  が  、  。  ?  /  Shift

 ここにある文字は、キーボードにある「無変換」キー*4と【一緒に押す】決まりになっています。
 わりとよく使うはずの【です。】【ます。】などを打つときには、「無変換」キーを押しっぱなしで文字キーを押していくだけでも構いません……というか、そう狙って配置されている文字がたくさんあります。

 
  タッチタイプ用の代表的な指使い
Tab  
英数   BS ←灰色キーはホームポジション
Shift  ぱ  ぐ  へ  づ  *    む  を  ど  も  ぼ  無  Shift

 ここにある文字は、キーボードにある「変換」キー*5と【一緒に押す】決まりになっています。
 こちらも、「変換」キーを押しっぱなしで入力したいときは、そう入力して構いません。

2007年6月21日23:15:58追記。

 現状の最新版は、飛鳥カナ配列21世紀345版です……その配列を、以下に示します。
 (普通のJISキーボードを用いて入力します)


 ちなみに、日本語における「ひらがな」(漢字の読み仮名を含む)の出現頻度は、次のとおりとなります。
 (出典: http://d.hatena.ne.jp/maple_magician/20070604/1180930739 )

順位 かな 出現回数 出現頻度 出現回数累計 出現頻度累計
1 い(I) 146278 5.994% 146278 5.994%
2 う(U) 121425 4.975% 267703 10.969%
3 ん(Nn) 109615 4.492% 377318 15.461%
4 か(Ka) 92790 3.802% 470108 19.263%
5 し(Si) 88350 3.620% 558458 22.883%
6 と(To) 81606 3.344% 640064 26.227%
7 て(Te) 66030 2.706% 706094 28.933%
8 の(No) 64256 2.633% 770350 31.566%
9 な(Na) 61190 2.507% 831540 34.073%
10 た(Ta) 60009 2.459% 891549 36.532%
11 は(Ha) 57355 2.350% 948904 38.882%
12 に(Ni) 56913 2.332% 1005817 41.214%
13 き(Ki) 55981 2.294% 1061798 43.508%
14 で(De) 55558 2.277% 1117356 45.785%
15 す(Su) 55358 2.268% 1172714 48.053%
16 く(Ku) 54136 2.218% 1226850 50.271%
17 る(Ru) 45345 1.858% 1272195 52.129%
18 、(,) 45239 1.854% 1317434 53.983%
19 が(Ga) 43231 1.771% 1360665 55.754%
20 ま(Ma) 42344 1.735% 1403009 57.490%
21 も(Mo) 40868 1.675% 1443877 59.164%
22 こ(Ko) 40742 1.669% 1484619 60.834%
23 っ(Xtu) 40391 1.655% 1525010 62.489%
24 じ(Ji) 40182 1.646% 1565192 64.135%
25 つ(Tu) 39944 1.637% 1605136 65.772%
26 り(Ri) 39910 1.635% 1645046 67.407%
27 。(.) 38431 1.575% 1683477 68.982%
28 ょ(Xyo) 37089 1.520% 1720566 70.502%
29 れ(Re) 34310 1.406% 1754876 71.908%
30 を(Wo) 30795 1.262% 1785671 73.169%
31 ー(^) 29994 1.229% 1815665 74.398%
32 お(O) 29857 1.223% 1845522 75.622%
33 だ(Da) 29253 1.199% 1874775 76.821%
34 あ(A) 29225 1.198% 1904000 78.018%
35 ら(Ra) 26218 1.074% 1930218 79.092%
36 け(Ke) 25925 1.062% 1956143 80.155%
37 さ(Sa) 24984 1.024% 1981127 81.178%
38 よ(Yo) 24625 1.009% 2005752 82.187%
39 ゅ(Xyu) 23553 0.965% 2029305 83.153%
40 ど(Do) 23101 0.947% 2052406 84.099%
41 ち(Ti) 21129 0.866% 2073535 84.965%
42 20654 0.846% 2094189 85.811%
