親指シフトけん盤配列と、その「対照配列」について。

  • なぜ当時のOASYSプロジェクトメンバが「句読点を下においてはダメだ!」と思ったのか。
  • なぜ当時のOASYSプロジェクトメンバが「長音記号を【X】の位置に置こう」と思ったのか。
  • なぜ当時のOASYSプロジェクトメンバが「濁音はクロスシフトで出すべきだ!」と思ったのか。

 その疑問は、

コンピュータ―知的「道具」考 (NHKブックス (478))

コンピュータ―知的「道具」考 (NHKブックス (478))

のp.164にある「50音順親指シフト配列」*1を用いて、数百字程度*2シャドータイピングで評価打鍵すれば*3判明するかもしれません。
 読点が右・句点が左にある理由も、「対照配列」を見ればよく解ると思います。


 それと、「対照配列」が仮にQwerty互換の句読点位置を採用していたならば仮に、「対照配列」とは左右鏡面配置のけん盤配列によるテストを平行して行っていれば、場合によっては製品版の親指シフト配列でもQwerty互換の句読点位置を採用した*4のかもしれません……いや、正確に言えば「ほかには、上段端に句読点を置くべき【積極的な理由】がなかった」というべきなのかもしれません。
 いずれにせよ、当時あった知識と技術を動員し、「対照配列」が持つ欠点を「様々な制約と睨めっこしつつ、トコトン解消しよう」……という方向性で配列を検討すれば、親指シフトのような解決策が最善であろうという結論が出たとしても、誰も驚きはしないんじゃないかなぁ……と、そう思います。


 そういえば、なぜに「新JISかな配列」の設計では(製作者の渡辺さん自身は文献で「テキトー配列でも大丈夫!」という風に書きつつも)「対照配列」「打鍵データ計測用配列」としてNICOLA似のキー配列を指定したのかと腑に落ちない部分もあったのですが……テキトー配列を避けた理由は、こういうところにあったのかもしれません。

(追記)配列決定に使用した資料について。

 書籍においては、「前東彬」さんという方の名前と所属、それと使った資料の元ネタとなっている資料についてはかかれています……不思議なことに、「前東彬」さん自身が記述された論文の名称などについては書いていないのです。


 ……で、ぱっと探してみました。見つかったのは1件だけです……が、これが本当に「神田さんが参考にした資料」なのかどうかは不明です。

  • タイトル【単語間の関連を用いた同音異義語の判別】
  • 執筆者【土井 明・前東 彬】
  • 発行年月日【1973/9/23】
  • 文献の登録先【計量国語学会


 神田さんが書かれたこの書籍は、いわゆる【論文集合】のような体裁ではなくて、純粋に【思考の転写】に近い体裁になっています。
 厳密に読み解こうとするとややこしくなりますが、(親指シフトに限らず)日本語入力に関心がある方が読めば、「なるほど、こういう考え方があるのか」と思えるかもしれない……と、そう思いました。
 興味がある方はぜひご一読を。

*1:記述内容からして、この配列はNICOLAの「対照配列」として使用されたことになるはず。

*2:数百「日」程度ではありません。

*3:2007年時点での日本語入力に関する知識を持つ人であれば、という条件付ではありますが……。

*4:……というか、Qwerty互換の句読点をわざわざ否定しなくても、親指シフトけん盤配列はなんら問題なく成立するはずだった。