読書完了→大野耐一の現場経営
- 作者: 大野耐一
- 出版社/メーカー: 日本能率協会マネジメントセンター
- 発売日: 2001/05
- メディア: 単行本
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基本的に、内容は【トヨタ生産方式――脱規模の経営をめざして】とほぼ被っているので、特に言及する必要はないかな……同書を補完するものとして読むとおもしろいかも。発案者ならではの視点が満載。
節内の細々としたところについては「それは違うでしょう〜」と言いたくなる部分もちらほらとあるものの、全体の傾向としてはしっかり筋が通っていると思う。
個人的には、この手の本を読む前に書いた【現場発のボトムアップ方式【21世紀版の作業改善】をやるなら、手始めに「飛鳥カナ配列」を試してみよう!と言ってみるテスト。】の言及方法が、それほど間違ってはいなかった点を確認できてよかった。
……で、一番ピンと来たのはここ。
- 「監督者」のいない事務現場(pp.154-158)
今であれば「作業時間は抽象化して表現して、実際時間と動作単位作業時間とを分けて考える」ぐらいは当たり前っぽくなっている(そうしないと、「慣れていないから遅い」のか「手順が悪いから遅い」のかを区別できない)はずですが、これと同根の考え方が「昭和57年(西暦1982年)発行の本にきちんと記載されていた」というのは興味深いところです。
親指シフト・新JISカナ配列・TRONかな配列など、日本語を入力するための方法論が大企業などによって研究されてきた最盛期とちょうど重なっているようで、この時代に生きた人々がどういう共通した理想を持って「作業手順改善」に取り組もうとしていたのか、というところには、とても興味があります。
何しろ私、1982年当時はまだ3歳児でしたから^^;、当時の風を感じる機会などもちろんなかったわけで……こういうときには「もっと早く生まれていれば……」と悔しく思ったりもしますね。
さて、日本語入力法と見事に被る部分があるので、ここを少し引用してみようと思います。
一つ目は、「人間の作業速度に依存せず、作業手順に着目するべき」ということ。
今、豊田紡績でやかましく言っておんるだけど、結局作業者の手の早さとか、そんなものに溺れたら、もう絶対にダメだぞ、うちの者はよう働いておるでしょうとかいうが、あれは働いておるんじゃない、手が早いだけじゃないか、と言っておる。その手早さにおんぶしちゃうと、もう自動化が遅れていく。変なことやるより女の子に早くやらせたほうが能率がいいとか、どうもあの女の子は手が遅いとか、そういうふうに何か動作を監督しようとして、仕事を監督しようという目がない。
( from 大野耐一の現場経営 pp.155-156 )
作業「速度」というのは、訓練すれば誰でもそれなりにのびますし、究極的には「作業者の資質」によって速度規制がかかる……という代物です。
人間、どれだけ訓練したところで「一日の労働時間を通してぶっ続けで9秒/100mの100m/9秒の速度で走る」ことなどできませんし、この方向ではいつか必ず限界が来ます。
そのためには、人間が持つ動作や認識といった癖の限界をきちんと把握して、人間がやるべき事と機械がやるべき事の区分をよく見直して、より「人間が人間として働く価値」を高めていくことが必要なのかもしれません。
改善を行うために必要な視点はいろいろあるものの、一番手っ取り早いのは「なるべくコンパクトな要素に分割して、可視化・認知しやすい状態を作る」ことなのかもしれません……そういう意味では、日本語入力法を「いじってみる」過程で得ることができる見知というのは、とても幅広く奥深いのかも、と。
もうひとつは、「一つの手順を押しつけちゃダメだ」ということ。
この「決められた」というのが、若い人にはおかしく響くらしいんだな。上から決められたと思うんだね。自分が決めればいいじゃないか、と。これが改善なんだね。だから、まず決められたことをやってみる。決められたことをやってみんことには、それが良いのか悪いのかどうか分からん。そして、決められたことが守れんかったら、守れんのはどっかがまずいんだ、と考えるのがよい。
( from 大野耐一の現場経営 pp.213-214 )
……うーん、普通に「若い人に限った話じゃない」と思いますけどね。
この本質は「個々の事情を考慮せずに押しつけられてしまう」ことにあるはずですから。
パソコン講座などなどで「今までJISX6002かな入力で不自由なくやってきた人に対して、とにかくJISX4063ローマ字入力を勧めてしまう」例は今も変わらず続いているらしい事からしても、ここは年齢とは全く関係のないことなのではないかな、と思います。
いい加減、こういう風習は消え去ってほしいなぁ……と思うものの、パソコンのそれに関しては「ソフトウェアという設備投資(?)が必要になってしまい、人間側だけではどうにもならん部分がある」というのは惜しいですね……とりあえずは理想エミュレータを夢見つつ、今あるソフトウェアで何とかする方法を提案していくのが現実的なのかも。
- 作者: 大野耐一
- 出版社/メーカー: ダイヤモンド社
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内容的にはトップダウンでなければできないこともいろいろとあるのですが、逆にボトムアップでやる方がうまくいきそうなこともいろいろと書かれていますので、「俺は偉くないから関係ないよ〜」とかいう話にはならない気がします。