(メモ)かえであすか配列が「中途半端な清濁隣置」を採用した、ごくごく私的な面での理由。

(過去:[かえであすか配列](メモ)親指シフトの「かえであすか」、再考。)
(過去:[あしゅかはいれちゅ][かえであすか配列]「あしゅかはいれちゅ」の名称を「かえであすか配列」に変えます。)
(過去:鍵盤配列は「繰り返し頻度の高低」に注視して設計するべき、という仮説。)


 元々私は「親指シフト(今で言うNICOLA)」をはじめに練習しました。
 そして、「何かが違う」と感じて、飛鳥に移行しました。
 ……と、このあたりはことあるごとに書いてしまったので、いまさら書き直す必要はないのかもしれませんが、ひとまず順序として必要なので、とりあえず。


 NICOLA親指シフト方式を「体験する」ための素材としては、ちょっと難しすぎると感じました。乗り換えまでに何度も何度も挫折しましたから。
 そして、「どうにかしなきゃいけない」と思って、「かえで配列」あたりの制作で七転八倒しました。でも、これはうちづらすぎて使い物になりませんでした。


 飛鳥カナ配列を使いはじめて、もう3年半が経過しました。
 NICOLAなどを経由して飛鳥に行く(私はそうだった)ならまだしも、乗り換え経験すらない人のために「いきなり飛鳥を使って、果たして一発で移行できるだろうか」という不安がよぎりました。
 世の中には私のように「暗記物が全くダメ」という人間もいるわけで、そういう人のために「練習して何とかしろ!」というのが、本当に唯一の選択肢であっていいのだろうかと悩み続けていました。


 私はできれば飛鳥カナ配列の「世界」を崩したくはありませんでしたし、それをやるだけの能力もありません。
 でも、3年半前の当時に「飛鳥っぽく、かつ覚えやすそうな配列」が仮に知られていたならば、はじめにそれを試して、親指シフト方式だけ(これはNICOLAで体験できた)ではなく、連続シフト方式(これは親指シフト方式界隈では飛鳥系ぐらいでしか使われていない)についても体験できていたはずで……そういうものが当時あったならば、飛鳥への移行はもっとすんなりといったかもしれません。
 思い立ったら突き進むだけ……という、私の悪い癖は今回もそのまま出てしまい、けっきょくそれは「かえであすか配列」という形の結論へと達しました。


 「かえであすか配列」は、決して普遍的に常用されることを前提に制作した配列ではありません。
 もちろん、以前「かえで配列」で大失敗した経験があるので、それをさけるために「真っ当に評価打鍵し続けることができる」配列であることは目指しました。
 自分で作った配列なのに「自分で使用したくはない」なんて愛着もわかないような状態のものを作ってしまっては、評価が全く進まない……という点は、実際に使用することのない配列を多数公開してきた度に、毎回痛感していましたし。


 私には、一般的な人間が持っているであろう「長期安定的な記憶力」というものを、一般的な人ほど持ち合わせていないようです。つい最近も書いたばかりな話ではありますが……。

 これは、結局「普通に飛鳥で打っていて、時として半濁音や低頻度濁音の位置を度忘れしてしまう」ことがあったことに起因していたり(たいていは「眠いとき」や「疲れているとき」などに限定して発生するタイプのもの)。
(from http://d.hatena.ne.jp/maple_magician/20071101/1193889883 )

 そういう私個人にとっては【低頻度文字と高頻度文字をひも付けしてしまう】という選択肢はどうしても必要でした。
 飛鳥をやってきて、「清音と濁音は関連づけるべき」とか「清音と半濁音は関連づけるべき」というふうな、文字種による連想が【かなの全域にわたって必要……というわけではない】という確信は得ましたが、一方で

  • 練習初期段階
  • 記憶力に不安がある状態

の人に対して、常に【標準の飛鳥カナ配列よりも取っつきやすい選択肢がない】という状況は、正直言って不安でした。


 実際のところ、「かえであすか配列」が無くても済むなら、その方がよほどシンプルでよいはずなんですよね……。
 ただ、人間の能力や気分が画一的ではない以上は、その手のぶれにも対応できる「一時的な利用を目的とした、はじめのステップ」を提供する価値は、もしかするとあるのではないかな……と考えていたり。


 もっとも、極論を言えば「自分にとって必要だから作った。」であり、かつ「かつての自分にとって必要そうなものを作った。」なのかもしれません。
 配列は制作者が評価するものではない*1だけに、あとは時代の流れにすべてを任せてみたいと思います。

余談。

 個人的には、かえであすかが一人歩きすることはないと思っています。
 親指シフトの「かえであすか」まとめWiki (仮)には、

かえであすかを利用したうえで、忘れにくさよりも使いやすさを求める方には、「飛鳥カナ配列」への移行を推奨します。
(from http://www12.atwiki.jp/kaede-asuka-layout/pages/25.html )

という記述を書いていますし、使っていればそこに自然と気づかれるだろう……と期待しています。
 #もっとも、万が一にも「かえであすか」を常用する方が実際に現れたりすると、さすがに焦るかもしれません*2……それはない方に期待したいところです。

ちなみに。

 以前に書いた話が微妙だったので……。

 「かえであすか配列」には、「生産革新」「事務革新」にとって必要と思われるエッセンスは作りこんでみた「つもり」でいます。
(from http://d.hatena.ne.jp/maple_magician/20071025/1193243367 )

 ここは、あくまでも「そういうつもりで設計した」という意識の話です。
 実際にそういう方面で使い物になるかどうか……というのは、正直言ってあまりイメージがわいていないので、よくわからないままです。
 かえであすかwikiを編集していく時に、一応このあたりにフォーカスして説明etcを書こうか……と思ったのですが、あまりwikiにしっくり来そうなネタではないっぽいので、ちょっと微妙なんですよね……。

*1:四半世紀前、配列屋の大先輩諸氏は「この点を読み誤った」というただ一点の過ちにより、すべての努力を無に帰してしまった……という事実を、現在配列屋をやっている人は、決して忘れてはならないと思うのです。

*2:自身で評価打鍵をした手前、まさか人様に「使用を中止してくれ」なんて言えませんし。しかもそんな宣言をする権利は私にはないわけで。