TRONプロジェクトの坂村健教授は「何か」に気づいたのかもしれない。

(過去:μTRONキーボード関連メモ。)
(過去:TRONモードキーボードが登場!?)
(言及:Re: トロンショーで、新型TRONキーボードが発表される(@秋沙のココログ既知ログ))

 もしかすると……ですけど、「何か」の部分は【「乗り換える」事の重要性ではなくて「選ぶ、そして納得して使う」事の重要性について伝えなければならない】なのかも……と。
 もちろん、私の勝手な想像ですけれども。
 こう思うに至った理由は3つあります。


 一つ目は【μTRONキーボード】の全体形状。
 当初、坂村教授は「ハードウェアの構造/キーボードの形状」についても厳格に定義していた……という記憶があります。
 cdrcarcoさんの「あなたのホームポジションは間違っていた」には、こういう記録が示されています。

TRON

なお、TRONキーボードは「もう1回作ろうと思っている」とのことで、(配列図)
 → http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2003/0725/tron.htm

TRONキーボードの開発時には、手の動く範囲が検証された
 → http://www.sol.dti.ne.jp/~cdrcarco/news98-10fig1.jpg
 → http://www.sol.dti.ne.jp/~cdrcarco/micro-TRON1.JPG

坂村健教授からは、TRONキーボードではないと言われた
猫式トロンキーボード TYPE-01(プロトタイプ)
 → http://homepage2.nifty.com/b-soft/hardware/keyboard/keyboard.html

個人でTRONキーボードを作った男 ZeRO-ONE -
 → http://www.sol.dti.ne.jp/~cdrcarco/TRON-MISAKI-key1.jpg

(from http://www.sol.dti.ne.jp/~cdrcarco/ )
(※ページ内を【猫式トロンキーボード】でテキスト検索してください。)

 ここにはURLを掲げたのみなので解りづらいと思います……cdrcarcoさんのページで、写真を含めた状態をご覧いただくのがお勧めです。
 向こうで【μTRONキーボード】と【猫式トロンキーボード】を見比べるだけで、すぐに「ニヤリ」としてしまう方もいるのではないかな……と思います。
 「TRONキーボードではない」といわれてしまった【猫式トロンキーボード】のスタイルを元に、2分割することで「イマドキのエルゴキーボード」を目指した……と説明すると、丁度【μTRONキーボード】の説明としてぴたりと来る……というのは、とても興味深い事象だと思います。


 二つ目は【μTRONキーボード】の「シフトキー」形状。
 TRONキーボードは本来「左右のシフトキーでかなを区別する」はずだとばかり思っていたのですが、μTRONキーボードでとても大きく配置されているキーは「無変換」と「変換」なのです。
 この2つのキーは、キープリントに「シフト」と書かれているわけではないのですが、この2つのキーが大きく配置されていることからすると、(普通に区別できる左Shiftと右Shiftを敢えて使わず)かなのシフトには「無変換」と「変換」を使うのだろうなぁ……と想像できます。
 親指シフトウォッチでぎっちょんさんが書いていらしたこのコメント、色々な意味で「つながっている」のかもしれないですね。

これは来年第一四半期には発売が予定されているTRONキーボードについてです。TRONキーボードも基本的に親指シフトの原理を使っている(その他の工夫もされていますが)ので、やっぱり考えることはみんな同じだなという気持ちです。
(from http://thumb-shift.txt-nifty.com/contents/2006/12/re_tron_1329.html )

 TRON配列を親指シフトエミュレータで実装する方がいて、それをもとに「ぱぴぷぺぽ」問題*1対策をする方がいて、一方でLinux方面では「SCIMAnthyが親指シフトエミュレーション経由で」TRONかな配列に対応して……と、親指位置キーによるシフトを行う同時打鍵処理用ソフトウェア(というかインフラ)自体が「だいたい無変換・スペース・変換のうちどれか2つをシフトキーとして使う」あたりに収束しています。
 それが元で、今回のμTRONキーボードも「既存のインフラに合わせる形で設計された」とすると、これも興味深いところがあるように思います。


 そして最後は、坂村教授の発言メモから。

  1. (親指・人差し指を机からより離すリアクションをして)手はハの字に置くと楽な姿勢になるので、キーボードもそれに合わせて傾斜をつけることが出来るようにした。
  2. ひらがな入力」に力を入れていきたい。ひらがな入力に慣れるほうがスピードアップできる。よく使う文字を中央に集めた。配列について色々工夫している。
  3. 「従業員の健康をいかに保つか」が、企業のテーマ。

(from http://d.hatena.ne.jp/maple_magician/20061211/1165765860 / http://www.tv-tokyo.co.jp/wbs/2006/12/08/movie/mayu.ram )

 ここで「TRON配列」を指していない(TRONかな配列とか、Dvorak英字配列とか言う話ではなくて「ひらがな入力」と言及していた)点が興味深いと思いました。
 坂村教授がなぜ「理想の入力システム」を「現行の環境にすり合わせる形で刷新させたのか」という部分についてはまだ不思議な部分も残るものの、こういう「再利用適性(Reusability)」を備えるキーボードを投入してきた背景に何があったのか……という事を考えると、少しばかり楽しくなってくる気がします。


 個人的には、こういった影響力のある方にこそ「かな/ローマ字などの入力方式の別にとらわれず、利用しやすいと思う入力法を探して使うようにして欲しい」と言及していただければ……と願いたいところなのですが、それはさすがに押し付けが過ぎますよね^^;失礼しました。
 いずれにせよ、この「日本語USBキーボード対応のエミュレータをそのまま使って、色々な入力法を使うために利用できる」キーボードを発表された意義は大きいと思います。


 うーん……そういえば、「シャドータイピング50音順式タッチタイピング練習法」には、TRONかな配列バージョン&Dvorak英字バージョンがなかったような……どうしよう。

*1:【はひふへほ】の半濁音がワンアクションでは入力できない問題。頻度的に低いということと、【か゜き゜く゜け゜こ゜と゜】のような鼻濁音や、ウの半母音である【ゐゑ】あたりに考慮したのだと思います。ちなみにかな漢字変換辞書を使えば「ゐ」「ヰ」は「うぃ」の変換&「ゑ」「ヱ」は「うぇ」の変換&「゜」は「半濁音」の変換で出すことが出来ます。頻度を考えれば「ぱぴぷぺぽ」を優先配置するのもアリですね。