親指シフトをJIS化できない唯一の理由、NICOLAエミュレーションをJIS化するために必要な要件。

【2006年5月21日0:11:59追記:この版は根本的な間違い(底案選定ミス)をしていたため、次版にて底案を別のものへと変更しています】
(未来:とりあえず親指シフト「エミュレータ」と親指シフト「ソフトウエアロジック」だけをJIS化してみよう!)


 JIS原案作成公募制度の平成18年度JIS原案作成公募要領、第三次分は平成18年6月30日に応募締め切り。
 (2006年5月14日1:46:36追記: たぶん、来年も再来年もやると思う……いつまで続くかは不明なので、チャンスはまさに今。)


 親指シフト「キーボード」と親指シフト「ハードウェアロジック」のJIS化は現状では【絶対に】無理。
 JIS原案作成マニュアル(PDF 168kb)によれば、「需要構造の変化により利用が縮小した、もしくは縮小が見込まれる」案件は「工業標準化の欠点があると認められる」として、採用は拒絶される。欠点は一つあるだけでNGなので、これで完璧にダメ。もし親指シフトが「一度も普及することなく現在に至っている」のならば問題ないものの、一旦普及してしまったからマズイというのは非常に困った点で。


 ただし、元々普及していない(親指シフトキーボード・親指シフトハードウェアロジックと入れ替えで徐々に普及していると見なせる)親指シフトエミュレータ」・親指シフト「ソフトウェアロジック」に付いては、ハードウェア環境からの乗り換えなどにより利用は拡大途上にあると見なせるので、この制限に引っかからない可能性がある(要は説得次第、ということ)。
 使用者の増減にかかわらず、利用可能環境(SCIMAnthy利用可能環境)は明らかに拡大していることがポイント。

  • 導入者本人が意図するか否かに関わらず、デフォルトソフトウェア環境で親指シフト入力が可能な環境が増えている
  • 上記に関わらず「既存の入力方法はそのまま使えており」、親指シフトと既存配列の共存が可能であることそのものは証明されている

(from http://d.hatena.ne.jp/maple_magician/20060510/1147276745 )


 ……と、ここまでは現状追認ですな。
 で、少しばかり考えてみました。

  • キーボードに関する規格化は一切省いてみる。
    • NICOLAを使う人は、まず「スペースキーが大きすぎるキーボード」は使わないだろうし、こういうところは市場動向に任せて良いと思う。
    • NICOLAを使う人が増えれば自然と「親指シフトキーボード」なり「スペースバーの小さなキーボード」なりが好まれるようになるだろうから、そうなった時点で始めて「ハードウェア部分を規格化」すればいい。
    • そうなっていない現時点でハードウェア部分を盛り込むと「利用が縮小している規格」と見なされてリジェクトされてしまう……まずは順番が肝要。
  • 親指シフト」という語句は解説にのみ記述し、規定には一切書かない。
    • 「利用が縮小している規格」と見なされてリジェクトされてしまう恐れを排除するため。
  • NICOLAエミュレータ」とNICOLA「ソフトウェアロジック」に付いてのみ規定する。
    • 説明が必要な箇所では、JISキーボード(真ん中にスペースキーがあるもの・スペースキーの幅を規定していない)を例示する。親指シフトキーボードは例示しない。既存JISと衝突しないことを証明しなければならないので、これは絶対に必要。
    • 既存の入力方法と共存可能であるため、既存JISと衝突しない。


 ……と、こんな感じの規格案であれば、既存の「NICOLA 配列規格書」を下敷きにして、現状のJIS規格要件に合う「JIS適応NICOLA 配列規格書」が作成可能になると思われます。
 具体的には、「NICOLA 配列規格書」を次のように弄る必要がありそうです。


 ※【親指】表記は規定から排除し、全て【右シフト】または【左シフト】とする方向で書き直してみました。また、ハードウェア的な要素を排除するため【鍵盤配列】ではなく【入力法】の語を用いました。
 (2006年5月14日1:52:50追記: 「用語の意味」で解説する右シフトキーと左シフトキーについては、説明時に特段の注意を要します。ここではNICOLAエミュレータが事実上の必須機能としてサポートしている「親指キー設定機能」を明文化しました。また、「JISキーボード」との整合性を保ちつつ、ユーザごとに異なる「好みの設定」を全て許容するために、キー位置については「解説」として記述するにとどめました。両者共に「規格の整合性」と「規格の将来性」に関わることなので、変更する場合は定義理由を把握してから字面の変更を行う必要があります。)
 (2006年5月14日2:10:50追記: 「規格の要件」は「規格の特徴」へと改め、原記述を生かしつつ視点を改めました。「規格の要件」はきわめて理想主義的であり「民間規格から生まれるJIS規格」としての体裁からはかけ離れています。今後NICOLAが目指す道を「全ての人が強制的に使わされるべき代物」から「ロマかなとJISかなに満足できなかった人のために用意された、第三の入力法」へと転換しようとするならば、おそらくはこの方がより目的に合致すると思われます。)

