安岡さんの日記より。
「黎明期の全指タイピング法」、今風に言えば「運指の最適化」をせずに「ワードの最適化」のみで乗り切っていたようなもの。
……だから「タイピングは職業訓練を受けないとできないほど難儀な代物」だったのだろうか?……って、それは全然関係ないか。
PTS法の研究が始まったのは1920年代あたりだから、それ以前の練習法テキストに「ホーム・ポジションの重要性」が示されることはなかったとしても不思議ではないのかも。ところで「ホーム・ポジションの重要性に気づいたこと」と「ホームポジションマーカーがキートップに施されたこと」とでは、どちらが早いのかなぁ……。
あっ、コマツにおいてあるDjVuフォーマットプラグインを通すことで、日記にある次のドキュメントを閲覧可能です。
- Type-Writer Lessons for the Use of Teachers and Learners Adapted to Remington's Perfected Type-Writers』(Cincinnati, 1882年)
- Caligraph Lessons for the Use of Teachers and Learners Designed to Develop Accurate and Reliable Operators』(Cincinnati, 1882年)
英語が読めないと話にもならない……という部分はあるのですが(ゆえに私には理解できないorz)、たとえばQwerty教本のpp.7-14あたりは面白く読めるかもです。
……で、一応当時のQwerty運指表を勝手にでっち上げてみました。
左手領域の割り当てが斜めになっている理由は後述で。
4432111 11234 ←教材の指割り当て番号 小小薬中人伸伸 伸人中薬小 QWERT YUIOP ASDFG HJKL ZXCVB NM,.
右手が「上段ほど中心より、下段ほど外より」であることは現行の打法と似ています。
特徴的なのは左手で、こちらも同じく「上段ほど中心より、下段ほど外より」を基本としているっぽい(結構例外がある)のが面白いです。
ここからワードの最適化を施したものがMrs. M. V. Longleyのテキストとなるわけで。
……あれっ、もしこの打法が「普及」していたとなれば、キーボードの段ズレは中段・上段間も1/2キーずつズレていなければならないような。
うーん、どうしてなのだろうか。
どちらにせよ、デタラメタイピングというわけではなさそう。
今ある常識とは違う、当時なりの常識があって、それに基づいて最適化を施した……ということか。
そして、タイプライタの写真を見てみる……上段と下段のバーがかなり近接していて、今のキーボードと比べて「上段がもっと左に寄っている」ッぽいですな。これなら左手が右手と同じく「上段ほど中心より、下段ほど外より」になるようタイプ法を設計しても、なんら不思議はないのかも。
もっとも、1873年の市販初期モデルでは、中段が基礎・下段が中段キーのちょうど中間・上段は中段用バーと下段用バーの中間(中段に対して1/4ズレ)だった様だから……ああますますわけが解らないですよorz
2006年8月16日3:33:44追記
英語では「人差し指・中指・薬指」をそれぞれ「first finger/second finger/third finger」とも呼ぶようですね……つまり、数字は呼び名をそのまま表している、と。