事務分野の生産革新には「設備改善」と「手順改善」の適用先を分けて考えることが重要……なのかもしれない。

※以下に過去への内部リンクを提示していますが、直接記事に関係するわけではないので無視していただいて構いません。
(過去:「トヨタ生産方式」=「立ち作業」?)
(過去:日本語入力法についても「作業改善が先・設備改善は後」の理屈は通用する……のだろうか。)
(過去:納得できない事柄を見かけたときにはどうするべきか。)
(過去:入力法に関する「速さ・楽さ」関連メモ。)
(過去:仙台市選管の「開票スピードアップ作戦」がOH!バンデスで取り上げられていた。)
(過去:「増田式練習法」の本を使う練習法@あすかはいれつ)
(過去:読書完了→大野耐一の現場経営)
(過去:読書中→トヨタ生産方式―脱規模の経営をめざして。)
(過去:「トヨタ式」には「改善【術】」など存在しない!……そして、そこにあるのは「トヨタ式」の「改善【道】」なのかもしれない。)
(過去:「キー入力入れ替えソフト」のJIS規格化を目指して。)
(過去:低頻度な文字編集操作よりも「高頻度な文字入力操作」に【改善の手を加える】ほうが、より「無駄な動きの排除」という目的を達成できる……はず。)
(過去:現場発のボトムアップ方式【21世紀版の作業改善】をやるなら、手始めに「飛鳥カナ配列」を試してみよう!と言ってみるテスト。)


 少し前に「トヨタ生産方式」=「立ち作業」?という事柄でIT業界について物事を書こうとして失敗したばかりなのですが^^;、今日もまた失敗覚悟で事務分野について書いてみようかな、と。
 専門でもなんでもないので、頓珍漢なことを書いているかもしれません……。


 事務分野での作業能率向上というと、大抵は「OA化」「IT化」あたりの話でくくられる物事が多く出てくるはずです……前者であれば代表製品はワープロであり、後者であれば代表製品はパソコンですね。
 それから……机そのものの配置や向きなどを変えてみたり、パーティーションの切り方を変えてみたり……と、こういった「目に見えることを何か変えてみる」ということに関しては、割とスムーズに行われているような気がします(いや、実際にそれを見たかどうかについては言えないですし^^;)。


 ……で、これらの変更を行うときにどういう理由で変更したのか?というところの認識と、その効果が本当にあったのか?というところの検証については、果たして成されているものでしょうか。
 仮にこれが「変えました。働きました。疲れました。綺麗になりました。うーん、満足!」だったりするとかなりヤバイ(いや、さすがにそういうところはないと思いますが……)のですが、逆に「しっかり事後検証をして、後々に生かす」ことについて考慮されている例が、どれほどあるのかについては、少しばかり不安を持っていたりします。


 ……と、ここまでは「手順改善」と「設備改善」がごっちゃになった話(購入云々が絡めばだいたいは設備改善寄りになる)でしたが、事務分野には「純粋な手順改善(作業改善)」を行う方法がいくつか存在するように思います。
 ところで、割と有名な

トヨタ生産方式――脱規模の経営をめざして

トヨタ生産方式――脱規模の経営をめざして

のp.227には、「作業改善から設備改善へ」というキーワードが載っています……キーワードの内容を乱暴に要約すれば【設備改善はカネが掛かる上にやり直しが効かないから後回しにして、まずはカネがかからずやり直しが効く手順改善から行うべきだ】という話になっています。


 事務分野において「設備改善」とは、大抵が「高速な機器への交換」だったりするでしょう。
 そして、本書は製造業の考え方で「古い機種でもメンテナンスが適切ならばどこまでもイケる」ということを提唱していますが、事務分野においてはその考え方が通用しない部分がある(特にソフトウェア的な都合による不可抗力的なものが大きい)ので、ここはさすがに真似する必要性はないだろう……と思われます。


