こんな風習にはもうウンザリだ!と、つい叫んでしまったことが。

 個人的にショックだったこと。
 「親指シフトにおける「後退キー」は、なぜあの位置に配置されたのか?」近傍を確認していて、神田さんのサイトから「妙に引っかかる」文章を見つけてしまいました。

一つ目。

 http://www.ykanda.jp/oyayubi/fjnew05.jpg
 「最新ワープロ百科」の創刊意図について……三段組の上段中ほど。
 まさか、この本誌上で「新JISかな叩き」「JISかな叩き」「Qwertyロマかな叩き」が行われた……なんてことは……ないですよね?
 それがあったかどうかは別にしても、いい加減「○○叩き」は止めるべきなのではないかな……と。
 #私自身も気づかずに書いているかもしれないところはあると思います……その場合はご指摘いただければ訂正します。


 本質的な問題として、どの配列でも変わることなく【叩けばほこりが出てくる】ことは事実な訳で。
 しかも、使い手である人間自身の入出力・処理部分は【ある一定の共通性は継承しているが、決して規格化されて製造されているわけではない】ことも事実な訳で。
 人間の機能が個々人ごとに異なるという事実を目の前にして、それでなぜにこういう方向性で「一言で切り捨ててしまうのか」……私には到底理解できない、というのが正直な感想です。


 親指シフト叩き(?)があるから、それに対応して「○○叩き」を行うべきだ、というのがその行動原理であるならば、その行動習慣は「2006年の大晦日をもって打ち止めにして欲しい!」と、そう切に願う次第です。


 どの配列にも、その配列を設計する上で様々な考慮がなされ、様々な試行錯誤を経て公開されているはずです。
 そのキー配列をじっくりと使ってみて「今まで使っていた入力法との感想を述べる」とか、あるいはキー配列の設計で考慮された点について書かれた資料を熟読して「その入力法がどういう観点で設計されていて、それが自分の入力スタイルとどう結びついているのか&どう離れているのか」を述べるとか……そういう方法で記述していくことこそが、これから必要になるのではないでしょうか。
 そういう意味では、設計時資料が少ない配列&設計時の検討内容や中途産出物(特に検討中配列)が明示されていない入力方式は「極端に不利」になるはずです……「インプット→コンバーション→アウトプット」が明確なほうが有利なのは、配列に限らず全てにおいて共通するはずですから。


 そして、「極端な意見を書くときには、それは自分が感じた主観であるということを明示すること」も必要になるのかもしれません。
 それが独善的な主観のままなのか、本当に客観かしうる検討を行った末の主観なのかは「読み手が判断すればいい」のであって、それを「書き手が示してしまう」のはちょっと違うのではないかな……と。
 もちろん、書き手には「書き手が示してしまう自由」はありますし、それを無理やり制限したいとは思いません。
 でも、書き手がそれを示したとして、本当に読み手はそれを「客観的事実」として受け取ってくれるでしょうか?この辺りは検討する価値があるように思います。

二つ目。

 http://www.ykanda.jp/oyayubi/fjnew05.jpg
 「親指シフト」の行く末について……三段組の下段中ほど。
 「○○配列」の中身が変わっただけで、それは実際に起きてしまいました。
 そしておそらく、ここに「親指シフト」が入っていたとしても、やっぱり困る人はいると思います
 #少なくとも、ここに約一名……。


 「(自身が使っている)特定の入力方式が普及する」べきなのか、「個々人にとって使い易い入力法が自由に使える環境になる」べきなのか……そのどちらが信念なのかによって、最終的に表現される内容にも影響が出るはずだと思います。
 私としては、絶対に前者であるべきではない(それは自身に対して悪い方向へと作用する危険性すらある)と感じています。


 他の入力法に対して「その良さを見極めずに叩く」という行為は、決して説得力を持ち得ないと思います。
 仮に読み手がその入力法について熟知しているのならば、なおさらに「なぜこんな見当違いのことを書いているのだろう?」と疑問を抱くのみで、決して共感は得られないはずです。
 そしてそういうことが書いてあれば、結局は文章全体についても「見当違いのことを書いているのではないか?」と疑問を抱くはずです……こうなっては、何もかも「始まる前に終わってしまう」可能性すらあります。
 本当に比較検証をするのならば、まずその前に「とことん調べる・とことん試す・どういう用途を想定して設計されたのかをつかむ」ことが重要になるはずです。
 そのプロセスを無視して「未検証の受け売り」なり「主観での断定」なりをすると、そのしっぺ返しを食らうのは記述者自身になる恐れがあります。


 どうしてもそれを理解できないとあれば、一度「○○配列と○○配列のいいトコ取りを目指してみました!」というスタンスの入力法を試してみるべきかもしれません。
 実際のところ、「他配列の○○という技術と、他配列の○○という考え方と(〜中略〜)をベースに初期配列を作り、あとは日常使用による評価打鍵を経て製作しています」というキー配列は数多くあります。
 私は大規模な入力法を設計したことが一度もないのでエラソーな事は言えない&真実かどうかの確証は持てないのですが、配列作りにおいて一番大切なことは「過去の配列製作者が作り上げた実績を認め、よいところをきちんと見つける・自分の用途とどうかみ合う部分があるのかを知る」事なのかもしれません。
 今となっては「ゼロから配列作りを始める」ということは稀です。必ず(一つか複数かは場合によって異なるものの)何らかの入力方式にインスパイアされています。そのためには「その配列のよいところを知る」ことが絶対条件なので、結局は試すか分析するかのどちらかは必要になりますし。
 一旦今使っている入力法から離れて、他の入力法を通して従来の入力法と比較する……という事から始めると、何か見えてくるものがあるのかもしれません。
 #少なくとも、私が過去にやってしまった失敗と同じようなことが2007年以降にも繰り広げられるというのはさすがに……という気がしています。


