(memo)ローマ字かな入力の打鍵効率は、「音読み漢字を選択したがるかどうか」によって、大きく変わる。

 ……何度も書いてる話だから、読みなれちゃった人は、以下を無視しても大丈夫です。

  • 私がAZIKをやってた頃の「ロマかな打鍵数→かなもじ数」変換比は、1.4くらいだった。
    • 音読み漢字をたくさんちりばめたい人は、ローマ字系のほうがいい配列にめぐり合いやすい。
  • わたしが飛鳥で2年くらいやった後の「ロマかな打鍵数→かなもじ数」変換比は、1.73くらいだった。
    • 訓読み漢字とか、やまとことばをたくさんちりばめたい人は、かな系のほうがいい配列にめぐり合いやすい。

 ……この前提を持って、以下の最後にあるグラフを check it!

 漢字含有率4割のときに*1、M式はすばやく立ち上がり、かつトップスピードもはやい……ってゆーグラフがあるけど、そのカラクリは上記のようになってる。
 M式のような「母子分離式の行段系配列」について「立ち上がりがQwertyローマ字入力よりも早い」のは、入力文章によらず真。ローマ字よりも新JISかなが「すごく鈍い立ち上がり」になってるけど、これは新JISに限らず、カナ系に特有の現象*2
 一方で、「M式と新JISの、トップスピード差」については、入力文章の内容次第で大きく変わるから、このグラフだけを単独で見ても解らないよ。
 #たとえば、住所氏名などのデータエントリー用途だと、「M式」の効率は、このグラフよりもさらによくなる……非漢直入力法のなかでは、向かうところ敵なし!に近いくらい。逆に、うちの日記みたいなのを書こうとすると「ちょー使えない」ってなる、と。


 つぎに、これと正反対に見えるのが、NICOLAフォーラムのグラフか。

 「行段系配列よりも、カナ系配列のほうが、立ち上がりが速い」ってゆーのは、さすがに不自然すぎる。
 行段規則ではない……というか、たぶんHolizonal methodかVertical methodのような練習方法を採用して、かつ「英字入力→ローマ字変換テーブルを掲示した入力」っぽくしていて、「わざと行段系配列のイイところを殺す練習方法を採用してる」って感じ*3
 ……ってゆーか、なぜにこう、「欲しい結果をだすための測定」をしてしまったのだろうか。
 ……で、もちろん神田さんは犯人?じゃないです。以下は神田さんの発言。

 ローマ字入力は2〜3時間までは覚える文字数が少ないこともあって他の入力方
式に比べて入力速度は早いのですか、その後は向上しません。これは打鍵数が多いの
と、日本語をローマ字に変換することを頭の中で行うことが、英語を使い慣れない人
にはマイナスに利いているようです。・・・とこの本には書いてあります。
(from http://www.ykanda.jp/oyayubi/oasys01.txt )

・マスターに時間が掛かる。
 ローマ字の方が早いと思います。しかし、マスターに時間がかかろうともそれ以降
は一生使うのですから、少し位の差なら問題は無いはずというのが私の意見です。
自動車の運転だってそんな簡単ではありませんよね。
(from http://www.ykanda.jp/oyayubi/oasys01.txt )

 こうした神田さんの発言と、グラフとがかみ合ってない……ってことは、測定内容の「どこか」に欠陥があった、ってコトだと思う。
 真面目に測定して、きちんと「初速ゆっくり、後から追い越す」ってゆーグラフが出てれば、後々でも使えたのに……もったいない*4


 ちなみに……実際はこんな感じなんじゃないかと考えてるところ。

  • 初速は、入力法の構造が持つ規則性 × 入力練習法のデキのよさによって決まる*5
  • トップスピードは、入力法の構造が持つ重点 × 入力する文章の偏りによって決まる*6

 PC-98で「パソコン通信」とかに生きてきた人を対象に、わかりやすいたとえで言うと……

  • 鮪フォーマット(*.mag)では、「ベタ色と、ピクセルごとに市松模様で配色したとき」に高い圧縮率が出るよね。

ってゆー感じかなぁ。鮪フォーマットに限ったことではないのだろうけど、圧縮の「癖」は出るよね。
 そして、そーゆー「得意分野・不得意分野」が、それぞれの日本語入力法にもある……と、ただそれだけの話。
 #日本語入力法って、「特定の方法で、文字を圧縮入力するルール」だし。入力法が違うと言うことは、それらの圧縮倍率とか圧縮アルゴリズムとか、あるいは並列度が違う……ッてゆーだけの話。


 ……って、こーゆーのを考えるにつけ、やっぱり

とかが気になるんだよなぁ……。
 数兆かなを対象にした、1-3gram、誰かとってくれないかなぁ……。

*1:自分のblogをつけてる人は、自分の記事で数えてみるといい思う……けど、「文章を構成する文字のうち、4割も音読み漢字が交ざっている世界」ってゆーのは、イマドキだとちょっと考えられない話だ当てはまらない人も居るんじゃないかと思う。

*2:たとえば「JISかな」とか「親指シフト」とかでも、この傾向は同じで、M式の「理論部分に関する説明」( http://121ware.com/apinfo1/content/mworld/2183.htm )は、きちんと合ってる(けど、理論では語られていない、測定対象の文章部分が、イマドキの文章と比べて偏りすぎてる可能性がある)。特に、50音順練習だと、こういう傾向が強くなる気がする。

*3:行段系入力法を速習させるなら、最小入力テーブル(親指シフトと同じ80文字級の変換テーブル)を使って、「少なくとも綴りを連想させない(出来ればかなも連想させず、位置連想で行く)」のが王道だし、効率も良いと思う。逆に言えば、このルールを悪用すると、カンタンにロマかな習熟速度の「立ち上がり部分」を潰すことができる。

*4:……ってゆーか、そーゆーグラフにするからこそ「はじめは辛いけど、練習するといいことがあるさ!」ってゆー根拠になる、ンだけどなぁ……。

*5:その入力法にとってデキが悪いと、初速は配列の規則性を殺す方向に働くので、遅くなる。

*6:漢音たくさんの文章×漢音重視の入力法とか、大和言葉たくさんの文章×やまとことば重視の入力法とかだと、トップスピードが速くなる(ただし、指の速度規制を受けて、伸びきらずに途中で止まる)。