「ワード運」だけではなく「配列運」にも左右されずに競技タイピングが行われれば、競技タイピング界はより「ものすごい」ことになるのかも……。


 tomoemonさんによる今日の日記を拝見しつつ、いままで疑問に思っていたことについて考えてみた。
 そのテーマは……「配列運」。これは配列屋なら「ピンとくる」ンじゃないのかなぁ、と。


 従来は「あまり使われてないけん盤配列を使うのはルール違反」という風な意見をちらほらと見てきた……のだけれど、もしかするとそこには「配列運」というものを隠しておきたかった、という(もちろん明示的ではないにせよ)暗示的意図があったのかも……とか、そんなことを考えてみたり。


 で、打鍵のリズムと言えば、ACT/AZIKの木村先生が書いていらした http://d.hatena.ne.jp/actbemu/20050203/p1 を思い出します……キーボードの打鍵操作について、(タイパーさんにとって最重要となりそうな)運動効率の最大化を目指すには「カナ単位などではなくて、打鍵アクション単位で」一定のリズムを取るのが一番いいと思います。


 ワードセットが解っていて、なおかつその中のワードが(自然文とは違う)ランダムな頻度で出てくる場合は、自然文入力に特化したけん盤配列を使うよりも、「ワードセット」×「ワード単体の出現頻度」を考慮したけん盤配列を使うほうが「自然文の頻度に引きずられた最適化の影響を受けずに済む」分だけ、よりワードセットを打ちやすい(=いわゆる苦手語句の発生率を抑えた)けん盤配列が設計できます。
 動作改善を徹底的に推し進めた「究極的な」競技タイピング向けけん盤配列は、「個々のタイパーさん自身が持つ、指の運動特性と指の強度」×「ワードセット」の組み合わせで決まるので、異なる方が同じ配列にたどり着く可能性はほぼセロになると思います。


 ワード運と配列運の両方に邪魔されることなく、タイパーさん同士の「タイピング能力」を厳密に競おうとする場合、「特定のけん盤配列」に揃えると、ワード運ならぬ「配列運」に左右されてしまい、厳密な競技にはならない……という可能性があるのかもしれません。
 手元では試しに「月影配列(清濁分離版)」というコンセプト配列を公開しましたが、実際には「けん盤配列そのもの」ではなくて、「けん盤配列を生成するためのキット一式(測定ソフト+配列探索ソフト+ワードセット)」として公開するべきものなのかも……と思っていたり(いや、私はそれぞれの著作権者じゃないので、そういう素材頒布は無理なのですが)。


 うーん……暗号解読コンテストとかでやる「平文と暗号文の両方を公開する」ってのと同じように、競技タイピングにおいても「ワードセットが公式に公開されていて、それを参考にけん盤配列を作るように指示がある」とか、そういう方針があってもいいんじゃないかなぁ……と。


 他のたとえだと……水泳では「自由形」と言えば「クロール」なのですが、もともと水泳については「ルールの範囲内で編み出された新たな泳法を、そのつど別種目として分離してきた」らしく、たとえば昔の「平泳ぎ」ルールでは、その範囲内で「バタフライ」が可能になってしまい、平泳ぎからバタフライが分離された……って歴史があったとか。それこそ「クロール」よりも速い泳法が発見されれば、「自由形」から「クロール」が分離されるでしょう。
 そういうのと同じで、競技タイピングにも「自由形」と「○○配列」という風に競技種別を分けるなどしていく必要が出てくるんじゃないかなぁ……と。
 #そういうのが「何年後に流行るのか」は、さっぱり解りませんけれども、タイピングを「競技」と見なす場合、こういう方向が自然なのかも……という気もする。