古瀬さんは、新JISかなについて「何を」調査したのだろうか。そして、親指シフトは「あるべき姿で再起」するのだろうか。
以前から「なんとなく疑問に思っていたこと」を、とりあえず書き出してみることに。
あえて
- 作者: 古瀬幸広
- 出版社/メーカー: 青葉出版
- 発売日: 1990/02
- メディア: 単行本
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- 周辺のメーカー関係者(?)には聞いてまわった。
- 渡辺さん本人には聞いていない。
- JIS X 6004 の規格票は見た。
- JIS X 6004 の論文は見ていない。
という印象を受けていたようで(必要であれば、本を読み返して、この印象が正しい記憶だったのかどうかを確認するかも)。
仮に古瀬さんが「NICOLAを支持し続ける」という責任を負っていない場合であって、
- JIS X 6004の初期評価用3段けん盤配列は、親指シフト(NICOLA)似だったこと。
- JIS X 6004の評価には、候補を絞るために「手作業の評価打鍵」が行われたこと。
- JIS X 6004の評価には、女子大生16人による「打鍵速度の実時間測定データ」が活用されていたこと。
- JIS X 6004の頻度基礎データには、当時としては膨大な漢字かな下し文が基礎となっていたこと。
を知っていて、かつ
- JIS X 6004を3ヶ月なり4ヶ月なり使い込んだ経験がある。
という場合、あそこまで新JISかなに対して否定的な意見を書くことができただろうか……と、その点がどうにも腑に落ちずにいます。
古瀬さんが新JISかなを批判したのは、
- 新JISかなを実際に使い込んでみて、自分には合わなかったから。
という話であるようには、どうにも思えなかったんですよね……むしろ、
- 「親指シフトを推薦すると決めた文筆家のけじめとして*1」新JISかなが必要以上にダメな配列であるかのように逆宣伝を試みた(→だからこそ、配列の素性については調査せず、当時の空気を伝える方向に振った)。
と解釈するほうが、よほどすっきり理解できるような気がしています。
この書籍に書かれていることが「新JISかなのすべて」だと誤解している親指シフターさんがもしいらっしゃるとすれば、これはとても悲しいことだと思います。
この誤解を解く良い方法があれば望ましいのですが、いつ頃までかかるのか、まだ見えてはこない気がしています。
ただし、このゆがんだ現状がいつまでも継続してしまう……という、最悪の事態は回避されそうな予感がしています。
理由は単純で、「最近親指シフトについて知ることとなる方のうち多くは、勝間さんの書籍経由という方」だから、ということです。
勝間さんのすごいところは、(親指シフトに限ったことではなく)フィードバックを元にして「同じ話を書くにも、より詳しく誤解を生みにくい方法をとるように軌道修正を掛けてから書くようにしている」ところだと思います。
この日記で書くからには親指シフトネタになってしまうのですが……勝間さんの書籍で親指シフトが扱われているものとしては、主に
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効率が10倍アップする新・知的生産術―自分をグーグル化する方法
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三冊持っていらっしゃる方は三冊を並べて読み比べていただきたいのですが、三冊ともに「主張の軸は同じ」で、かつ「誤読を避けるための解説が徐々に充実している」ことが、見て取れるかと思われます*2。
ちなみに、特に
効率が10倍アップする新・知的生産術―自分をグーグル化する方法
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#というか……個人的には、「当初から勝間さんスタイルやぎっちょんさんスタイルでの親指シフトに関する宣伝(客観もどきではなくて、はっきりと主観であることを打ち出したもの)が行われていれば」親指シフトの現状がここまで厳しくはなっていなかったのではないか……と、そういう風にすら思っていたりします。
将来的に、鈴見咲さんによる意見のように「誰もが【選択肢があること】を当たり前だと思う」時代が来ることを願いたい立場からすると、基本的に
- ○○入力法はすべての人にとって、あらゆる意味で最高!
- ××入力法はすべての人にとって、あらゆる意味で最悪!
といった、思考停止系のコメントが出てくるような時代にはさっさと過ぎ去って頂きたい*4わけで(というか、すでに絶滅してくれていると期待したいぐらいです)……このあたり、どうなっていくのかはわかりませんが、よくよく注視して見守っていく必要がありそうだな……と感じています。
いずれにせよ、望むか望まざるかにかかわらず、生産性の向上が「強要される」時代は、もうすぐそこまで来ています。
そういう時代が「来てしまってから、始めて慌てる&でも対策がわからない」というのでは洒落にならないですので、少なくとも解決のための糸口はあるよ〜、という点に気づいていただけるように、いろいろ手を打てるところから打っていく必要はあるな……と思います。
ただし、どうにもこういうところでは「プッシュ方式で宣伝を投げつける」というのはマッチしないんですよね……何というか、「プル方式で紹介文を読んでいただく」方向が向いているのかもしれません。
ある程度はエンターテイメント性があって、かつ誇張や嘘や矛盾がなくて……という説明を行うのは難しいかもしれませんが、徐々にそういう方向へと解説全体がシフトしていく必要があるのかも……。
*1:このカギカッコの中身については、ほぼそのままの意図で実際著書に書かれています。
*2:親指シフト以外の件についても同種の改善がなされていますので、これから勝間さんの本を購入されるのでしたら「まずは一番新しい本を買う」か「全部買って新しいものから読む」のがお勧めです。
*3:中指シフトほかの紹介をするために、(一通りの解説が収容されている)kouyさんの記事へと誘導している……というところで、思わず納得してしまったもので。
*4:配列設計者自身が設計時のストレスなどに起因して「設計時のモチベーションを保つために」それを言うのは、配列設計者のスタンス次第なので、これは人によっては仕方がない部分があるとは思います(不満があるから配列を作る、という動機からして、人によっては完全に抑制するのは無理がある気がするので)。ただし、使い手としてこの手のコメントを出すのはマズいと思うんですよね……そこに生産性のある「議論」がばっちり成立するのであればよいのですが、そうならなかった場合には目も当てられない事態になってしまいますので。