FKB7628-801は、親指シフトキーボードから「背の高い親指シフトキー」を廃する、第二歩目の姿なんだな……と思う。

(未来:親指シフトキーボードの、FKB7628-801を発注してみた。 - 雑記/えもじならべあそび)
(参考:http://homepage1.nifty.com/cura/oya/oyakey_truth.html)
(過去:何故ここまでやっているのに、肝心なところでしくじるのかと……。 - 雑記/えもじならべあそび)


 親指キーを共用型とした場合、親指キーをどんどん低くしていっても、別に問題がない……ってゆーのは、たぶん中の人は「感じはじめてる」んじゃないかと思う。
 KB232もそうだったけど、FKB7628-801ではそれをより強く表現してると思う。
 で、他のキーと高さが似通ってくることで、始めて見えてくることもあるはず。
 ……たとえば、なぜ「タブ」や「空白」が、親指シフトキーと違って打ちにくくなっているの?とか。


 どんどん使って、あれこれ削っていくうちに、たぶん「今までとは違うキーボード」になっていくと思う。
 その姿は、たぶん「A段キーはすべて同じ高さになって、かわりにA段下の指に接するヒンジ部分が、従来よりも数ミリ地方向に低くなっている」ハズだろうな、と。


 親指シフトキーボードってのは、もともと手前のヒンジがスロープになって「低さ」を稼いでいて、その上に「低めの(無)変換キー」が乗って、そこに干渉しないように「高めの親指シフトキー」をつけるしかなかった……ってゆー物理構造なのだと思う。
 一方で、今では「低めの(無)変換キー」がキーコード縛りの影響で実装できなくなっているから、その影響で「低めの親指シフトキー」が実現できてる。
 ……ただ、今の状態でもまだ「他と同じところまで、高さを下げる」ことをしても、その分をヒンジ側で低く保てばいいだけの話なんじゃないかと思う。


 一般的に、エルゴに近いキーボードとして「シリンドリカルスカルプチャーキーボード」ってのがある……けど、親指シフトの場合は「指を形作って、手のひらごと押し下げる」ってゆー動作が入る。
 シリンドリカルスカルプチャーやそのまねをするようなキーボードを使って「同時打鍵」をしようとすると、「上から1方向に押し下げているはずなのに、キーを押した瞬間から指はバラバラな方向に強制誘導される」ってゆーことになってしまう。
 ……これって、指にとって「負担にはならない」けど「エネルギーのムダにはなる*1」ので、基本的には「親指シフトにとっては、やらなくてもいい構造」だと思う。


 それから、親指キーを高めにする理由として「横から指で押さえるから、すぐにA段下のヒンジに干渉する」ってゆー問題もある。
 ……だから親指シフトキーをかさ上げする、ってゆーのが、今までの解決方法。
 ……でも、これっておかしくない?A段にはあるのは「親指キーだけじゃない」んですよね。
 A段にあるキーを全部打ちやすくするなら、A段にあるキーを全部かさ上げするか、A段下のヒンジを一律で薄くするかの、どっちかをやるのが順当だと思う。
 ……でも、A段を全部かさ上げするってのは、どうも「やり方として、スマートじゃない」様に思う。
 ヒンジを下げて、盤面はフラットなままで「親指の側面が、ヒンジに干渉せずに打てる」状態にするほうが、もとの親指シフトキーボードの設計思想に「より近づくことができる」んじゃないかと、私はそう考える。


 FKB8579-661EVでは、何を間違えたのか「専用のパームレスト」をつけることによって、「ワープロ専用機時代のキーボード設計者が意図していた、ハードウェアレベルでのエルゴ姿勢」を、誤って崩してしまっていた*2のかも。


 次の親指シフトキーボードは、もしかすると

ってゆーものになっているかもしれない。


 親指シフトキーボードは「親指キーが嵩高だから」同時打鍵がしやすい……って説明されることがあるけど、実際それは「他のキートップと、親指キーとの間の、相対的な高さとして」確保されている必要は全然ないんじゃなかろうか。
 たぶん「A段下のヒンジと、親指との間の、干渉を防ぐ」ってゆー目的さえ果たせていればいいのであれば、「A段下のヒンジと、親指キーとの間の、相対的な高さとして」十分な高低差を確保するだけで済ませるほうが、システムとしてスッキリするんじゃないかと思う。


 ……って、これはテキトーに言ってる話じゃなくて、「親指キーが高くなく、かつヒンジが低くないノートPC」を使って、延々と親指シフト方式の入力法を6年以上打ってきた上での感想、ということで。


 親指シフトの場合、せっかく「先賢が作り上げた、ワープロ専用機時代の物理鍵盤」という、いいお手本がある……のだから、今までにも増して「しゃぶり尽くすくらいに」当時の物理鍵盤を評価打鍵しまくって、その打鍵感を「現世に復活させる」方向に持っていって欲しいと思う。
 いまの富士通コンポーネントには、いいデザイナーといい設計士が揃っているみたいだから、今後親指シフトに対する、もっと根源的なところの研究」に突っ込んで行ってくれると期待したいし、成果としてのハードウェアに反映させていって欲しいと思う。


 すくなくとも、FKB7628-801の設計バランスは「見事!」だと思う*3
 「声」に振り回されたりせず、自分たちが持つ「手指」の意見を、高い次元で上手く調停させることに成功していると感じる。
 ここから上手く発展させて、「親指シフトキーボードとしても、JISキーボードとしても、どちらとしても使いやすいハイブリッドキーボード」に到達してくれると、キーボードをプッシュする側としては宣伝もやりやすくなるし、自動的に出荷可能本数も増えるだろうから作りやすくもなると思う。
 「みんなが幸せになれる、21世紀だからこその、ハイブリッド親指シフトキーボード」には、もうすぐそこまで手が届いているはず。今後ともに、彼女彼氏らの活躍には期待したい。

*1:これは「そのまま押下した場合」の話。中途半端ではないシリンドリカルな構造のキーボードだと、「手指を若干広げるように動作させて打つ」ってゆー選択肢が取れるようになるので、これだとまた負担のかかり方は変わってきて、「手首に力を掛けずに、指先で処理する」には都合が良かったりする。どっちがいいか?ッて話から外れて、「その人にとって、どっちが打ちやすいか?」というところにすごく近い話になると思う。

*2:ヒンジをすごく高くしてしまう、覆い被せタイプのパームレストを付けた……ってゆーコトが原因で、親指キーを「あんなに高くしなきゃ、同時打鍵操作が成立しない」ってゆーコトになっても、不思議ではないのかも。まさに「ブートストラップしまくり」の結果なのかも。

*3:特に、個人的には「採色」のセンスがいいと思う。「FMVらくらくパソコン」の採色を考えた方と、同一人物なのかなぁ……色が持つ印象を、うまく「これからの親指シフト像」へと転写することに成功していて、とてもいい印象を与えることができていると思う。まさに「採色の魔術師」と言うべきか。