ただいま、「親指シフト - Wikipedia」をひっくり返すべく調査中……。
(過去:『速く打鍵できる配列・速く打鍵できない配列』の差は、存在するのか? - 雑記/えもじならべあそび)
(過去:同時打鍵法における体感入力効率の転換点予測についての仮見当。 - 雑記/えもじならべあそび)
(過去:同時打鍵法における実質制限速度についての仮見当。 - 雑記/えもじならべあそび)
もしかすると、1970年代後半当時の神田さんは、こう考えていたんじゃなかろうか……と、最近思いはじめてる。
- 今は職業タイパーが一日中、「皆が書いた原稿を」超高速で打ってる。こういう用途だと「習得が難しいけど、その分はやい」のは、十分に見合うなぁ。
- でも、これを「個々人がそれぞれ打つ」なら、別に超高速で打つ必要なんか無いんじゃね?筆記の2〜3倍もあれば必要十分じゃん。1000万台売るには、国内のオフィスレディー全員が使えるようにする必要があるな。そのためには「特別な訓練が必要」ってのじゃダメだから、そういう意味でも「それなりの速度に抑えるけど、簡単にしよう」って方針で行くか。
- ……ってなると、毎秒3モーラ打てれば十分そうだな。複雑なのはなしで、なるべく簡単に習得できるのを。
- プログラムを打つときみたいに和文が打てればいいんだけど、そんな都合のいい方法はないよなぁ。Qwertyローマ字は実装が簡単だけど、ホンモノのローマ字はキーボードじゃ打てないし……プログラム中のローマ字コメントとかをみると、何かダサくなっててヤだし。
- かといって、JIS C 6233カナは、俺にはタッチタイプできそうにないんだよな……訓練した人は確かにできてるけど、これを勧めるッてのは技術者的に何かヤだな。
- いっそのこと、つくらせてみる……か。
- ええと……ああ、速記入力の簡易版を作ったの?ん……速度は出るのか。でも使いづらい?そりゃダメでしょ。アンタにとって使いづらいなら、たぶん他にもそう言う人がいるよ。
- ……で、今度はシフトキーを2つにした?親指でシフトするの?テストしての?それ。……あぁ、電卓でやってみて、うまくいったのか。いいんじゃない?プログラミングのときの英字入力みたいになるなら、それで十分使えるよ。
- ……試作品を2つ作ったの?で、一つは……うわ、これ凄い変な形だな。とりあえず見せてみよう……黒山の人だかりに、奇異の視線、か……事務の娘が思いっきり引いてる……だめだこりゃ。普通のやつで行こう。
- 同時押しの判定をどうするか?そんなの「文字キーと文字キーの中間」でタイマーを切ればいいじゃん。え?速すぎる人が打ったときの為に、タイマーの時間を短くするべきだって?おいおい、熟練技能者を1000万人養成するつもりかよ……そんなの現実的じゃないだろ。熟練技能者向けのチューニングをしちゃダメだって!社内に出回ってる事務文書の量から考えて、「毎秒3モーラ」打ってちょうどよくなる値にするのが、一番現実的だろ。
- ……で、文字の並べ方はそれでいいの?何かの根拠に基づいて並べなきゃ、商売にはならないよ?
- ……あぁ、音声認識用のデータがあるのか。それ、使ってみよう。納期はもう1ヶ月もないぞ!急げ!