43 せ(Se) 20194 0.827% 2114383 86.639%
44 そ(So) 20131 0.825% 2134514 87.464%
45 え(E) 18628 0.763% 2153142 88.227%
46 み(Mi) 17564 0.720% 2170706 88.947%
47 ひ(Hi) 16895 0.692% 2187601 89.639%
48 め(Me) 15318 0.628% 2202919 90.267%
49 ほ(Ho) 14793 0.606% 2217712 90.873%
50 ふ(Hu) 14762 0.605% 2232474 91.478%
51 わ(Wa) 14693 0.602% 2247167 92.080%
52 ば(Ba) 13748 0.563% 2260915 92.643%
53 ろ(Ro) 13398 0.549% 2274313 93.192%
54 や(Ya) 12702 0.520% 2287015 93.712%
55 ゆ(Yu) 11171 0.458% 2298186 94.170%
56 ぶ(Bu) 9691 0.397% 2307877 94.567%
57 び(Bi) 9608 0.394% 2317485 94.961%
58 ぎ(Gi) 9278 0.380% 2326763 95.341%
59 ず(Zu) 8352 0.342% 2335115 95.683%
60 ね(Ne) 7380 0.302% 2342495 95.986%
61 ご(Go) 7326 0.300% 2349821 96.286%
62 ゃ(Xya) 7025 0.288% 2356846 96.574%
63 む(Mu) 7015 0.287% 2363861 96.861%
64 へ(He) 6119 0.251% 2369980 97.112%
65 げ(Ge) 6101 0.250% 2376081 97.362%
66 ぼ(Bo) 5624 0.230% 2381705 97.592%
67 5604 0.230% 2387309 97.822%
68 べ(Be) 5163 0.212% 2392472 98.034%
69 ぷ(Pu) 4800 0.197% 2397272 98.230%
70 ぜ(Ze) 4569 0.187% 2401841 98.418%
71 ざ(Za) 3787 0.155% 2405628 98.573%
72 ぐ(Gu) 3675 0.151% 2409303 98.723%
73 ぱ(Pa) 3133 0.128% 2412436 98.852%
74 ぞ(Zo) 2890 0.118% 2415326 98.970%
75 づ(Du) 2538 0.104% 2417864 99.074%
76 ?(?) 2311 0.095% 2420175 99.169%
77 ぴ(Pi) 2247 0.092% 2422422 99.261%
78 ぽ(Po) 2156 0.088% 2424578 99.349%
79 ぁ(Xa) 2032 0.083% 2426610 99.432%
80 ぇ(Xe) 2008 0.082% 2428618 99.515%
81 ぺ(Pe) 1817 0.074% 2430435 99.589%
82 ぃ(Xi) 1789 0.073% 2432224 99.662%
83 !(!) 1698 0.070% 2433922 99.732%
84 ぉ(Xo) 1576 0.065% 2435498 99.797%
85 〜(~) 1373 0.056% 2436871 99.853%
86 1111 0.046% 2437982 99.898%
87 ぬ(Nu) 846 0.035% 2438828 99.933%
88 ぢ(Di) 541 0.022% 2439369 99.955%
89 ぅ(Xu) 519 0.021% 2439888 99.977%
90 310 0.013% 2440198 99.989%
91 ―(-) 127 0.005% 2440325 99.994%
92 48 0.002% 2440373 99.996%
93 44 0.002% 2440417 99.998%
94 42 0.002% 2440459 100.000%
95 ? 2 0.000% 2440461 100.000%

*1:これが「高価なキーボードでは使えない」ことを意味していない点は後述。

*2:Rayさんによる開発状況&経済状況などを考えるに、そのまま人月換算してもそう間違いはなさそうな気すらするので。

*3:コンピュータ―知的「道具」考 (NHKブックス (478))のp.168を参照、そこには「一打鍵で打てること」の必然性は書かれているが、「清音と濁音を同置すること」については「工夫」であることが描かれている。

*4:あるいはスペースキーでも良く、任意に設定できる

*5:あるいはスペースキーでも良く、任意に設定できる