【飛鳥】対【ローマ字入力】の打鍵コスト比は1.7倍程度以上「ではない」ということ。

 前々からどうにも納得がいかなかった「NICOLAは1.7倍以上ローマ字入力よりも早く打てる」という話ですが、今更になってその根拠(とゆーか、カラクリ?)を、少しずつですが理解できてきました…。


 そもそも、この倍率根拠(低い方)となっているのは
  http://www.ykanda.jp/txt/hikaku.txt
にあるということが、
  http://homepage1.nifty.com/cura/oya/how_fast_can_you_type.html
に書かれています。

 ここでの標準時間法の使われ方は、おそらく「運指総距離と打鍵ストロークの距離を測定」して、それぞれに「(キーボードの操作経験がない人による)操作所要時間を掛け合わせて」打鍵時間を求めようという方法論のはずです(…って、ここからしてすでに自信がないのですが)。


 さて、ここで一つ疑問が出てきます…果たして、ローマ字入力やJIS系配列の評価に置いては、正しく「ロールオーバーを正当に評価している」のか、という点です。

 ローマ字入力では交互打鍵を含む「ロールオーバーを当てにした逐次打鍵」が普通に使われています。(隣接キーを誤打鍵する以外にも)打鍵順ミスのような問題が発生するのはまさにこれが原因で、結局はIME側でそれに対処しようとする…という試みが始まっていたりします。
  http://www.atok.com/2005/function/tatsujin.html
[2005/02/12:この点は単なる勘違いかもしれません…間違いの内容と訂正結果を学習するらしいので。]


 また、JISカナ系においても「濁音になりうるカナは左手、濁音キーと半濁音キーは右手」という感じで交互打鍵(例外は「ほへせくけ」のみ)となるため、こちらもロールオーバーを当てにしての逐次打鍵が可能です(もっとも、小書き文字は小指シフトですが)。

 ロールオーバー(キーを離し切る前に次のキーを押すと、正しく次のキーが有効となる)が使用可能な打鍵方式と、ロールオーバーがそもそも使用不可能な打鍵方式では、どう考えても「一つ目のキーを押してから、次のキーを押すまで」の時間は異なるはずです。
 で、そのロールオーバーに関する係数があるのかと思って読み返してみたのですが、本文中のどこにもそれは書かれていません。
 邪推すると、これって「ロールオーバーは一切使用しないものとする」などという条件付きだったりは…しませんよねぇ?まさか。


 …で、ようやく少しだけ飛鳥に戻るわけですが、飛鳥のRay氏は(おそらく旧親指ひゅんQの挙動から)「親指キーを押したり離したりするのではなく、離しっぱなしや押しっぱなしで打鍵する方が楽だ」という気になって、「連続シフト」の利用を思いついたのではないかという気がします。
 そうすると、今度は上記不明点とともに「親指シフトキーを打鍵する為に要するコストも、もしや【同時に押すんだからゼロでいいじゃん】などとされているのではないか」という点まで気にかかってきてしまいます。


 そこで、ひとまず俺流計算をしてみました(…って、かなりテキトーなのですが)。
 Azik時代(≒ローマ字入力時代)の私製テキストから、かな漢字のみを500文字程度抜き出して、打鍵数を比べてみました(AZIK時代のテキストなので、ローマ字入力に比較的有利な結果が出るはずだと思います)。


 この際、飛鳥については「シフト押す」操作と「シフト押し変え操作[*]」(左→右、もしくは右→左)を1/2打分、「シフト離す」動作をキー1打分と見なすことで、より現実的(大げさ?)なウェイトをかけています。
 [*]片方のシフトを離す前にもう一方のシフトを押すと、姫踊子草では「後から押したシフトが正しく有効となる」ため、単独でシフト面を打鍵するのと同じウエイトが妥当だという考えに基づいています。
 (この方法論をNICOLAに用いる場合は、シフト離すのコストをゼロにして計算すべきですな。NICOLAは連続シフトを無効としているので、シフト離すのコストだけは間違いなくゼロですから)


 この考え方で数えたものが↓です。

  • 原文(漢字かな混合) (1010bytes-44bytes(注))/2=483characters
  • 原文(漢字→かな) (1204bytes-44bytes(注))/2=580characters
  • 飛鳥かな(「シフト押す」含む) (1699bytes-44bytes(注))/2=827.5keys
  • 飛鳥かな(「シフト押す」除く) (1488bytes-44bytes(注))/2=722keys
  • Qwertyローマ字 (1019bytes-44bytes(注))=975keys
  • 飛鳥かな(「シフト押す」含む):Qwertyローマ字 = 827.5:983 = 1:1.18
  • 飛鳥かな(「シフト押す」除く):Qwertyローマ字 = 722:983 = 1:1.36

注)文中に半角括弧が4組と改行文字が18個含まれています。これについては式上で計44bytes減算しました。


 飛鳥を試したことがある人であれば、まず「少々過小評価」か「妥当」だとお感じになるのでは?などと勝手に思っていたりします。
 少なくとも、今の私にとっての飛鳥は「ローマ字比で単位時間あたりの文字数2割弱増し、疲労度は3割減」といった感じで、だいたいこの結果通りに思えます。
 (打鍵速度の面に関しては親指シフト操作が足を引っ張っているけど、打鍵感としてはさほど悪い感じはしない…という状況を、うまく数字で表せた気がします。)


 NICOLAがモデル化によって「打鍵速度が1.7倍程度高速だ」という数字を算出したことについては放置するとしても、飛鳥にこの1.7倍ルールをそのまま用いるのは、ある意味非常に危険です(前出の「シフト離す」操作の件がありますので、そのまま適用するのは困難です…しかも条件もはっきりしていないので、余計に怖い)。
 飛鳥を試そうとなさる方は、どうかNICOLAサイトの数字を見て「飛鳥でもそのまま適用できる」などと思うことのない様にお願いいたします。


 飛鳥は超高速打鍵を目指さなければ、1〜2割は速く、2〜3割は楽に打てます。
 少ない様に見えるメリットですが、「打鍵疲れしづらい」ということは結構重要ではないかと。