【情熱の真空管アンプ】を読了。

情熱の真空管アンプ

情熱の真空管アンプ

 真空管アンプを自分で設計するための本。
 普通のシングルアンプや、普通のプッシュプルアンプとはちょっと違って、「全段差動プッシュプルアンプ」*1というものを扱う本です。
 同名のWebsiteは、その筋では有名かと。


 今まで「設計本」関連は数冊読んできたけれど、「書かれている作例にとらわれずに、自由に異なるデバイス(真空管・トランスなど)を選んできて再設計してみる」ために必要なことが、もれなく書かれた本というのには、お目にかかったことがない気がしています。
 本書は、「厳密さについては後半にぎりぎり追いやって、全段作動回路の真空管アンプを設計&製作するために必要な概念をなるべく丁寧に書く方向に振る」ことにより、「400ページ程度の内容で必要な事柄を網羅する」という、大仕事が成し遂げられています。


 この本が発行された当初(2004年)には、「どうせ、他の本と似たような感じで、結局俺にはワケワカランままなんだろうなぁ……」と諦めていて入手していなかったのですが、この本はかなりいい線を行っていると思います。というか、当時からこれを入手していれば……と、かなりうなだれてみたりorz。
 唯一残念なのは、「キルヒホッフの第一法則」「電流と電子の流れる方向」に関する説明を端折っているところ……「足し算や引き算の説明に、わざわざ法則を発動しなくてもいいだろ」とか言われそうですが、こういうところで引っかかってしまうと惜しいだけに、ちょっともったいないなぁ……と。


 いずれにせよ、内容的には◎。何度も読み返して「ものにしたい」ところです。

*1:言い方を変えれば「全段平衡プッシュプルアンプ」だろうか。