 一方で、事務分野においても「純粋な手順改善(作業改善)」としてあげられるものの一つに、「パソコン用の文字入力法に関する手順改善」があります。
 ……いや、もちろん冗談ではなくて。
 事務分野ですと、大抵の方は「ローマ字入力」をしていて、幾許かの方が「ひらがな入力」をしているはずです……で、その手順を変えてみては?という提案が存在します。


 この考え方は昔からあったのですが、ちょうど【トヨタ生産方式――脱規模の経営をめざして】の初版が流通し始めてから大きな提案が公開され始めた……という、ちょっと興味深いところがあります。
 同書の初版以降に公開された有名どころの「純粋な手順改善(作業改善)」提案には、次の4つを挙げることができると思われます。

 このように様々な入力方式が提案されてきました。
 しかしながら、1980年代〜1990年代には

  • コンピュータとキーボードの組み合わせで入力法が決まってしまい、その端末では(Qwertyローマ字入力を除けば)他の入力法を併用できない状態だった。
  • ワープロ以後に普及した「MS-DOS搭載コンピュータ」の操作には英字入力が必須であり、今のようにマウスで色々操作できるような環境でもなかった。

などの理由があり、「ワープロ=かな入力で使うもの」「パソコン=ローマ字入力で使うもの」という認識が広がって言ったのではないかな……と想像しています。


 前出の理由付けについては、21世紀の今となってはその意味を成していません。
 21世紀の今となっては「入力法はソフトウェアで実現するもの」であり、特定のハードウェアがなくても実現できますし、ソフトウェアの切り替え手順を覚えるか掲示するかすれば、複数の入力法を一つのコンピュータで扱うことも可能になりました。
 また、英字入力技術が必須であった時代は「MS-DOS搭載コンピュータ」時代のみであり、その前にも後にもその技術は(有用ではあるが)必須ではないという事情もあります……昔はCMでも【http://〜〜〜〜】という表記が幅を利かせていましたが、あっという間に【検索】ボタンと【日本語キーワード】を組み合わせる方法に変わってしまったことからも明らかなとおり、今は(業種によって事情は異なるものの、多くの分野では)既に英字入力を頼りにして全てをこなすような時代ではなくなりつつあります。
 しかしながら「純粋な手順」としてのローマ字入力は、今もなおそのまま「疑う余地がないものと思われて、使い続けられている」のではないかな……と。


 そこで、この「Qwertyローマ字入力」という手順から「純粋な手順改善(作業改善)」を行うことで、日本語入力に関する労力や時間を節約してみてはどうだろうか……というのが、今回の提案です。
 もちろん、「いまさら習いなおすなんて面倒」という意見はあるかもしれませんが、チャレンジしてみる価値はあるかも?とお感じになられましたら、一度お試しいただけますと幸いです。
 #「私はQwertyローマ字入力が好きなのだ!だから変更したくはない!」という方には、もちろん無理にお勧めするようなことはしません。それが「自身にとって(慣れているから、ではなく)快適な入力法だからだ」というお考えをお持ちなのであれば、なおさらに。


 提案するべき候補はたくさん(日本語入力用キー配列(指に宿る記憶)に関するリンク集では100種程度提示しています)あるのですが、今のところ個人的な印象として「純粋な手順改善(作業改善)」というコンセプトに向いているのは、「飛鳥カナ配列」なのかも……と、そう考えています。
 「飛鳥カナ配列」という日本語入力法は、先にあげた4つの入力法とは若干毛色が異なっていて、「徹底的に自身を実験台にした作業評価を行い、ほぼゼロの状態から、細かな改善を積み重ねて今の形を作り上げた」という経緯を持っています。
 製作者であるRayさんという方と、利用者である私とのあいだでは、最近延々と「飛鳥は【速い!】と言うべき!(Rayさん)」「いや、飛鳥は【楽だ!】と言うべき!(私)」という話をやり合っている気がする*1ので、正直言って【飛鳥カナ配列が、使い手の方にとってどういう印象をもたれるのか】というあたりは、未だに色々な視点を取りうると思われます。


