公教育での入力法練習については「漢字直接入力法」と「英文用英文配列」の二本立てが理想なのかもしれない。

 ここのところずーっと禁じ手とほぼ封印していた「学校がらみ」の話、なのだけれど。
 「学校」という枠ではなくて、「考えることより覚えることのほうがやりやすい年頃」という枠で、現状考えていることを書いてみようかと。
 #実際にそうしてくれ!とかいう要求やら要望やらではないのです。単純に理想論の話。


 人間は大体、「中学校まで」と「高校から」あたりで、得意分野が変わってくるようです。

  • 「中学校まで」──理論記憶よりも単純記憶のほうが覚えやすい。
  • 「高校から」──単純記憶よりも理論記憶のほうが覚えやすい。

 そうすると、たとえば小学校の国語では「漢字書き取りの時間を、漢直の入力練習へと振り替える」という方法もとれるのかな……と。
 日本国内ではたぶんそういう方向には向かわないと思うのですが、(記述効率を上げるために簡体字を作ったほどの)中国では、たぶん将来的にそういう方向に向かうのだろうと予測しています*1
 あと、英語の授業でも「記述するかわりにタイプする」という方向性が生まれても不思議ではなさそう……これは進度別学習あたりの要請から、と。


 私はたまたま「かえであすか」を使っていますが、正直言って「会話ではなく記述」の用途に対して、本当にかな系/ローマ字系/速記系のような「音声を根っこに持つ方式」でその要求を満たせるのだろうか?と、たびたび考えていたりします。
 個人的な理想としては、

  • 文語的文章表現のためには漢直系入力法。
  • 口語的文章表現のためには音声系入力法(≠音声直接入力)。
    • 音声のデータ化が目的の場合は音声直接入力。
  • 互換性維持のためにはJIS X 6002+JIS X 4063ローマ字入力

あたりが終着点なのではないかと思うのですが、現実的には3つも入力法を維持するというのは無理がありすぎます。


 JIS化陳述書には「互換性維持は人間側ではなくシステム側が持つべき」という風に(間接的に)書いてみたつもりなのですが、仮に「互換性維持のためのローマ字入力」を必要としなくなったとしても、漢直系と非漢直系では「どういう面での効率化を行うかというスタンス自体が違う」ので、どちらか片方で両方のメリットを享受できるようなすばらしい入力法を設計するというのは難しそうですし。
 この手のバランスについて現時点でわかっているのは「かなの入力効率が漢字と比べてよすぎる(=漢字の入力効率が悪い)と、漢字直接入力部分を使う気になれなくなってしまう」というあたりなのですが、かといって日本語文における漢字の含有量はせいぜい20%もいかないくらいですから、「漢字と仮名の入力効率を同じにすると、かなの入力が非常に野暮ったくなる」可能性も捨てきれないんですよね……。
 そうすると、たとえば「漢直でよく使うかなの10文字くらいは1打鍵にして、それ以外と頻出漢字は2打鍵、あまり出ない漢字は擬似2打鍵か3打鍵にする」などといった感じの配字バランスをとる必要も、あるいは出てくるのかもしれません。
 「それは贅沢な要求だろ!」と言われるかもしれませんが、いまのところそういう入力法は(私が記憶している限りでは)存在していないようなので、将来的に作ってみる価値はあるのかもしれません。私が造るとなると、たぶん(左右鏡面配列を作るために)下段外方運指法を使って、右手小指外法領域は制御キー専用にして、4段目は中指&薬指で打ちやすいところだけを活用して……という感じになりそう。


 中学あたりまでの「単純練習」期間に覚えやすく、歳をとっても忘れにくく、十分に打鍵数が少なく、文語的文章表現と口語的文章表現のどちらにとっても使いやすい入力法……というのはまるで見当がつかないのですが、いつかは取り組んでみたいなぁ……と考えています。
 JIS化陳述書の内容がまるまる通るような奇跡(!)が起これば、私は上記のようなけん盤配列の設計を始めるかもしれません。
 私にとって「かえであすか」が覚えやすく使いやすい理由に「幼少の頃から触ったものではなく、成人になってから触ったものだから」という理由が含まれているのかどうかは検証しようがないのですが、たぶんそういう要素はあるだろうと推測しているので、そのあたりも考えつつ……ということで。


 このあたりは、高齢者の方が「50音規則を活用する入力法なら覚えやすくていい」という反応を示されるらしいところと、どこかでつながっているものがあるのかもしれません。
 それと、辞書で文字をひきつつ手書きの漢字かな交じり文を書くシーンに見立てて考えると、「書きやすい文字・崩されて書かれやすい文字」ほど低コストで入力できるようにすると、(漢字の字形が変わらない限りは)実際の筆記に近い入力法が得られるのかもしれません。
 漢直系については「漢触こーど」のような高コスト入力法しか作ったことがないので、現状ではカンが働かない……のですが。

2008年9月2日23:25:13追記。

 シャドールームさんで採りあげていただいたようですね。
 教えられる人がいない問題については、素直にCAI(コンピュータ支援教育)方面へと逃げてしまう勇気があるかどうか、で決まりそうだと感じています。
 (数年前から事情が変わっていなければ)日本では従来どおりに「教える側が扱える方法だけを教える」事が続きそうですから、変わることはないだろうなぁ……と。


 それと、実用的に使おうとすると「漢直用の交ぜ書き変換」と「かな漢字変換用の文節変換」を統合しないといけないので、そのあたりも肝になりそうですね。
 もっとも、それより以前に「漢直も含めて自由に使える日本語入力環境が、広く普及している状態」にならないと、この話自体が夢物語のままになってしまうという問題が……ここはもう、現状では祈る(!)しかないところです。
 JIS陳述書がらみで、中の方が「きちんと日本語入力法の現状を調査してくれる」ものと願いたいです。

*1:これは間接的にJIS化陳述書へと記述した。