好みの入力方法は人それぞれ、ならば好みの練習方法も人それぞれ。

 比較的高齢な方を対象にした「JISかな」教習方法に関するノウハウを、熟年パソコン教室のマダムぱそさんが、一枚のPDFプリントへと纏めています。
 該当PDFに興味がある方は、ぜひ「かな文字の配列表公開」をご覧ください。


 ここで興味深い点が二つ。

 一つ目は、マダムぱそさんの教習方法が

1 あいうえおをリズミカルに入力できるようになるまで、何度も繰り返して入力する
2 次にかきくけこのみをリズミカルに入力できるようになるまで、繰り返す
3 サ行に進まず、あいうえおかきくけこを何度も繰り返す
4 さしすせそのみをリズミカルに入力できるようになるまで、繰り返す
5 タ行に進まず、あいうえおかきくけこさしすせそを何度も繰り返す
以上の要領でナ行のみ→あかさたな→ハ行のみ→あかさたなは→マ行のみ→あかさたなはま……
と、繰り返して練習する。ここで重要なのは焦って、ア行→カ行→サ行→タ行…と一直線に進まないこと
(from http://www.oaw.jp/PDF_kana.pdf )

という方法を採っていらっしゃることです。
 もちろんこの記事の前には「目にやさしいキーボード」の紹介があるわけでして、こちらは

文字の大きさが10倍で、10分ほどの入力練習でかな入力が出来るようになります。

(中略)

74歳の女性の方で「あ〜ん」の46文字を10回ほど繰り返し入力するとキーの位置が分かり、かな入力が出来るようになりました。五十音順に文字が並んだキーボードと同じ感覚で入力出来ます。
(from http://iwatadesign.com/ )

という紹介があるわけでして…。
 タッチタイプ(キーボードを見ずに入力)とサイトメソッド(キーボードを見ながら入力)では、入力方法を習得するための方法論が異なってくるのかも…と感じてみたり。
 特にこの両者の場合、共に「キーに色分けをして目視識別性を高める」という方向の工夫がなされているわけで、「原理は近いが練習手順は全く異なる」という点は、特に興味深いと感じています。


 もっとも、「イワタデザインさんの提言する10分法」「マダムぱそさんの教習方法による2時間法」「増田式による3〜5時間法(あるいはその2〜3倍)」のそれぞれに【どの時点をもって習得とするかの閾値が異なる】様にも思いますので、一概に並べて比較するのはちょっと妙かもしれませんが…
 人によって「どの方法がもっとも覚えやすいか」という点が異なることだけは確実そうです。


 もう一つは、このPDFシートを「キーボードとモニタの間に置く(モニタの横などではなく)」ということ。
 私がやったときには「下を見る癖があるとダメなのかも」とおもって、あんちょこはモニタの横に貼っていたのですが…この辺りにも、なにか特別な理由があるのでしょうか。


 しかし…こうして見ていると、多数ある「学習方法」にも、(配列設計と同じく)それぞれに「設計者の思想」が現れていているようで、見ていて興味が尽きませんね。


 最近「漢直ノート」という名でブログを開設されたみのりさんの場合、練習方法に関する問題は特に深刻な様で(…当然ですよね、かな・ローマ字系とは違って覚える量が半端じゃないですし)、連想法から始まって無連想を経由し半連想にたどり着く…という過程を経ているとのこと。
 漢直系の練習方法に関しては、昔から色々とテキストが用意されている様なのですが、それらに頼るよりも「覚えやすい方法を探す」という方法を採られている辺りがさすがだな…と感じました。


 さて、タイトルに戻りましょうか。
 現在ではさまざまな学習方法が発表済みであり、なおかつ未だになおさまざまな学習方法が研究されつつあります。
 こういう現状を見て、果たして
  「本当に誰にとっても有用な学習方法は、ただひとつ」
と言い切れるだろうか?と。
 ここまで見てくると、やはりこの答えは「NO」だな、と…そう私は思います。


 人によって使いやすいと思うインターフェース(キーボードやポインティングデバイス・モニタなど)が異なるように、キー入力の学習方法もまた「その人自身に合う・合わない、あるいはその入力方法に合う・合わない」という相性があるように思います。
 現在、キーボードを用いた日本語入力方法だけをみても「驚くほどたくさんの種類が存在」していて、また今後も各人の要求を満たすべく日々改良され、数も増えてゆくと思います。
 そうした現状にあって、果たして「タッチタイプ練習方法」は、それに見合う多様性を提供できているだろうか?と考えると、まだまだ視点も方法論も不足しているのではないかという気がしています。


 服装には「頭の天辺からつま先まで」のコーディネートがあるように、配列・キーボード・学習方法に関しても、同じような「コーディネート」が存在しうるのではないかな…などと、妙なことを考えています。
 今までキー入力をする気がなかった方・タッチタイプを習得できずに諦めモードでいる方に対して「よりアピールできる・より効率よく楽にタッチタイプを習得できる」方法論を作って(もしくは探して)みたいと感じています。

 とある靴販売店は、「本当に合う靴は作るのではなく、探すのです。」と公言しています。
 もちろん理想は「作る」事なのだと思いますが、現実的には「探すこと」の方が重要だ…と、そういうことを訴えたかったのかもしれません。
 現在「学習ソフト」に近い「タッチタイプソフト」は多数存在していますが、これらとはまた違った「純粋に学習のみを目的としたソフト・方法論」に関しても、「作るのではなく探す」ことで要求を満たせる程度の数が必要だと思います。こちらも、今後の動向には要注目ですね。


 …と、毎度のことではありますが、話が堂々巡りになってしまいすみませんですorz