 いずれにせよ、「純粋な手順改善(作業改善)」の成果物として「飛鳥カナ配列」というものが公開されている……ということ自体は事実でして、手順改善なり作業改善を行おうとされる方にとっては「割と色々なヒントが得られる」のではないかな……と、私はそう感じています。


 飛鳥カナ配列は、おおむねこういう入力方法を取ります(注:かなり退屈な動画です)。
 傍目には複雑な操作に見えそうですが、覚えるべき手順は90個程度(ローマ字入力で、文字を一文字ずつ出すためのつづりの数と同一)でして、練習する上での負担量は「ローマ字入力で、拗音を含む綴り(140個ぐらい?)を覚えるよりはまだ楽」ではないかと思われます……が、感じ方には個人差があるので、一概には言えませんけれども。
 ひとまず、【手をあまり動かさずに入力できていること】【キーを叩く速度は遅い割りに、文字入力は比較的進んでいくこと】に着目してみてください。

 また、導入法や練習法などについては、以下のWikiが参考になるかと思われます。
 http://www29.atwiki.jp/asuka-kana-layout/


 先にも述べたとおり、日本語入力法にはたくさんの種類があります。
 そして、それぞれの入力法はそれぞれの設計方針において「最も効率よく快適に文字入力ができるように」設計されていまして、一概に「どの入力法が良い」とか「どの入力法があなたにあっている」などと言うことは言えないという事情もあります。
 とはいえ、この手のことは「練習してみて始めて解る」ことがとても多く、またこういった練習をすることによって「手順を変えるにはそれなりの労力が必要である」「機材を変えずとも手順改善でイケる領域がある」ことを、割と容易に把握できるのではないかな……と思われます。


 新しい入力法の練習と言うのは、「純粋な手順改善(作業改善)」というテーマを追求する上で「基礎的な知識なり技術として応用できる可能性がある」という、面白い特性を持っています。
 そして、職場全体ではなくパソコン一台&人が一人から始められるので、「実験的に導入する場合であっても、他の業務や他の人に影響を与える量が低く抑えられる」という特徴もあります。


 手順改善や作業改善に取り組んでみたいけど、大掛かりなものはどうしても……という場合には、いちど「新しい入力法の練習」というテーマを選択するべきかどうかについて、ご考慮いただければ幸いです。
 もちろん、「自身にとって納得できる日本語入力法」を「自身の手で選択して」練習し始めていただきたいところです……他の誰が奨めるわけでもなく、自分自身の手で選択することが、何よりも重要だと、私はそう考えています。

ちなみに。

 「慣れることが出来なかった場合、元の入力法に戻すしかないのか?」という疑問をお持ちの方がほとんどだと思います。


 【まだ慣れていないが、どうにも入力速度が上がらない】と言う場合は……とりあえず「楽かどうか」を基準にして判定して、良さそうであればそのまま練習を続けてみることをお勧めします。
 「楽さ」は「速さ」と密接な関係を持っているので、あなたにとって楽であれば、将来的にあなたにとって速い入力法であることを保障してくれるはずです。


 【指が痛くて、どうにも練習自体がしんどい】と言う場合は……慣れで解消する可能性があるように感じていらっしゃるのであれば、練習を続ける方が良いかもしれません。
 もしも慣れで解消しそうにないとお感じでしたら、他の入力法にチャレンジしてみるという選択肢もあります。
 この場合、練習法はほぼそのまま生かせるはずですので、練習してきた時間は無駄にはならないはずです。

*1:言及の大半に相違がないのに「こういうこと」になるというのは、傍目には不思議に映るかもしれませんが……広く知らせるべき言葉を探す為には、こういうやり取りがどうしても必要になるのではないか……と感じています。