「親指シフト系配列」は、まとめてNICOLAの「アクセシビリティ対応」によって実装されるべき!?

(参考:とりあえず親指シフト「エミュレータ」と親指シフト「ソフトウエアロジック」だけをJIS化してみよう!)
(言及:飛鳥開発終了&最終版公開)

 Rayさんが飛鳥を開発した動機には興味深い部分が色々とあるのですが、私にとって特に目を惹いた部分はそういうところではなくて、Rayさん自身が「手紙1枚すら書けない不器用な人」だったというあたりにあります。
 で、そんなRayさんが「長文を書いても指が痛くならない配列を目指して」きたわけで、その思いはNICOLAエミュレータのJIS化原案においても、可能な限り生かしてみたいわけです。
 

 そこで、3つのエッセンスをNICOLAエミュレータのJIS化原案に追加してみました。
 全て「アクセシビリティ対応」(=推奨されるべき追加機能)であるところがポイント。
 「NICOLAエミュレータ」を宣言するだけならば必須ではないけれども、「アクセシビリティ対応NICOLAエミュレータ」を謳うためにはぜひとも必要でして、こういった面に強い「繭姫/姫踊子草」は、既にこれら3点をサポートしています。
 (十分な人月を確保できる大企業様には、できれば「アクセシビリティ対応NICOLAエミュレータを内蔵したIME(もしくはテキストサービス)」を作っていただきたいなぁ……というのが、現状での希望。あまりにも実現に要するコストが掛かりすぎるので、無邪気にお願いするわけには参りませんです、はい)

6. 同時打けん操作のアクセシビリティ対応


 6.4. 連続的な右シフト,および連続的な左シフトについて

 同時打けんは2つのキーを押す時間差を規定しているため,素早いキー操作に困難を伴う利用者にとっては使いにくいものになってしまう恐れがある。

 これを回避するために,「連続的な右シフト,および連続的な左シフト」を許容する設定を持つエミュレータは,はじめにA段シフトキーと文字キーを同時打けんし,つづけてA段シフトキーを押したまま文字キーを打けんする操作(一打けん目は同時打けんであり,二打けん目以降は英文入力におけるシフト操作と同じ)を行った場合,A段シフトキーを打けんしている期間は全て同時打けんと認める。

 必須ではなく推奨。


 「こんなの飛鳥ユーザーしか使わないだろ!」と思うことなかれ。
 実はNICOLAフォーラムでも、たまにこれを必要としているor試してみたいという発言を見かけます。
 親指ひゅんQはかつて「非常に良く似た動作をしていた」時代がありました。
 その後「NICOLA規格書にはない動作=バグなので修正」との意向から、これに良く似た動作は「今の親指ひゅんQでは」サポートされなくなりました……もったいないなぁ、というのが個人的な感想です。


 もちろんNICOLAは、構造上これを許容しても、うまくヒットすることはあまりないのですが……
 例外的に、高頻度濁音かなの「だ(右E)」「が(右W)」「で(右D)」が全て【右シフト】であり、かつ連接しうる「の(右K)」が同じく【右シフト】なので、それを多用する向きにはたまにはメリットがあったりするかもしれないという事情もあります。
 もっとも、そうすると「す(C)」や読点・句読点はシフトにある方が良いし、……と、悩みどころが増えるのは色々とアレですが^^;。

7. 和英文交ぜ書き操作のアクセシビリティ対応


7.1. 仮名モードでの(左シフトキーおよび右シフトキーではなく)B段 Shift キーを押下したときの挙動について

(左シフトキーおよび右シフトキーではなく)B段 Shift キーを押下して半濁音を入力することはないユーザのために,仮名モードでB段 Shift キーを押下しながらキーを押下した場合の挙動を次のように変更しても良い。


