USBヘッドフォンアンプ、とりあえず部品が到着。

(過去: USBヘッドフォンアンプを組んでみたい……音質はこの際あまり気にしないので。)

 さて、今ちょうどVICS製の「TI/バーブラウンPCM2704使用のUSBオーディオキット」が届いたところなので、説明を紐解いてみました。
 ……あれっ、キット全体の回路図が載ってないですよorz
 さて、どうしよう。
 同じキットを2つ買ったから、プリント基板ももちろん2枚あるわけで……実物を見て配線図を起こすほうが楽だよなぁ、やっぱり。

出力段の回路図を描いてみた。

 http://www.vics.co.jp/product/kit/pdf/PCM2704.pdf
 このP25にある「回路図例」のうち、「Pin14:V_OUT_L」「Pin15:V_OUT_R」以降の配線(要は、PCM2704DBの出力側のみ)に相当するキット側配線図を描いてみました……元配線図ではCR地絡+R地絡の後でDCカットしているだけなのですが、本キットではOPAMPを通しているせいで色々配線が異なるので、その差分のみ(他は基本的には同じなのですよ)。


 部品番号は、全てVICSキットの番号を使用しています。なお、プリント基板を2枚並べてじっくり見比べましたが、間違いはあるかもしれません。

(2006年11月14日6:47:48追記:回路図は削除しました……)
 ちなみに、R13とR16を変更することで、増幅率を変えることができます。計算による代表的な予想値は画像一番下に、増幅率の計算式そのものはOPAMP記号の右に書いています。OPAMPは非反転入力側に信号を入れているので、反転入力側を抵抗なしで出力側と結べば増幅率は1倍となります……計算式に「1+」とあるのはそのため。あとは、出力・反転側間の抵抗値が上がれば上がるほど、増幅率は上がる……ということで。抵抗を除去する(抵抗値=絶縁抵抗≒∞)と、アンプ自身の増幅率そのままで110dB以上(何倍かは忘れたorz)の増幅率になります。


 USB-DACの出力とOPAMPを直結している場合には、USB-DACの基準電圧(0.55V)がOPAMP通過後に2.5Vとなる倍率が最大となるはずです(注:実験で確認したわけではないので注意)。それ以上に倍率を上げると、すぐに基準電圧が5Vの中間点を超えてしまい、上半分の波形が再現されず「音量は上がらないがひずみだけはバリバリ出る」という状態になってしまいます。

 2006/06/11追記: http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2004/0615/nishikawa.htm によると、現在の定数で既にOPAMP出力端には2.5Vが掛かっているそうです……私の計算には誤りがあるらしいorz

 これをどうしても回避したい場合は、USB-DACの出力をDCカットコンデンサでDC遮蔽し、かつその後に(0.55Vp-pの中点である)+0.275VでクランプしてからOPAMPに導入すれば、原理的にはより大きな出力波形を得ることができます……OPAMPはRAIL-TO-RAIL(電源電圧ぎりぎりまで出力波形が得られる)仕様なので、2Vrms(5.66Vp-p)は電源仕様上取れないものの、1.65Vrms(4.68Vp-p)ぐらいまではいけるかもしれません。もっとも、そこまでするなら「始めから5.66Vp-pが余裕で取れる別電源を用意して、USB-DACのDigitalOutを真っ当なDACへと接続する方が楽でしょ」という話にもなりかねないですけど^^;。


 ちなみに、ヘッドフォンを接続する場合には、
 http://www.vics.co.jp/product/kit/pdf/PCM2704.pdf
 このP26にある「回路図例」のうち、「V_OUT_L」「V_OUT_R」以降の配線を真似すれば大丈夫です。……元配線図ではCR地絡+R地絡(値が異なる)の後でDCカットし(値が異なる)、さらにR地絡しています。その差異にご注意ください。


 ……って、キットを作りもせずに何書いてるんですか私は^^;

