勝間さん本における「親指シフト」記事について、たぶん足りていないところ。

 さいきん、「親指シフト×勝間和代さんの書籍」の組み合わせに対する言及で、親指シフトに関して「否定的……ではなくて、指摘をしよう」という方向性での言及が、ちらほらと出始めています。
 疑問に思ったことを問うてみると、今のところは誰もネガキャン目的でそれを書いているわけではなくて、「こういう視点が書籍に足りてないかも!」という純粋な指摘が目的……という風になっているようで。


 指摘内容を私なりに書き直してみると、今のところこういう話があるようです。

「リスク・デメリット」に関する話が抜け落ちてる。

 これはたぶん、最近私が書いた「全ての人にとって最適な単一のけん盤配列」なんて存在しない!という話と、ほとんど同根のことだろうなぁ……という気がしています。


 すべての配列にメリットとデメリットがある……ということについては間違いないにせよ、今の勝間さん本はスタイルとして【○○をお勧めするよ!でも○○でもいいよ!】*1という、一切合切デメリットを記述しないという方法をとっていらっしゃる……と。
 この方法は「ネガキャン封じ」だけを目的とするなら必要十分なのですが、そこから一歩進んで「利用者自身にとって合うかどうかの適性確認を、真っ先に行ってもらおう!」という方向でいくには、ちょっと無理があるのかもしれません。


 私自身も以前は「デメリットを書くのは難しいから、後回しにするしかない」と思っていたので、この点については仕方がない気はしていた……のですが、今後については

  • 先にリスク・デメリットを提示して、合うかどうかを確かめてもらう。
  • リスク・デメリットが気にならなければ、メリットが十分享受できるということを説明する。

……というふうに、より「実際の利用シーンに近い状態」の説明が必要になってくるのかもしれません。


 ここは金融本のスタイルと同じく「リターンは管理できないが、リスクは管理できる」という話に沿って、親指シフトの導入に伴うリターンとリスクを説明することが、読者にとってよりよいのではないかな……と感じています。

「速度差・快適さの差」に関する話が共通認識になっていない。


 入力法を変更することにより効率が良くなれば、その分だけ横棒の赤線は上に上がる……のですが、効率が良くなったからといって「今までとことん慣れてきたローマ字入力と比べて、速度差が1.7倍になる」とは限らない……という点についても、指摘がありました。
 導入当初の短期間評価打鍵であれば、打鍵数差と入力速度差がほぼイコールになるので、たぶん勝間さんからみれば「速度差1.7倍というのは真実」なのだと思うのですが、ローマ字入力を10年とかの長期間やってきて「その人なりには十分な運指速度でローマ字入力できる状態」から親指シフトに移行した場合、パターン数の少ないローマ字入力とまったく同じ運指速度でパターン数の多い親指シフト入力をこなせるとは限らない……ので、速度差はもっと縮まって「楽さとして体感することになる」部分も出てくるはずです。
 

 この点については、「速さと楽さ」の関係について記述いただくと同時に、「速度差1.7倍」と感じた時の確認シーン(=4つの配列に対する初期評価打鍵の様子)について記述いただくことが、もっとも有効なのではないかと思われます。

まとめ。

 読み手が「?」と思ったことに対して、どうやってそれを「!」へと変えるか……が勝負なのかもしれず、このあたりは次回作に期待したいところです。

今思うこと。

 親指シフトに対するイメージを悪くしている理由のうち、ほとんどは「(独りよがりと見られがちな)親指シフターさんにより書かれたネガキャン」が原因なのではないのだろうか。
 勝間さんの解説が興味をひく理由には、「ネガキャンと取られがちな表現をきちんと避けている」ところも絡んでいる気がする。
 ネガキャン排除キャンペーンを、実際にやってみる価値があるのかもしれない。

*1:

週刊 ダイヤモンド 2008年 2/9号 [雑誌]

週刊 ダイヤモンド 2008年 2/9号 [雑誌]

の特集記事では「親指シフトだけを勧めてる」内容になっていて、それに対する反発は出始めている様子……これはちょっとまずい気がする。へと誘導しろということなのだろうか……。