(TitleOnly)かな系けん盤配列における「清濁同置」は、「ロマかな経由ユーザにとって」入力を手助けするガイドたり得るのだろうか……。

(未来:日本規格協会が「標準化と品質管理全国大会2007」というものをやる……らしい。)
(過去:「キー入力入れ替えソフト」のJIS規格化を目指して。)
(過去:とりあえず親指シフト「エミュレータ」と親指シフト「ソフトウエアロジック」だけをJIS化してみよう!)


 (注:たびたび書いているような気がする話なので、とりあえず気にしないでください……未だに私の中では整理できていないもので)
 (注:この記事(?)は、いまだに飛鳥21c290なままの端末で書いています……そろそろ21c356とのクロスレビューをしてみたいので)


 昔々、私は「ローマ字で書いたけん盤シート」から、NICOLAの練習を始めました。
 飛鳥の練習も、途中までは「ローマ字で書いたけん盤シート」を使っていました。
 理由は単純で、ロマかなに依存しすぎていて「ローマ字じゃないと想起できないから」だったんですよね……。


 ローマ字入力は、見方を変えれば「濁音・半濁音プレフィクスシフト」的な部分もある気がするのですが、その一方で「清音と濁音と半濁音の間には、子音の位置関係が全くそろっていない」という部分もある訳です。
 ……「は・ば・ぱ」を打つときには「Ha(C6C1)・Ba(B5C1)・Pa(D10C1)」という感じになっていて、(行段系らしく)母音の「あ」段であることを示すC1は共通していても、子音の「H(C6)・B(B5)・P(D10)」には、ひとまず「清濁の位置が近いetc」のような関連性がないわけで。
 それでも、「ローマ字」という知識があれば打ち始めることができるし、慣れてくれば他の入力方途と同様に、普通にタッチタイプできるようになるわけです。


 それともうひとつ。
 たとえばNICOLAにおいては「小指シフトを使わない」方法と、小指シフトを「半濁音入力のために使う」方法の、2種類を取ることができます。
 後者であれば「清濁同置」の考え方を延長していて整合性があるのですが、一方では「あまり使わないとはいえ、結局は(設計時点では)嫌っているはずの小指シフトを使ってしまう」というもどかしさがでてきます。
 前者であれば、「小指シフトを使わない」というメリットを享受できるはず*1なのですが、その代わりに「使う機会がべらぼうに少ない(≒覚えるのがとても難しい)半濁音文字の位置を覚えないといけない」というデメリットを背負うことになります。
 そして、「小書き文字&記号類」については、どちらにせよ「清音かなとは無関係な位置に配置しなければならない」という事になるわけです。


 ……たとえば、学習コストで見ると。
 普通は以下のようなコストで見ることができるとされているようです。

入力法 覚えるべき位置(L=左小指シフト、R=右小指シフト、左=左親指、右=右親指) 清音位置とひも付けされたかな
JIS X 6002 あいうえおかきくけこさしすせそたちつてとなにぬねのはひふへほまみむめもやゆよらりるれろわをん、。゛゜LR ぁぃぅぇぉっゃゅょ
NICOLA+小指シフト あいうえおぁぃぅぇぉかきくけこさしすせそたちつてとなにぬねのはひふへほまみむめもやゃゆゅよょらりるれろわをん、。LR左右 がぎぐげござじずぜぞだぢづでどばぱびぴぶぷべぺぼぽ
NICOLA-小指シフト(親指シフトのみ) あいうえおぁぃぅぇぉかきくけこさしすせそたちつてとなにぬねのはぱひぴふぷへぺほぽまみむめもやゃゆゅよょらりるれろわをん、。左右 がぎぐげござじずぜぞだぢづでどばびぶべぼ
清濁異置全般 あぁいぃうぅえぇおぉかがきぎくぐけげこごさざしじすずせぜそぞただちぢつづてでとどなにぬねのはばぱひびぴふぶぷへべぺほぼぽまみむめもやゃゆゅよょらりるれろわをん、。左右 (配列によって異なるが、通常は無視)


 ところが、「ローマ字で書いたけん盤シート」をつかうと、あくまでも「かな」ではなくて「音」を基準とした想起しかできない(「が」を「か」の「濁点付き」などとして処理できない)ので、コスト表の状態がだいぶ変わってきます。