肝心なことを書き忘れた。

 ヘッドフォンアンプとして使い、かつOPAMPを使用しない場合は、次の部品が不要となるはずです。

  • OPAMP自身
  • OPAMP電源系: R6(Rail-to-Railのため、外部に保護抵抗が必要), C9(OPAMP用の安定化コンデンサ)
  • OPAMP右チャネル系: R14, R13, R12, R11
  • OPAMP左チャネル系: R19, R17, R16, R15

 また、次の部品は変更する必要があります。

  • OPAMP右チャネル系: R10(OPAMP用の20kではダメ、p26に従い3.3kにする)、C14(同100uFへ)
  • OPAMP左チャネル系: R18(OPAMP用の20kではダメ、p26に従い3.3kにする)、C15(同100uFへ)

 そして、次の部品を追加する必要があります。

  • 右チャネル系: +Rと-R(出力用穴)に3.3k、これと負荷が並列接続になるようにする。
  • 左チャネル系: +Lと-L(出力用穴)に3.3k、これと負荷が並列接続になるようにする。

 部品が抜けた分、ジャンパ線を使って次の場所同士を結わえます。

  • 右チャネル系: R14用穴の非アース側(基盤上側)←→R11用穴のコンデンサ側(基盤上側)。
  • 左チャネル系: R19用穴の非アース側(基盤左側)←→R17用穴のコンデンサ側(基盤上側)。

 うーん……抵抗は在庫あるけど、コンデンサってどこかにあったかなぁ……^^;

100uFを見つけたッ!でも……

 今回キットの基盤と、今日発掘した未使用100uF電解コンデンサ

 真空管アンプのB電源用に使うためのコンデンサなので、(別に音質的に有利だと言うわけでもないのに)ただ耐圧が高い(400V仕様)からという理由でこんなに大きかったりします。
 今はこれで組むとして、次に備えて部品は調達しないとダメですね……。

とりあえず完成。

 仕上がりはとっても間抜けです。

 いくら仮組みだからといっても、これはないよなぁ……orz
 ケースと、ケースへの固定方法を考えなければなりません。バラすのが前提なので、ヘッドフォンジャック側はちょん付け状態ですし。


 基盤の拡大をすると……

 まるで製作途中のようです^^;右下はスカスカ。
 C14/C15はここに取り付けできず基盤外に移動したので、基盤側はジャンパ線で処理。
 R14-R11ジャンパ線とR19-R17ジャンパ線は、ちょっと写真では見づらいですが予定通りに取り付け。


 実際PCに繋いでみると、案の定あっさりと動いてくれます。
 ヘッドフォンを駆動するだけならば、OPAMP周辺回路は不要かと。


 もともとヘッドフォンの駆動を前提に設計していないOPAMPでは、ヘッドフォンの抜き差しをするときに発生するレアショートを防止できませんし、しかもこの基盤ではDCカットコンデンサの後段に放電抵抗をつけていないので、ヘッドフォンを挿したときに「大きめのポップ音」が鳴る可能性もあります。
 それならば、いっそのこと余計な外部回路は取り払って、始めからそういうことを想定して設計されているDAC出力&推奨回路図をそのまま使うほうが、よほど安全で良い気がします。


 で、この回路にはナマモノ(電解コンデンサ)が使われているので、とてもじゃないですが「作ったその場で音質評価をする」わけには行かないんですよね……。
 数十時間〜百数十時間ぐらいバイアス電圧を掛け続けて、ようやく性能が安定するはずなので、それまでは「とりあえず普段使いする」しかなさそうです。
 #とはいえ、音楽を流し続ける必要は全くなし。ただ電圧さえ掛かっていれば、それでエージング(ではなくて電解膜再生)は正しく進行するはず。