仮名漢字変換形日本語入力装置用
同時打鍵形入力法


1.適用範囲
 この規格は、主として仮名漢字変換形日本語入力装置で使用する同時打鍵形入力法について規定する。
 なお、この規格はかな文字について、鍵盤上のキーの相対的な配列と文字選択方式とを規定し、キー上面の表記、キーの間隔、鍵盤の傾斜、キートップの形状、寸法のような物理的要因は対象外とする。


2.用語の意味
この規格で用いる主な用語の意味は次の通りとする。

(1)打鍵
鍵盤上のキーを押す動作とする。
(2)左領域
図1のB段の01、02、03、04、05とC段の01、02、03、03、04、05とD段の01、02、03、03、04、05のキーが配置された領域とする。
(3)右領域
図1のB段の06、07、08、09、10とC段の06、07、08、09、10とD段の06、07、08、09、10、11のキーが配置された領域とする。
(4)左シフトキー
図1のA段の左領域下に配置され、同時打鍵に使用するキーとする。なお左シフトキーは、利用者がA段の既存キーから任意に選択できなければならない。これは左シフトキーの右端が、B段の03キーの右端からB段の07キーの左端までの範囲にあることが操作上望ましく、かつ左シフトキーの右端が、C段の03キーの右端からC段の08キーの左端までの範囲を逸脱すると、操作性が著しく阻害されるためである。
(5)右シフトキー
図1のA段の右領域下に配置され、同時打鍵に使用するキーとする。なお右シフトキーは、利用者がA段の既存キーから任意に選択できなければならない。これは右シフトキーの左端が、B段の03キーの右端からB段の07キーの左端までの範囲にあることが操作上望ましく、かつ右シフトキーの左端が、C段の03キーの右端からC段の08キーの左端までの範囲を逸脱すると、操作性が著しく阻害されるためである。
(6)単独打鍵
一回の動作で、一つのキーを打鍵すること。
(7)同時打鍵
一回の操作で、文字キーと右シフトキー、もしくは文字キーと左シフトキーを、同時性を意図して打鍵すること。


3.キーの配列
キーの配列及び領域分けは図1のとおりとする。なお、左領域と右領域が容易に識別できること。


4.文字の選択
(1)右領域文字キーの単独打鍵により選択できる文字種は以下のとおりとする。
  め そ ね ほ ・ は と き い ん ら ち く つ , 、
   注) ・(中点) ,(コンマ) 、(読点)
(2)右領域文字キーと右シフトキーの同時打鍵により選択できる文字種は以下のとおりとする。
  ぬ ゆ む わ ぉ の ょ っ よ に る ま ぇ
(3)右領域文字キーと左シフトキーの同時打鍵により選択できる文字種は以下のとおりとする。
  ぷ ぞ ぺ ぼ ば ど ぎ ぽ ぱ ぢ ぐ づ ぴ ゛
   注) ゛(濁点)
(4)左領域文字キーの単独打鍵により選択できる文字種は以下のとおりとする。
  . ひ す ふ へ う し て け せ 。 か た こ さ
   注) .(ピリオド) 。(句点)
(5)左領域文字キーと左シフトキーの同時打鍵により選択できる文字種は以下のとおりとする。
  ぅ ー ろ や ぃ を あ な ゅ も ぁ え り ゃ れ 注)-(長音符号)
(6)左領域文字キーと右シフトキーの同時打鍵により選択できる文字種は以下のとおりとする。
  び ず ぶ べ じ で げ ぜ が だ ご ざ °
   注) °(半濁音)


配列図
【キーボードにはJISキーボードを例示、他はNICOLA配列のまま、親指キーの表記は右シフト・左シフトに変更】


解 説
【1.制定前の状況】はすべて排除。理由は以下の通り。

  • 既に「旧JIS配列」は「旧」ではない(現行唯一のJISかな配列である)。
  • 明らかに「予言」は外れているので除去する(特にJISかな部分)。新たな「予言」を追記してはならない……どうせ当たらないのだから。
  • 新JISの「急に変化すると信じる理由は〜」は除去(親指シフトがいまその立場にあり、はっきり言って縁起でもない表現)。
  • というか、そもそも【非常に後ろ向き&他者をけなしているだけ】であり、今後目指すべき【多数の入力方法が共存できる状況を目指す】目的には合致しない節である。エミュレーションから再出発するべき状況だけに、こういった節はそもそも【あってはならない】。


