親指シフト関連メモ。

 親指シフトの入力方式研究は「かな漢字変換を前提」というテーマになったのが1977年8月、親指シフトの基礎アイデア発案は1978年1月、試作機への実装開始は1978年8月。1979年1月には試作機が完成、1979年5月にはビジネスショウへの出品。
 http://www.ykanda.jp/ntw/ntw.htm


 文字配列は、1978年1月〜1978年8月の間に決定したのかもしれない。
 文字の配置規則は次の通り。

  • 出現頻度と連接頻度を調査。
  • ホーム段→上段→下段の順に頻度が低くなるよう配置。
  • 人差し指→中指→薬指→小指の順に頻度が低くなるよう配置。
  • 小指は動かず、小指を軸にほかの指を動かす。
  • 連接頻度に基づき左右交互打鍵性を確保。
  • 同指・隣接指を連続使用しない。

http://www.ykanda.jp/txt/txt/21a.txt
 ……太字がNICOLAの特徴になっている。
 「小指を軸に」はわかりやすいからいいとして、特にきつい制限になっていたのが「隣接指を連続使用しない」という制限。
 「片手跳躍をしない」という制限よりも遙かにきつい制限を設定した理由は不明……当時の計算リソースではどうにもならず「計算をはしょるために」設定したのか、あるいは「疑似同時打鍵(ロールオーバー)」をさけたかったのか。
 「親指を除く指同士の同時打鍵ではうまくいかない」ということが近傍の論文に書いてあったものの、たぶんそれとは関係がないような……。
 どちらかというと、「同時打鍵ロジックを使う上で、誤シフトをなるべく誘発しないように」条件を設けた……と見る方が、まだ自然なのかも。


 ここまで「片手の連続的な操作」「隣接する指の連続的な操作」を封じた上で、下段に逃げることもできず、かつ交互打鍵率をあげて……となると、NICOLAの交互打鍵率が60%近傍になるのは当然なのかもしれない。
 http://www.asahi-net.or.jp/~EZ3K-MSYM/charsets/laycomp.htm

 
 
 
 
 
     
   
     
 
 
 
 

 ……とりあえず(手元の日記を基準に)73%頻度の文字へと下線を引いてみました。

2007年1月3日18:35:05追記。

 http://www.ykanda.jp/txt/txt/13a.txt
 結局のところ、神田さんは「親指シフト」という狭い枠組みではなくて、九州大学の栗原先生が研究した「日本語をかな漢字変換経由で入力すること」という「入力スタイルそのもの」の普及に尽力した……というのが、肝心なところなのかもしれない。
 http://www.ykanda.jp/real/hylin3.ram


 そういえば、漢直とかな漢字変換の関係もちょっとだけ分かったような気が。

  • かな漢字変換】──英語のsyllable単位で「かなの文節」を打ち切ることを目的にしている。
  • 漢字直接入力】──英語のsyllable単位で「漢字の熟語」を打ち切ることを目的にしている。

http://www.ykanda.jp/input/epson/pcwork-9504.html
 両者のベクトルは明らかに違うので、どう考えても「どちらかが良くて、どちらかが悪い」とか言い切れる代物ではない。
 しかも、両者は「目的によって分別される」べきですらない……かな漢字変換でコピーライトする人もいるし、漢字直接入力で創作文の作成をしている人もいるのだから。
 ここは今でも「属人的な要素で決まるべき代物」だと思う。