効率的な「ケータイ入力法」の話。
(言及:Excite Bit コネタ「あいうえおかきくけこ……」一番使われているひらがなはどれ?)
記事中に書かれていた入力法、もしかしてAsk配列のやり方なのかもしれないですね……。
実際のところは、この「一打鍵で入力できる文字を増やす」方法が有効なのは、キーの数がだいたい20個を超える(=パソコン用のキーボードなど)場合に限られるようです。
この一例は……「新JISかな」でしょうか。
当時は普及しそびれてしまいましたが、当時の時点で仮に「よく使われるひらがな」に関する関心が高ければ、かなり高い確率で普及したであろうと思われます。
新JISかなは「100万文字以上のひらがな資料を用いて、極力少ない操作で入力できるように」設計されました。
同等の資料を投入して製作された入力法は、ほかにも「TRONかな配列」のような例があります。
一方で、前出のとおり「ケータイの12キーで入力する」場合には、「一打鍵で入力できる文字を増やす」方向をとったとしても、極端な能率向上は望めないという都合があります。
ケータイ入力法について、現時点で解っているものを並べてみることにします。
#個人的な理由により、「机置き一本指入力&片手持ち一本指入力の両シーンで使える入力法」のみを、ケータイ用の入力法とみなしています。
入力法 | ボタンの数 | 操作法 | かな230文字あたりの打鍵数 | コメント |
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秋月かな配列(W-ZERO3などフルキーボード用) | 26個 | 片手または両手の親指 | 約310回 | ひらがな入力法の一つ。W-ZERO3付属のフルキーボードが持つ、本来の効率を生かそうとした場合の例。 |
ローマ字入力(W-ZERO3などフルキーボード用) | 29個 | 片手または両手の親指 | 400回 | ローマ字入力法の一つ。よく知られた入力法。 |
カシス配列(かえで携帯配列(改)の改造版) | 15個 | 片手親指 | 401回 | ひらがな入力法の一つ。ローマ字入力と同等効率を、約半数のキーで実現できるという例。FOMA D800iDSなどの15キー端末専用。 |
Kodame携帯配列(Kodama携帯配列の改造版) | 12個 | 片手親指 | 421回 | ローマ字入力法の一つ。濁点(゛)入力が全体の1割を占めていることに着目して対処済み。 |
かえで携帯配列(改)(かえで携帯配列の改造版) | 12個 | 片手親指 | 425回 | ひらがな入力法の一つ。濁点(゛)入力が全体の1割を占めていることに着目して対処済み。 |
新型ポケベル方式*1 | 12個 | 片手親指 | 450回 | ひらがな入力法の一つ。濁点(゛)入力が全体の1割を占めていることに着目して対処済み。 |
Ask配列 | 12個 | 片手親指 | 453.5回 | ひらがな入力法の一つ。濁点(゛)入力が全体の1割を占めていることに着目して対処済み。入力法を「指が覚える」までに掛かるコストが大きい。 |
Kodama携帯配列 | 12個 | 片手親指 | 458.7回 | ローマ字入力法の一つ。濁点(゛)入力は別途行うため、その分1割ほど打鍵数が多くなっている。 |
かえで携帯配列( W-ZERO3[es]で利用可能) | 10個 | 片手親指 | 460回 | ひらがな入力法の一つ、12キー方式よりも少ない10キー方式ではほぼ限界効率。50音表を基にした「2回押せば1かな」の固定コスト方式。濁点(゛)入力が全体の1割を占めていることに着目して対処済み。 |
iuTAP配列 | 12個 | 片手親指 | 462.7回 | ローマ字入力法の一つ。濁点(゛)入力は別途行うため、その分1割ほど打鍵数が多くなっている。 |
ポケベル入力 | 12個 | 片手親指 | 470〜480回? | ひらがな入力法の一つ。濁点(゛)入力は別途行うため、その分1割ほど打鍵数が多くなっている。 |
かなめくり配列 | 12個 | 片手親指 | 488回 | ひらがな入力法の一つ。ケータイで普及している入力法(ただし反則技を使いまくって、実際よりもかなり高効率な値になっています)。濁点(゛)入力は別途行うため、その分1割ほど打鍵数が多くなっている。 |
この中で、私が関わったのは
- 秋月かな配列(W-ZERO3などフルキーボード用)
- カシス配列(かえで携帯配列(改)の改造版)
- かえで携帯配列(改)(かえで携帯配列の改造版)
- Ask配列
- かえで携帯配列(W-ZERO3[es]で利用可能)
なのですが、実用で不満なく使えているのは
だけなんですよね……。
「数値上の入力効率が良い」ことそのものはとても重要なのですが、それと同じぐらいに「指を動かす範囲が十分に狭い(=反復性疲労障害を起こしにくい)」ことも重要らしく、結局は「効率はまぁまぁ・運指範囲は十分狭い」という方法をとるほうが、長文を打つには向いているのかも……と、私はそう感じています。
……そういえば、記事中でひとつ気になったことが。
「濁点・半濁点は無視」「小書き文字は大書き文字として集計」というルールを採用していらした……というのは、もしかして、記者さんがお使いの入力法は「JISかな入力(JIS X6002)」だったりするのでしょうか。
いや、ローマ字入力・親指シフトであれば「濁点・半濁点を無視するほうが入力しづらい」はずですし、「小書き文字を大書き文字として入力するのもつらい」のではないかな……と、そう思いましたので。
ちなみに、「濁点」を一つの文字として集計すると、ひらがなで一位になっている【い】よりも多い回数だけ「゛」が使われているはずです……たぶん、「い」に比べて2倍ぐらいかと。
一応は私も日本語入力ネタに関わっている身のはずが、今回の記事にあるような「雑学としてきちんと興味をひく」書き方というのは、どうにも無理そうで……orz。
*1:2007年7月29日23:10:02に追記。http://d.hatena.ne.jp/maple_magician/20070701/1183292553を参照のこと。