入力法 覚えるべき位置(L=左小指シフト、R=右小指シフト、左=左親指、右=右親指) 清音位置とひも付けされたかな
JIS X 6002 A Xa I Xi U Xu E Xe O Xo Ka Ga Ki Gi Ku Gu Ke Ge Ko Go Sa Za Si Zi Su Zu Se Ze So Zo Ta Da Ti Di Tu Du Xtu Te De To Do Na Ni Nu Ne No Ha Ba Pa Hi Bi Pi Hu Bu Pu He Be Pe Ho Bo Po Ma Mi Mu Me Mo Ya Xya Yu Xyu Yo Xyo Ra Ri Ru Re Ro Wa Wo Nn , . ゛ ゜ LR 存在不可
NICOLA+小指シフト A Xa I Xi U Xu E Xe O Xo Ka Ga Ki Gi Ku Gu Ke Ge Ko Go Sa Za Si Zi Su Zu Se Ze So Zo Ta Da Ti Di Tu Du Xtu Te De To Do Na Ni Nu Ne No Ha Ba Pa Hi Bi Pi Hu Bu Pu He Be Pe Ho Bo Po Ma Mi Mu Me Mo Ya Xya Yu Xyu Yo Xyo Ra Ri Ru Re Ro Wa Wo Nn , . 左 右 L R 存在不可
NICOLA-小指シフト(親指シフトのみ) A Xa I Xi U Xu E Xe O Xo Ka Ga Ki Gi Ku Gu Ke Ge Ko Go Sa Za Si Zi Su Zu Se Ze So Zo Ta Da Ti Di Tu Du Xtu Te De To Do Na Ni Nu Ne No Ha Ba Pa Hi Bi Pi Hu Bu Pu He Be Pe Ho Bo Po Ma Mi Mu Me Mo Ya Xya Yu Xyu Yo Xyo Ra Ri Ru Re Ro Wa Wo Nn , . 左 右 存在不可
清濁異置全般 A Xa I Xi U Xu E Xe O Xo Ka Ga Ki Gi Ku Gu Ke Ge Ko Go Sa Za Si Zi Su Zu Se Ze So Zo Ta Da Ti Di Tu Du Xtu Te De To Do Na Ni Nu Ne No Ha Ba Pa Hi Bi Pi Hu Bu Pu He Be Pe Ho Bo Po Ma Mi Mu Me Mo Ya Xya Yu Xyu Yo Xyo Ra Ri Ru Re Ro Wa Wo Nn , . 左 右 存在不可

 ……で、下の表は「ぱっと見詐欺くさい」のですが、よく考えてもみれば「快適に打てるようになるためには、ここに提示した綴りに対応するカナを無連想で打てないと、まるで意味がない」ことは確実なわけです。
 「が」という文字を打つために、ロマかなで「G+A」とか考えないのと同じように、JISかなで「か+゛」とか考えないのと同じように、NICOLAで「右親指+か」とか考えないのと同じように……とすると、習熟のある地点を境にして、「習熟を助けるために」清濁同置である「必要性」はなくなってしまうことになるはずです。
 #ただし、清濁連糸打鍵(たとえば【かがやく】の【かが】とか)の「打ちやすさ」については、「習熟の程度」と相関性があるわけではない&人によって「感じ方が違う」ので、ここでは扱いません(というか、永遠に統一見解は出ないと思う)。


 こうしてみて始めて、「(ローマ字で書いたけん盤シートを使った場合に)なぜにNICOLAと飛鳥で学習進度に差を感じることができなかったのか」というところの謎が解けたような気が……。
 結局、「清音と濁音の関連性」はローマ字けん盤シートでは表現できない。だから、ローマ字けん盤シートを使う限り、清濁同置と清濁位置では学習進度に差を生み出せない……と、そういうことなのかも。
 清濁同置配列の学習用コンテンツは、清音と濁音の関連性をわざとらしく強調するぐらいにリンクさせておかないと、その効果を最大限には発揮できないのかも。