2.制定の目的
【現状に見合う文面に書き換えること】


3.規格の特徴
 欧米の歴史、日本語の特性、時代の流れも考慮して、NICOLAは以下の特徴を備える入力法となった。


(1)タッチタイプ性に優れていること
 文字キーを3段に配置する方式は、一般に文字キーを4段に配置する方式とくらべてタッチタイプが容易であることは、新JIS配列設計時の実験結果やNICOLA独自の調査、および現在のローマ字入力の普及などから容易に推測可能である。
 NICOLAではこの他に、従来の日本語入力法ではあまり用いられなかった「親指で容易に操作できるキー」を積極的に用いることで、3段配置のままで日本語入力に必要なカナを表現することが可能である。


(2)十分に効率的な入力が可能であること
 NICOLAは、日本語文におけるカナの使用頻度を調査し、使用頻度が最も高いカナを中段に、比較的使用頻度が高いカナを上段に配置することで、英文タッチ打法と同様の操作感をカナ配列でも実現した。
 他のカナと連接しやすく、かつ即座に入力できる必要がある「う」と「ん」は小指に配置し、他のカナとの連接を打鍵する上で支障が発生しないよう考慮している。
 非常に高い頻度で用いられるカナである「い」は右手薬指に配置し、他のカナとの連接を考慮しつつ、指への負担が高くならないよう考慮している。


(3)覚えやすさに考慮していること
 NICOLAでは、比較的使用頻度の低い濁音を、清音キーとシフトキーの操作で入力する。そのため学習すべき操作数は、他のカナ配列とほぼ同等である。
 使用頻度の高いカナから順に、おおむね「C段→D段→B段」と配置されているため、使用頻度の高い順から順序を追って学習することが容易であり、早い段階から実践的な文字入力を行う事が可能である。


(4)打鍵順序を考慮せずに仮名文字入力ができること
 既存の入力方式であるJIS配列カナ、新JIS配列カナ、ローマ字入力は、いずれもカナを表現するために複数の打鍵動作を必要とする。
 この操作は、誰にとっても自然であるとは言い難い。
 NICOLAでは、通常の日本語入力で使用される全てのカナを、打鍵順序に依存することなく、一回の打鍵操作で入力可能である。ひとつのかな文字には濁音や半濁音も含まれる。


(5)身体的な負担が少ないこと
 キーボードを日常的に操作する場合、その身体的な負担は軽い方が望ましい。
 一般に力の入りにくい小指の多用は避けるべきであり、NICOLAはその点に考慮した配列である。小指の使用頻度を十分に下げた。


(6)アクセシビリティに配慮していること
 NICOLAの要件には同時打鍵操作があるが、同時打鍵操作を行うことができない利用者であってもNICOLAを使用することができるよう、右シフトキーと左シフトキーの挙動を変更する「同時打鍵操作のアクセシビリティ対応」を定めている


(7)国内規格および国際規格と矛盾しないこと、他の入力方法と共存可能であること
 NICOLAは英字配列を定義せず、JISかな入力やローマ字入力などを行うためのキーボードがあれば実現できる。
 またLinux環境では、NICOLAを含めたいくつかの入力方式から、利用者が自由に文字入力方法を選択可能なIMが存在しており、すでに他の入力方法との共存が矛盾なく成立していることを実証している。
 そのため、国内規格および国際規格と矛盾しない。


(8)実績に裏付けられていること
 NICOLAは「親指シフト」と呼ばれた時代を含めて、既に25年以上の被利用実績がある。


(9)「エミュレータ」による利用者は徐々に増えていること
 「親指シフト」は専用の装置を必要としていたため、ワープロの生産終了と共に徐々にユーザをへらしつつある。
 一方で、「エミュレータ」によりNICOLAを実現する方法は近年一般化し始めたものであり、主に「親指シフト」からの移行組を基礎としたユーザが増えつつある。


【現行の表は全て不要、代わりに入力速度などの資料を添付すべき】


参 考
【1.概要】〜【9.同時打鍵操作のアクセシビリティ対応】まで、全てソフトウェア実装用の文面に改める。

 ……結局、一番の問題は「親指シフト」という語そのものなのかも。
 JISへと持ち上げるとなれば「衰退しつつある規格」と見なされることがあってはならない(それでは採用されない)ので、そのあたりのイメージを何とかすることが重要なのではないかな、と。
 #イメージが変わろうとも、中身は「親指シフト」なので、実使用に問題が発生するわけではないのです。


 うーん……こういう話題はNICOLAフォーラムに振っていいものかどうか……とりあえずは保留で。