7.1.1.「B段 Shift キー押下中の図形キー押下で一時的な英字入力モードに移行し,その後B段 Shift キーを離しても一時的な英字入力モードを維持し,B段 Shift キーの単独打けんで仮名モードに戻る」設定

a. Caps Lockキーを押下せず,Caps Lockモードでない場合,B段 Shift キーを押下しながら図形キーを押した時点で一時的な英字入力モードに移行し,上段の図形文字(英字キーに於いては英大文字)が選択される。B段 Shift キーが離されても英字入力モードは継続し,B段 Shift キーを離したまま文字キーを押せば下段の図形文字(英字キーに於いては英小文字)が選択される。一時的な英字入力モードは,B段 Shift キーを単独で打けんした時点で終了し,仮名モードにもどる。

b. Caps Lockキーの押下によって,Caps Lockモードとなっている場合,B段 Shift キーを押下しながら図形キーを押した時点で英字入力モードに移行し,下段の図形文字(英字キーに於いては英小文字)が選択される。B段 Shift キーが離されても英字入力モードは継続し,B段 Shift キーを離したまま文字キーを押せば上段の図形文字(英字キーに於いては英大文字)が選択される。一時的な英字入力モードは,B段 Shift キーを単独で打けんした時点で終了し,仮名モードにもどる。

 必須でも推奨でもなく許可。
 とはいえ、新参のNICOLAユーザにとっては直接的なメリットとなるかもしれない。


 これは、もともとローマ字入力暦が長く、「ローマ字入力と英字入力の切り替えをシームレスに行いたい(というか、英数・仮名キーを使いたくない)」人にとって、結構有効だと思います。
 しかも、この操作は「MS-IMEATOKによるローマ字入力時の挙動」とぴたり一致しているので、MS-IMEATOKで「英文を交ぜ書きするとき、Shiftキーを押してから文字入力する」方法を利用している人であれば、なんら学習を要することなく、この「一時的な英字入力」を使いこなせるであろうと思います。


 これはRayさんの発案で「姫踊子草」が対応しているため、飛鳥であれば既にこれを使って「一時的な英字入力」を行うことができます。
 NICOLAであっても「半濁音の入力に小指シフトを使ったりしない」という方であれば、小指Shiftをこの用途向けに転用する事が可能です。
 「小指シフトで英字モードへの切り替え」と思ってもうまく使えない気がするので、「小指Shift+文字キーで英大文字モードへ移行、小指Shift単独打鍵で戻る」と思って使うと、その「当たり前さ」が心地よく感じるかもしれません。
 「ローマ字入力でできることの全てを、かな入力へ……」というお題に対する、一つの回答になるかもしれません。

9. 配列変更によるアクセシビリティ対応


 この規格が定める入力法は,エミュレータによる入力方法のみを定めており,けん盤の様なハードウェア部分を規定しない。
 一部のけん盤,もしくは一部のユーザにおいては,A段シフトキーの設定位置変更のみではなく,文字の入れ替えなどを行うことも必要になる可能性がある。
 そのため,仮想けん盤における文字の並びを変更するための方法,および並べ替えた仮想けん盤と標準の仮想けん盤とを使い分ける方法を準備することが望まれる。

 必須ではなく推奨。
 このあたりはエミュレータの方針やリソースに関わることなので、「それを前提とした設計であってほしいなぁ」という想いを込めてみました。さすがに必須にはできませんし。


 ちなみに、この3項目に渡るアクセシビリティ対応を実装した「NICOLAエミュレータ」が、なぜか「飛鳥をきちんと実装できてしまう」のは……偶然ですってば(違
 親指シフト時代のワープロが軒並み対応していた「6.1. 緩慢な打けん操作についての対応」にも対応すれば、TRON配列およびTRON配列族に関しても実装できることになります。
 いずれにせよ、一つ一つの項目はNICOLAユーザにとっても「あると便利」「あっても害はない」ものばかりなので、こういった提案はあっても良いのではないかな……と考えています。


 突貫工事対応などを理由として「余計な機能には人月を割けない」場合は、こういう機能を後付するためのフックさえ用意していただければ、当面は問題ないわけですし……
 後からユーザがどういう要望を出してくるかを予測しながら作るよりは、予めこういうことを規格に含めておく方が良いのかもしれません。


 さて、NICOLAの中の方々は本気になってくださるのでしょうか……今はそれだけが心配。