『速く打鍵できる配列・速く打鍵できない配列』の差は、存在するのか?

(過去:同時打鍵法における体感入力効率の転換点予測についての仮見当。 - 雑記/えもじならべあそび)
(過去:同時打鍵法における実質制限速度についての仮見当。 - 雑記/えもじならべあそび)


 ……また、↓の話。


 これまでは、『1文字あたりの総所要時間が短い配列』を使えば『速く打鍵することができる』という風に考えていました……が、タイパーさん方の言動等々を延々と拝見してると、どうもこの表現が正しくないッぽい。
 しかも、タイパーさんにとってだけ、正しくない。」ってゆー限定的な話じゃなくて、もっと根本的に『そもそも、正しくない。』んじゃないか?と……そう感じました。


 この違和感、延々と続いていた……のですが、最近ふと、↓の原点に帰ってみました。

  • ある特定の人がやる限り、どの配列でも、慣れた後の速度はほとんど同じはず。
    • なのに、「特定の入力法を速いと感じたり、楽だと感じたりする」人がいる。


 ここで、先のグラフが登場するわけです……が、少しグラフに線を追加しています。
 先のグラフに対して、今度は同時打鍵単字かな系(1.00act/かな)の青線よりも下に、マゼンタの点線をつけました……これは同時打鍵拗音かな系(0.97act/かな)のものです。
 このグラフでは速さにフォーカスしようとしているので、総押下数ではなくアクション数をグラフにプロットしています*1

 このグラフは、速度そのものではなく「その速度を出したときの、(人的なものではなく入力方式自体の)余裕度」をあらわしています。
 逐次打鍵法では、総合打鍵効率(総運指距離・総打鍵量)だけに依存して余裕度が決定されます。
 同時打鍵法では、総合打鍵効率だけではなく速度そのものにも依存して、余裕度が決定されます。


 余裕度の分だけ速く打てる……と考えると、このグラフから次の推測ができることになります。

  • 逐次打鍵系は、配列によって決定付けられた余裕度と、自身の訓練度にのみ依存して、今が速くても遅くても関係なく、(人的なものではなく入力方式自体の)入力可能速度が決定する。
  • 同時打鍵系は、配列によって決定付けられた余裕度と、自身の訓練度だけではなく、本人がもっとも特意とする入力法における最大速度に依存して、(人的なものではなく入力方式自体の)入力可能速度が決定する。
    • 同時打鍵系だけが速度によって条件変化するために、現在が低速なら「同時打鍵法が増速しやすい」と感じる可能性があり、逆に現在が高速なら「逐次打鍵法が増速しやすい」と感じる可能性がある。


 指負担に対する効果が総押下数に依存し、速度に対する効果が総アクション数に依存するとなると、同時打鍵法と逐次打鍵法との間で「どっちを選ぶほうがよいかの閾値」は、上のグラフから以下のように推定できる可能性があります*2
 ※基準は全て「タイプウェル国語R/K基本常用における、総合評価」によるものです。

逐次系効率\閾値 逐次系が速度余裕大きい 同時系が速度余裕大きい
1.25打鍵系逐次配列 タイプウェルXB以上 タイプウェルXB以下
1.35打鍵系逐次配列 タイプウェルXA以上 タイプウェルXA以下
1.73打鍵系逐次配列 タイプウェルXX以下 タイプウェルXX以下


 単純速度については、訓練度に応じて上がっていくはず。
 ただし、訓練度に対して「入力方式そのものが与える影響」と「入力時の余裕度(速度余裕および楽さ)」も、以上のように絡んでくる……となると、訓練するよりも前に入力法に付いての見当を行ってみる価値があるかもしれません。


 ……で、どっちにすればいいの?ッて迷ったときには、以下のようにして決めるといいかも。

投資可能な訓練時間\器用さ 運動神経は良い 運動神経は悪い
1日あたり数時間を投資可能 逐次打鍵法でZJ目指せ 速度目標に応じて決めよ
1日あたり数十分が投資限界 速度目標に応じて決めよ 同時打鍵法にしておけ

 まぁ、これで皆が幸せになれるか?なんてことは解らない……わけですが、考え方としてのこういうことが正しいのかどうか……ってのは、そのうち確認できるならやってみたいところですね。
 #そのときには、「かえで****あすか」について、速度コンテスト?をやります。 - 雑記/えもじならべあそび】での「低速度側ユーザーさんによるチャレンジを募る」つもり。
 こーゆーのは思考実験するだけでもよさそうな気はする……けど、テストする余裕があるならチャレンジャーを募って実際の評価を受けたいんですよね。私は論破法じゃなく実例法で実情を提示したいタチなもので。

2011年4月13日20:37:10追記。

 ステノ他(速記系)についての話が、よろしければ〜スレッドにおいて出ていました……なるほど、たしかに足りてなかったですね。ご指摘頂きありがとうございます。


 ここまでの考え方でステノを表現すると……↓のようになると思います。
 斜めの青線に対して、上にくっついてる点線が1.03かな系(拗音かな同時打鍵系)で、少しはなれたところにある同じ傾きの線が2.00かな系(速記系の仮の値)です。

 ステノというか速記系はステノ(スピードワープロ)の場合は「口述の非圧縮記録」に向けて最適化された14ビットコードで入力を行うので、基本的な圧縮コードは汎用的に使えても、応用部分は通常の日記とかでは頻度が落ちるかも。
 打鍵効率については、何かな/アクションなのかがわからないので、とりあえず計算しやすいところで『2かな/アクション』にしました……これでタイプウェル4.5ランク分の差が出るので、仮にステノが『3かな/アクション』なら、タイプウェル9ランク分の差が出ることになるわけで。
 もっとも、それを達成するためには「(ステノなら)14ビットコードを必要分だけ覚えて、すぐに使える状態を維持しなきゃいけない」わけで、それに対して投資できる人にとっては(打鍵速度が遅くても)速い入力速度が得られる……と。


 かな系を覚えるのすらしんどい人・拡張ローマ字の拡張部分は覚えられない人・漢直でも速記系でもばっちこーい!ッて人とか……いろいろいると思います。
 自分にとって覚えられる範囲のものを使って訓練度を上げていけば、それが一番速く入力できるようになる……とも言えるところかと。
 このあたりは、こういうグラフでどうにか表現できるというわけではなさそうなので、これらの表現方法については今後の課題にするしかなさそうです。

*1:指に対するダメージの少なさを表現して『楽に打鍵できる配列・楽には打鍵できない配列』をプロットしようとするなら、ここではアクション数ではなく【指ごとの総押下数】をプロットするでしょう……。

*2:速度に対する効果が総アクション数に依存する場合、拗音系は単字系とほぼ同一と見なせるレベルのアクション数差であるため、以下の表では両者を同一視しています……これが「指負担に対する効果が総押下数」の話だったら全然無視できない差なので、そっちについて書くときには区別して評価します。