 今のところ、こういうシーンで「お勧めするべき配列」は……うーん、迷いますね。
 Qwertyローマ字入力が主であれば、入力スタイルが似ている&ローマ字入力と干渉しにくい「月配列」系を選ぶか、逆に干渉はするけど少ない学習コストで移行できる「AZIK」のような拡張ローマ字系から探すのが手っ取り早いと思います。
 JISかな入力が主であれば……これは難しいかも。打鍵数をなるべく増やさない方向でいくと「月配列」系かそれに近い入力法から探す必要が出てくるでしょうし、ローマ字入力系を選ぶに場合は「ACT」やJLODのような効率重視の方法でいかないと満足できないかもしれないですし。
 NICOLA入力が主であれば……NICOLAに十分近く、かつ評価打鍵がなされていないと満足できないかも……となると、「小梅配列」系が一番用途としては向いているように思います。
 いずれにせよ、具体的にどれをやって欲しい!ということはないですので、色々と比較検討して「自身の判断で選び、そして試していただく」事が一番重要だと思います。


 ……大晦日に書くべき内容かどうかは微妙なものの、とりあえず自戒の意味を含めて書いてみました。

それぞれの配列を推す理由。

月配列

  • ベースが新JISなので、原理的には新JISの評価に似たことが出来る
    • ベース配列の設計指針はTRONにも継承されているので、「逐次シフトの濁点分離TRON配列」と強引にみなしてしまうことも可能(厳密にみれば全然違うのですが……)。
    • ベース配列は80年代配列で唯一(?)人力による「論理配列の」評価打鍵が「配列決定の重要な部分」を占めていて、使用した文字頻度表に依存するワナから逃れている可能性が一番高い。
  • 逐次シフト前提で設計された新JISからの派生配列であり、かつ花配列が採用した中指逐次シフトというアイデアの上に乗っている。そのため既存の入力法と比べて乖離度合いが低く、移行障壁が少ない。
  • 今のところ「月配列」は概念であって、特定の配列ではない。様々な設計指針を元に派生配列や近似配列が作成されており、候補が多い。ゆえに、それらの中から自身が求める配列を発見できる可能性が他の配列よりも高い。
  • 月配列2-263版については、50音順学習できるようにシートを作成済みです。PDFのp.8をどうぞ。


AZIK

  • 個人設計&非商用配列では群を抜く普及率。いくつかの商用配列よりは十分に多い言及がなされていて、比較的評価が固まっている(=自分自身にとっての向き・不向きの判定をしやすい)。
  • 慣れることが出来るかどうかという点は個々人次第であるが、規則そのものは比較的単純。
  • Qwertyローマ字ベースなので、Qwertyローマ字から移行する場合には手っ取り早く試すことが出来る。
  • (基礎配列は固定されているが)拡張部分については評価打鍵による配置がなされている。


ACT」と「JLOD

  • Dvorak配列を試したいが、英字配列として試すには打鍵量が少ないから……という場合に向いている。和文入力用に特化した拡張がなされているため、使い方次第ではDvorak標準ローマ字入力よりも使いやすい場合がある。
  • 基本は交互打鍵、左手の拡張を使えば左手は楽することが出来、右手の拡張を使えば拗音類を右手のみで打ち切ることが出来る……右手のほうが器用ならば、ぴたりと来る可能性がある。
  • (基礎配列は固定されているが)拡張部分については評価打鍵による配置がなされている。


小梅配列

  • 親指によるシフトの方式がそっくりNICOLA互換の「2指親指シフト方式」かつ「非連続シフト・同時シフト」。
  • かなの配置方法がNICOLAとおなじ「清音・濁音同一位置配置」かつ「半濁音も同時打鍵」。シフトの面振りみのTRONとおなじ「濁音は逆手シフト面に固定・清音は同手シフト面かアンシフト面に配置」。
  • 句読点が親指シフト互換。(TRON・飛鳥はQwerty互換、さら配列は独自)。
  • 配列設計者である141Fさん自身がNICOLAの利用者であったため、「NICOLAの良いところを生かす」方向での改善が行われていると期待できる(このあたりはBlogにおけるRayさんとのやり取りをご覧いただければハッキリするはずです)。
  • NICOLATRON・飛鳥の影響を受けていることから、一つの配列で3方式の良いところをいっぺんに見渡すことが出来る可能性がある。
    • 特に「公式ページの記述を理解しようとする」ためには、各方式への理解があるほうが有利。各入力法の影響を受けた小梅を試せば、そこにある記述を通して各配列の特性をいっぺんに理解できる可能性がある。
  • 小梅配列1.21版については、50音順学習できるようにシートを作成済みです。PDFのp.6をどうぞ。


 ……と、こんな感じでしょうか。
 事実誤認などがありましたら、ご指摘いただけますと幸いです。