飛鳥と小梅は『評価思想』が異なっている……のかも。

 これは使い手にとって関係あるかどうかは解らない……けど、作り手なら一度は読んでおくと、何かピンと来るものがあるかも。


 141Fさんの記述で、特に面白いのは、ここかな……。

小梅配列
しょ
右無+左無
0+106=106


飛鳥配列
しょ
左無+右無
0+100=100


Nicola
しょ
左無+右同
0+125=125


(from Weblog 61℃: 小梅配列の「ゃゅょ」が左手側にある理由。 )

 この話、「ゼロ負荷」と評価するポイント(=モーラが途切れた後の初打鍵ポイント)をどこに(というか、いくつ)置くか……という、『視点のとり方』によって、鍵盤配列の評価はいかようにも変わりうる……という考察を可能とする、興味深い評価方法に発展しうるところが、特に面白いと思う。


 それと、『飛鳥』と『小梅』とで、この『視点の取り方』が異なっていて、それが素直に設計へと反映されている……という風にも読み取れる。

  • 『飛鳥』──2-gramでの体感速度を優先。
  • 『小梅』──3-gramでの体感速度を優先。

 このあたりについて反映されてるのが、一見「?」に見える、以下の言及……このあたりの背景を解ってないと「詭弁っぽく見える」のだけれど、『視点の取り方』とそれに基づく『設計・評価方針』がもともと違うって前提を解ってると、「あー、そこに『狙いを定めて』設計したのか、なるほど……」って思えるんじゃないかな、と。

入力時間を短くするために最も肝心なことは、左手側の連打を避けることです。このことに関しては飛鳥配列も小梅配列もよく対策できていることが、上記の比較からも分かります。


拗音を含む 3-gram をモーラ単位で見ると、例えば「しょう」は「しょ」+「う」の2モーラに分割することができます。ここで「しょ」の入力には倍速打鍵が働いて、飛鳥配列で言えば[S]→[,]と順に打鍵するのではなくて、[S]と[,]の2つの文字キーを同時に打鍵して、「しょ」が一気に入力されている感覚に限りなく近付きます。


(from Weblog 61℃: 小梅配列の「ゃゅょ」が左手側にある理由。 )


 こーゆー絡みって、ユーザーに対して『何を提供したいと狙っていたのか』って核の部分が、強く絡むと思う。

  • 『飛鳥』──n-gramは長くなるけど、その中でも「先頭の2-gram」を差別的に速くして、そこに対するストレスを極限まで低減しよう。
  • 『小梅』──n-gramは長くなるけど、その中でも「先頭の3-gram」や「3-gramの繰り返し」全体を操作したときのことを見越して、そこに対するストレスを極限まで低減しよう。

 141Fさんは、不思議な計算方法を採って、たぶんわざと「詭弁に見える」ようにしてたんだと思う……けど、あえて最後の計算を使わなくても、『小梅ユーザーに対して提供する、小梅としての速さ理論』の正しさッてのは説明できる話。
 フツーに考えて、小梅にとって対象とするのが3-gramなら、「3-gramにおける中間の文字は、非利き手側に置くほうがいい」ってゆー、(欧文配列におけるCVCCVCというつながりのうち、Cに当たる「連接しうる子音」を利き手に配しているのと同じ考え方なので)当たり前の話がそのまま適用できるし……これは欧文系のタッチタイプ前提配列が一様に採用していて、この特性が「中途半端な性質を持つ和文」専用の拡張ロマカナ入力について、右手側に拡張を寄せる版をたくさん生み出した要因にもつながっていると思う。

 欧文系だと(子音(C)→母音(V)→子音(C)が続いて)CVCCVC……ってパターンもあって、子音(C)が続くCCの部分あたりは「(速く動かせる)利き手→(速く動かせる)利き手」に割り当てるしかないから、行段かな系とはまったく逆に「(早くは動かせない)非利き手に母音を割り当て、(速く動かせる)利き手に子音を割り当てる」しかない、と。
(from (memo)「非利き手で打ち始めて、利き手で打ち終わる」のが、体感上最も速い、のかも。 - 雑記/えもじならべあそび )

 つまり、『小梅』は全体最適による「全体の増速」を見越して、当たり前のルールをキチンと採用した……一方で『飛鳥』は局所最適による「初速の増速」を差別的に優先するために、あえてひっくり返して採用した*1……って、そんな風に解釈できると思う。
 『作者の強烈な想い』が、こうして配列の差として現れる……ってのを見ると、やっぱり配列作りは「複雑」だし「面白い」と感じるところで。


 私が「文字キー同士同時打鍵方式」に対して危機感を感じてない(=どうしても乗り換えしたいという強い思いを抱くに至れていない)理由のうち、いくつかはこういう『飛鳥スタイルによって、擬似的に解消できちゃっている部分』が影響してるのかも……だから余計に「乗り換えに失敗しやすい」んだな……ってゆー、困った事実がまた一つ見つかってしまった気がするorz。
 #てゆーか、だんだんと「かえで****あすか」が、『親指シフト系の配列』じゃなくて、『文字キー同士同時打鍵配列が使いこなせない人のための代替配列』ッぽく見えてきちゃった……それじゃ(乗り換え先配列の制作意欲が削がれちゃうという意味で)ダメじゃんorz。

*1:ここでややこしいのは、飛鳥の場合「右手からイ段カナを追い出して、その分だけウ段カナとオ段カナを詰め込む」設計になってるところ。飛鳥と小梅では『右手→右手の速さを、何に活用するか』ってゆー方針が異なっている……という風に説明するべきところでもある。