……みたいな。
とりあえず、入力速度のターゲットが「無限大」ではなく「70字/分(2.8かな/秒、もしくは2.72モーラ/秒)以上」に置いてる……ので、概ね3モーラ/秒をターゲットに設計していたようで。
もっと簡単に言うと、【タイプウェル国語K総合での、ランクB以上(SBでもXBでもない!)をターゲット速度として】設計していた……と*1。これって、2011年の今になってみても変わることなく、超現実的な値だよね……。
ここが基準となると、当時神田さんたちは「爆速入力法を目指さず、あくまでも普通の創作文入力をターゲットにして、そのぐらいの速度で打ったときに心地よい入力法を作ろうとしていた」って考えるほうがいいのかも*2。
当時の神田さんたちが、↑のようなものを想像していたのかどうかはわからない……けれど、そういうことを想定していたのかどうかを含めて、もうちょっと親指シフトがらみの資料を漁りなおしてみたいと思う。
……そして、気になるのは「JIS X6004」を作った渡辺さんも、もしかすると同じことを考えていたのかも?ということ。
そして渡辺さんが「親指シフトだと速度の天井があることが、どうにも気に喰わない」って考えて、同時打鍵どころか普通のシフトでもない「プレフィックスシフト」で行こうとした……のであれば、このあたりの設計方針の差が、結構ハッキリするのかも。
このあたりの話、たぶん「親指シフトは速い教」が原因で、そこにあるのに認知できない……って状態になっていたのかも。
たぶん、「当時は職業タイピストさんが、好んで親指シフトを使っていた=工夫して速く打つ人が多かったから、速い親指シフトユーザーが現れた」ってことなのだと思う。凄く速い人は、配列側の想定なんかほったらかしで、OASYSの辞書やIMの特性をうまく使った「辞書圧縮法」にたどり着いて、それゆえに高速入力を達成していたけど、そこのところはほったらかしで「商業的な面で、速いというのは宣伝にとって力になる」って方向に傾いていったんだと思う。
……でも、あたしゃそこには全く興味ナシ。神田さんが目指した「本当の姿」がどこにあったのか……ってのを知りたいんです。
それはたぶん、当時「OASYS残業」*3なんて言葉ができたぐらいに「皆が、それなりの速度で、心地よく打てる」こと、だったはず。
いつまでも「親指シフト=プロの道具=私らには関係ない」的呪縛が続いてるのはよくないと思う……ので、できれば設計当時の姿を、資料から追いかけられる範囲で明らかにしたいんですよね。
まぁ、「それは俺なりの宣伝方針とは違うから止めろ!」とか言われて抵抗されたりしたときには、そのまま素直に引き下がりますけど……俺は正直、中央値平均値よりもずっと上の人たちにフォーカスして宣伝しようとするのは、「親指シフトにとって不幸なこと」なんじゃないかと思うところで。
親指シフトの設計時点での狙いが「中央値平均値前後の人たち狙い」だったとすると、そこに向くようにフォーカスの深度を変えるほうが良いのではないか……とか考えていたりします。
#かえであすかの場合は、すでにタイプウェルSD〜SJ狙いあたりにしてます……そーゆーフォーカシングが、もしも「親指シフト」に存在するのならば、それをきちんと伝えてみる、というのも、宣伝の一つとしてありなのかも。
この記事に対してコメントされる方へのお願い。
タイプウェルを実際にプレイしてみて、その結果をコメントの冒頭に書いてください……基本常用語でのランクだけで十分だと思う。
「ランク○○の私が考えるに〜〜〜だと思う。」とか、そういう感じでコメントをいただけるほうが、この手の話をする上では話が早いと思うもので。
ちなみに私、タイプウェル国語K基本常用語では「ランクSG」でした(かえでライティあすか使用)。
もうずっと昔からこの速度はほとんど変わってない(ロマかなではSJだったと思う)ですし、タイピングの訓練自体に取れる時間は実質ゼロという状態*4なので、今後の速度上昇も見込めないかな、と考えています。
そういう状況だからこそ、余計に「高速度試験に参加してくださる方」が居ることが、とてもありがたいと感じるわけです。
*1:タイプウェル国語K総合でのランクBは、この表で言うところの「速度余裕341%」にあたる……ので、この速度で入力するなら6〜7割くらいの人が「同じ課題を、他よりゆっくり打てていいじゃん!」って感じるのかも。
*2:実際、評価テストでは「40時間訓練で、親指シフトが目標である70字/分を超えた」所までをテストしていた……ので、その意味では富士通が実験した内容は正しい。今となっては「そこから先」についてテストしてなかったのはどうよ?って気もするけど、「ある程度の時間でタイプウェルBに達成できること自体も、配列性能に対する要求に含めている」となると、これで資料としては十分ということにもなる。ここら辺は、「年単位で使ったときの評価を重視するかどうか」ってゆー話になると思うのだけれど、実際のところはそこまで踏み込んだ(というか、配列の天井に突き当たるまでやってみた)新配列評価ってのは無かったと思う。
*3:当時少なかったワープロを使いたくて、社員が定時外まで順番待ちしていた……ってゆー話。「速い人に任せたい」ってのじゃなくて「自分で使いたい」ってゆー意思が、そういう行動として発現した……ってのは、興味深い話だと思う。
*4:仕事上および性格の問題もあって、ここにはどうにも時間を投資できない……ので、私はどうしても「速い人の考え方・感じ方」が捉え切れていませんでした。ついったいぱークラスターを通じて得た感触・経験は凄く大きくて、「今の自分では体験できないことがらに対して、どう考えていくべきか」を知ることができました。