正直、驚きを隠せないです……orz。

 シャドールームさんで、とても気になる記事を見つけました。
 傾けて入力する「ノータッチキーボード」発売


 紹介先の記事を見たときには「俺に何かあったら、ぜひこれを手配してもらおう!」と思った……のですが、配列を見て驚いてしまいました。
 肝心なものが足りていないのです。


 「JIS鍵盤をナラコード似の50音順配列に並べ替えなおして、英字配列デザインを破壊している」ところについては、もう(そういうコンセプトなのだろうと思って)諦めているので、それは仕方がないと思います。
 スチックネー氏や山下芳太郎氏は(Qwertyとカナ配列との間の整合性を崩されたことについて)泣いていらっしゃるかもしれませんが、現行のJISカナ配列が「かつての準50音配列だったタイプライタ用けん盤配列」から少々崩れてしまっているところからすると、これはある意味仕方がないのかもしれません。
 そして、親指シフトキーボードやテクノツール製品のような「シフトズレの危険を冒してでも、英字配列はQwertyを採用する」方法や、あるいはKNCプロデュース品のような「ローマ字入力を経由した50音配列キーボード*1」の方法については、おそらくは「ユーザ補助についてはOSの機能をそのまま使ってもらいたい*2」という理由で却下したのだろうな……と、そう推測しています。
 このあたりは「コンセプトで大枠が決まってしまう」問題なので、さすがにそれに対して口を出しても仕方がないか……と*3
 #個人的には、入力効率がとても気になってしまうので「ローマ字経由で(小書き文字・濁音・半濁音を含めた)90カナを直接投入する配列」を推してみたいところですが、これもキーコード変換が必要になってしまう点では結局同じことですし。


 ……ところがそれ以前の問題として、このキーボードには「JISかな入力モード」に欠けてはならない「あのキー」がないんですよ。

 あまりにもびっくりして、何十回も配列と鍵盤を照合してしまいました……が、どこを探してもこのキーがありません。
 配列の構想を練っていたり、評価打鍵が不足していたり、配列表を作り間違えていたり……という場合であれば、当然文字がおちてしまう場合はあると思います(というか、私も実際にやらかしたことがありますし)。
 ところが、このキーボードは「2007年10月31日発売予定」なんです。
 「BackSpace」が左端にあることからすると、設計時点での配列については相当検討されているはずなんですが、もしや評価打鍵は行われていないのではないか……と、さすがに不安になっていたりします。


 ……いや、評価打鍵云々は無視するとしても、「JISかな入力モードで使う」鍵盤に「半濁点を打つキーがない」というのでは、「ぱぴぷぺぽ」に絡む連接はそう多くはないとはいえ、幾らなんでも洒落になりません。困るのはユーザですから。
 掲載されている画像が古いだけで、実機にはきちんと「半濁点キー」があればよいのですが……さすがに不安で仕方がないので、メーカーさんに聞いてみることにします*4


 とはいえ、この手のユーザビリティ関連製品は「いざというときに、自分自身がお世話になる可能性がある」はずで、個人的にはとても注目しています。
 実際、視線入力&1ボタン用のけん盤配列を検討していたりもします。
 その時々にある能力を使って、可能な限り快適かつ高速な意思伝達を行いたい……という需要は、今後ますます増えるのではないかと思っています。
 今後も、ハードウェア&ソフトウェアの両面から、こういったユーザビリティに関する様々な提案や実用化が為されることを期待したいです。

*1:指に障害がない方がこれを使い、かつ普通のキーボードでロマかな入力をするユーザが同じPCを共用する……という環境においては、この方式が一番トラブルが少ないだろうと思っています(というか、それがロマかな経由方式を提案した主たる理由です)。今回の場合、HIDのうち人間側に関する前提条件が違いすぎるので、このキーボードの考え方をそのまま流用するのは無理がある……というわけで。

*2:一本指入力よりもさらに厳しい条件を強いられる「視線入力方式」およびその近似方式にとって、「OSのユーザ補助に全てを丸投げする」というのは、一種の賭けですらあります。しかし、この分野においては「ソフトウェアに丸投げすれば、ユーザ補助が進化したときにその恩恵を丸ごと受けることができる」という利点にもなりえます。ユーザビリティが軽視されていた過去とは違い、多くのOSがユーザビリティ向上のための仕掛けをアップデートし続けている現時点では、この方針は結構「アリ」なのではないかと期待しています。

*3:それ以前に「現行のけん盤配列の枠にとらわれずに、自由に配列を定義しシステムで利用できるようにする」ための仕掛けが、今のPCには備わっていないというところが根本の原因なのだという事情はあるのだけれど。ホント、この点はどうにかしてほしいです……。

*4:2008年6月2日11:58:57追記:この記事内に書くのを忘れていました(コメントにのみ記述済み)……が、この問題は無事に「出荷前に解決」されました。