 ……で、「清濁同置」のメリット・デメリットは何なのか。
 単純に考えると、こういう点が列記できそうです。

  • ユーザにとってのメリット。
    • 練習用のテキストが間違っていなければ、習得を2段階(濁音以外→濁音の順序)に分離できる。
    • 濁音については忘れてしまってもすぐに推測できる。
  • 制作者にとってのメリット。
    • 探索するべき枝の範囲を、ある程度狭くすることができる。
      • 専業ではない配列制作者にとっての検討限度なのかもしれない。
        • 清濁分離配列の検討が困難であることは、TRON論文あたりから語られている話。
        • GeneAnalysis手法や総当り手法などの計算手法で限界突破する手もあるけど、これはまた別の問題が山積していたり。
        • けっきょく、Rayさんはモロに「(専業に引きずり込まれてしまうことが確実な)あけてはいけない扉」をあけてしまったのだと思う。
    • (ユーザ側メリットと同一の理由により)評価打鍵の初期立ち上げを素早く行うことができる。
  • ユーザにとってのデメリット。
    • 打鍵範囲を狭く保つことが難しい(それに合うキーボードを推奨するか、あるいは親指2シフト方式以外のシフト方法を採用する必要がある)。
  • 制作者にとってのメリット。
    • (ユーザ側デメリットと同一の理由により)チューニングの自由度に制限がある。


 ……で、ようやく本題に戻す、と。

 かな系けん盤配列における「清濁同置」は、「ロマかな経由ユーザにとって」入力を手助けするガイドたり得るのだろうか……

 この部分、ロマかなから飛鳥へと移ってきた自分の経験(=主観)のみで語ってしまえば、ある程度は「No」だといえる部分があるように思います。
 ロマかなは「子音同置」であり、かつ「母音同置」であるために覚えやすい部分があるのですが、いっぽうで「清濁同置」は採用していません。
 もっとも、飛鳥のように「清濁隣置」に近い配置をしていても「完全な隣置ではない*2から、配列が入力ガイドの役目を果たしてはくれない」配列はおぼえにくくなりがち(そこを否定する理由は全く存在しない)なので、それよりは、「清濁同置」という異なる方向での入力ガイドがあれば、それは間違いなく「ないよりはマシ」なのだと思います。
 ただし、それが「ロマかなユーザにとって」有効か、となると……もともとロマかなを延々とやってきた限りでは、「子音同置・母音同置」から「清濁同置」への切り替えには、十分な困難が伴うのではないかと感じています。


 ……かといって、Rayさんのように「膨大な時間と言語感覚」を投入して清濁異置の配列を制作するのは、非専業でやるには無理がありすぎます。
 あるいは新JISか?配列のような「中途半端な清濁異置」では、清濁異置のメリットを生かすことができない部分が多々出てきてしまいますし。
 うーん……(自分を含む)ロマかなユーザにとって移行しやすく、かつ概念が大きく衝突しないかな入力って……いったいどんな入力法になるのか……ぱっと考えたぐらいじゃ答えが出ないですねorz。
 #「ナラコード」「M式」「チョイかな入力」「秋月カナ配列」「かえで携帯配列」のように、「母音同置」のかわりに「母音隣置」を使うという方法もあるわけですが……「秋月カナ配列」を延々といじっても満足できなかった身としては、この方法論では最適解にはたどり着けない気も。


 うーん……今回も(?)結局答えは見つからないまま。
 もっとも、個人的な感覚としては【とりあえず親指シフト「エミュレータ」と親指シフト「ソフトウエアロジック」だけをJIS化してみよう!】よりも【「キー入力入れ替えソフト」のJIS規格化を目指して。】のほうが理想に近く、それは結局【単一配列が国力になる*3とは思っていない】ことにもつながるわけで。
 「元々答えがない」のだから、「答えが見つかるはずなどない」のかもしれないですね……。

*1:この無駄な空き領域を、無駄なまま放置するか、あるいは何か(たとえば簡易英字入力とか)に転用するか……は、ユーザの自由なので、ここでは取り上げる必要はなさそうです。

*2:飛鳥21c290から21c356への変更で、この点に関する錯誤感が、感覚的には減っているような気がするのは不思議なところ。

*3:PS3やTA-DAシリーズつながりで、かないまるさんの http://homepage3.nifty.com/kanaimaru/oya/ouen.htm を読んだばかりなので、「国力」という言葉を使ってみたくなったのですよ^^;。