仕上がり直後の音質について

 無圧縮ソースの弦楽器ネタetcを聞いたらボロが出そうな気がしたので、とりあえず圧縮音源を聴いています。
 左右のセパレーションが若干悪い気がする(あくまでも気がするだけ)のですが、もともとDAC自体のセパレーションが-60db級で、しかも変なジャンパを飛ばしてるから……ある意味当然なのかもしれません。
 #そもそもデータシートを見て、かつ配線状況を知っているからそう思う(プラシーボ)だけなのかもしれません。


 圧縮音源に収容されている程度の低音域&高音域は、とりあえず問題なく再生できているようです。EtymoticReserch/ER-4P(注:耳垢進入防止フィルタは交換寸前)で聴いた程度ではボロが出ないようですので、あとはフィルタ換え&エージング進行後にCDソースによるチェックしてみたいところで。


 内蔵のデジタルボリウムについてはテストしていませんが、接続時にフルボリウムとなっていることから、実際には使い勝手が悪く役には立たないかも……これはちょっと誤算でした。
 ボリウムゼロで開始できるモードがあるのかとデータシートを漁ってみましたが、どうもそういう機能は無いような感じです。


 全体的な感想ですが、ひとまず「趣味方面の交換に必要な部品・半田ごては所有していて、しばらく電子工作をしていなかった人向けのリハビリ用途」にはピッタリ来そうなキットだと思います。
 本気で部品変更を行うならば、抵抗は100本単位で買ってデジタルテスタで測り「0.1%単位で」値の揃ったものを使うとか、そういう気合がないと「ただ高い部品を使って自己満足するだけ」という状態に陥りかねないですし、なるべくライトな気持ちで製作するのが良いのではないかな……と思いました。
 極端な話、キットに付属していた「1%精度の未測定金皮抵抗」は1%範囲内で見事にバラけていたので、個人的には「5%精度の一般的な抵抗をデジタルテスタで測定分別する(3桁テスタで0.1%精度を確保できる)」方が、趣味の範囲でやるなら有利なのではないかと思っていたりします……で、これはコンデンサでも同じことが言えるのは困り者なのですが……orz


 とりあえず、半田付けの腕がなまっていないかと不安な方は、ぜひ一度チャレンジしてみてください。動いてしまえば至極実用的に使えるので、あまり時間が掛からず製作でき、かつ満足度の高いものになると思います。

で、厄介な点について。

 このキットを組み立てるためには、次の道具が必要になります。

  • 半田ごて&半田&コテ拭き……当たり前か。
  • ラジオペンチ……これも当たり前、リード線の折り曲げ用に。
  • ニッパ……これも当たり前、リード線の切断用に。
  • できれば4倍率以上の虫眼鏡……コンデンサの容量表示印字があきれるほど薄く小さいので見づらい&たまに表示が違う(今回キットでは「220」の指示に対して実物は「22J」だったり)ので、これがないと分別作業で躓きます。
  • デジタルテスタ……できればコンデンサの容量測定ができる物が望ましいです(印字を見ずに直接測るほうがはるかに楽なので)。抵抗器のカラーコードもえらく見づらいので、テスタで測るほうが楽です。付属抵抗は1%精度なので、その範囲内で測定値はばらついています。
  • みの虫クリップ付きリード線が2本……たいてい5色セット(5本セット)で売っています。テスタのテスト棒では抵抗値を計るのは困難なので、これでつまんで計るしかないかと。
  • プラスチックトレイ、もしくはメモ紙……部品を分別する場合に使用します。使用例は下の写真にて。絶対に間違える恐れがないものは同じ紙に乗せていますが、それ以外はきちんと分別しておかないと、半田付け時に取り違える恐れがあり大変です。

  • 【2004/06/08追記】モバイルクルーザーなどのAC-USBアダプタ……製作後、100時間程度のバイアス電圧掛け(エージング)を行うためにある方が良い。常時電源ONなサーバーがあるならば、それに繋いでおくだけでも用は足りるものの、普通の人はサーバーなんて運用してないでしょうし、これのためにPCを100時間連続運転させるのも酷でしょうから。