とりあえず「リアルタイム速記」する必要性はないので「スロー再生」に切り替えてみました@参議院

(参考:2006年5月6日(土)@シャドールーム)
(参考:タッチタイプ)

 参議院で速記の方法が変わるという話、実は意外な方法で実現することになりました。
 それは「スロー再生すればいいじゃん!」という身も蓋もない話。


 ……で、以下は単なる推測なので、とりあえず省略しておきます。


 従来的には「その場で、現場の発言スピードに追いつける方法を」という記録がなされてきましたが、速記ままでは次の不都合がありました。

  • 手書きの場合は反訳が必要。
  • 機械速記→自動変換の場合は変換ミスの修正が必要。
  • その他、リアルタイムで問題となる多数の問題がある。

 こういった問題は全て

  • リアルタイムで記録すること

が原因で発生しているわけで、今回はその考え方を180度変えて

  • 「テープ起こしの技術を使おう!」

という結果に行き着いた様です。


 たとえばスピードワープロは2人組みが3組居て「まるで火縄銃を撃つかのように」10分交代しながら打っていたりする等というものすごい状況でした。
 【注:スピードワープロが国会で使われているわけではありません^^;】
 これを「スロー再生&フットスイッチ制御など」を用いて、少人数&通常入力方式でも文字化できる仕様にした、ということなのかな……と想像してみたり。


 で、なぜこれでうまく行く(最終出力結果をより素早く出せる)のかというと……国会の議事録配布タイミングがキモ。
http://www.kahoku.co.jp/news/2006/05/2006050301002175.htm
 こちらに書かれている通り、「従来は速記法を使っていたにもかかわらず、最終的な出力結果を渡すまでには3日掛かっていた」そうなのです。
 テープ起こし方式であれば逐次確認が可能なので、配布までのタイムラグは圧縮でき、結果として「翌日配布が可能になる」との事。


 そして、この方法ならば「確かに速いけど、会話のスピードでは入力できないよなぁ……」という入力方式や入力者であっても問題なく国会議事のテープ起こしが可能になるので、極端な話

 多少入力速度が遅い程度は気にしない。正確性さえ確かならば全然OK!

となりそうです。
 うーん、M式/JISかな/親指シフトあたりの「要約速記・テープ起こし」で実績のある方法で「国会議事録の作成作業」に参加できるようになったというのは大きいかも。


 ……とはいえ、一番の疑問は

 リアルタイム速記していた時代に、なぜ配布まで最大3日も掛かっていたのか

ということですね……これがお速記にすることで翌日配布が可能になるということは……単純に従来方式には無駄が多かった、ということなのかも。


 きっと作業分析しまくったんでしょうな。
 従来方法はおそらくベルトコンベア方式近似で、今回方法はおそらくセル生産方式近似かと。
 どちらがより効率がいいのかは時と場合によって異なるのですが、速記など文書(=規格化されていない・毎回同一ではない文書を作成する)を扱うものの場合、ベルトコンベア方式近似では「パイプラインがコケた場合の被害が大きい(CPUのパイプライン処理とまったく同じ)」ので、セル生産方式近似のほうが即応しやすくコストメリットが大きいのかもしれません。


 もちろん、これをさらに短縮するとなるとまた別の方法論が必要になるはずですが、それは同じ方法の延長で実現できるので、そうそう問題はないかな、と。
 議事を10分程度ごとのパケットに区切って(会話が途切れた時点でパケットを切り分ける)各人が担当していき、「10分の議事を何倍の時間掛ければ一人で記録&校正できるか」と「校正後の議事を、別の人間が校正するときに何倍の時間が掛かるか」を足し合わせて、必要な人員を投入すれば良いわけで。
 #手が空いた人から順に次のパケットの処理に移ればいいので、人員が増減しても、入力者同士に能力差があっても、なんら問題なく作業をこなせる……スケーラビリティがある方法となりそう。
 パケット流しにすればセル生産方式の利点はそのまま生かせるので、極端な話

10〜20人体制で臨めば、議事録を議事終了後1時間程度で配布可能になる

可能性も出てくるわけです。
 #切り分けたパケットの合成作業についても「人力でやる必要がない(機械的な合成が可能)」なので、切り分けによる作業支障も発生しません(バージョン管理ソフトの様なものは必要になると思いますけど)。


 今後、どういった方法で「最終成果物の品質を落とすことなく(ムラなく)、文字入力スピードや校正スピードそのものを速めることなく(無理なく)、いかに最終成果物の出力スピードアップを図るか(無駄をとる)」のかという点については興味深いですね。
 始めは「ネガティブな改革」かと思っていたけど、これは十分に「ポジティブな改革」に値し、大きな一歩として評価される時が来ると思います。

必要になると思われる改善はもう一つある。

 人の手順改善と共に、スロー再生ソフトにも改善が必要になると思います(既に機能として搭載されているかもしれませんが^^;)。


 一番のポイントは「単位時間当たりの発声数を平準化する」ことかな。

  • 誰も声を発していないときにはスピードアップして再生
  • 早口で喋っている人がいる場合にはより遅くスロー再生

……と、入力担当者がわざわざ再生スピードを変えなくとも、その人が本来打てるスピードで再生が行われるように、自動的に再生速度が変化するようになっている必要があります。
 これは喋っている人の発音数を認識する必要があるので、「音声認識ソフトウェア」の技術が必要となります。


 音声認識をするために使うソフトウェア技術はまだ未熟なものの、より簡易な「発声速度を認識する」ことは既に高精度で行えるはずですから、これは確実に入力作業者の作業効率を上げる(人間がやらなくてもいい作業を自動化する)ために役立つはずです。