なぜ他配列の欠点をあげつらって比較することに意味がないのか?という疑問に(勝手に)答えてみるテスト。

 「欠点を書いてはいけません」では説明責任を果たしていない気がするので、「なぜ欠点をあえて書かなくとも良いのか」を考え直してみることにしました。


 一番まずいのは「見た目の問題」ではないかと。
 ……たとえば、ですよ。
 自分自身がJISかな使いだと仮定してみてください。そして次の文書を読んでみてください。

  1. http://shadow.cside1.com/typing/kana/nanikana-02.htm
  2. http://www.geocities.co.jp/Hollywood-Kouen/9958/type2.html

 多分両方とも納得できうるはずです……おおよそ「JISかな使いにとっては両方とも真実」なわけで。
 では、自分自身がQwertyロマかな使いだと仮定してみてください。そして次の文書を読んでみてください。

  1. http://shadow.cside1.com/typing/kana/nanikana-02.htm
  2. http://www.geocities.co.jp/Hollywood-Kouen/9958/type2.html

 たぶん前者は納得できて、後者は納得できないと思うのですよ。
 理由は色々ありますよね……このあたりは「ローマ字かな変換 - Wikipedia」の過去版を見返してみればハッキリするようにも思うのですが、(編集注:以降は排除しました)。
 #あっ、ちなみに「りびけん虎の穴。」さんのサイトを後者に例示した理由は「サイト全体の理屈はしっかりしているから」に他なりません。


 ……で、「自分が使うものの利点を書く場合に、他の方法をけなすとかえって不利益を被るだけなのではないか?」という仮説を立ててみたわけです。
 この点について外出先で少しだけメモしていました。

 利点も裏返せば欠点になる。自分が勧めるものの利点と自分が勧めないものの欠点を比較しても説得力がない……単に両者の利点を並べて、「ショッピングのように比較検討してもらう方がいいのかもしれない。
 なぜ欠点を書く必要がないのか?
 →利点を裏返せば欠点になる、読者は補完しつつ読むから書かない・それで良い。

 キー配列を並べて紹介する場合、必要なものは「長所・短所の記述文」ではなくて、PCなどでよく見かける「スペック表」の様なものなのかもしれません。
 長所と短所は表裏一体なだけに、「○○だから{よい|わるい}」と書きたいところをぐっと抑えてでも「○○である」とすべきではないかな、と。
 その特徴を長所と取るか短所と取るかという問題は「人によって長所ととも短所ともとれる・そのスペック表を見たユーザ自身が決めるべきこと」なのかもしれません。


 私にとっては解りやすい問題(親指シフト系を使ったことがない方にとっては分かりにくいたとえだと思いますが……orz)に、「連続シフトは長所か短所か」という問題があります。
 昔からNICOLAと飛鳥の比較でよく引き合いに出されているわけですが、これも「どちらが良くてどちらが悪い」という問題ではない気がするわけです。
 両方共に触ったことがある方ならば

それは同期シフトを前提にした配列(NICOLAほか多数)か、あるいは連続シフトを前提にした配列(飛鳥・龍配列など)かで異なる問題であって、配列を抜きにして優劣を論じることができるわけではない

というあたりについては承知済みかと思われますが、かつて行われてきた配列論争のうち少なくとも一部には、こういった「そもそも絶対的優劣が存在し得ない」問題があったのかもしれません。


 「ローマ字かな変換 - Wikipedia」では「長所・短所」の二分法で全てを切り分けようとしていました(過去版は実際にそうなっていて、反論や再反論があるなど見た目が酷かった)が、これを最近の版では「長所・短所・指摘」に分けて整理しなしました。
 そうすると、三割方の記述が「指摘」に分類される内容でした……それだけ「長所と指摘」「短所と指摘」が混同されていたということなのかもしれません。


 もう一つの理由……それは「利点を裏返せば欠点になる」ということそのものだと思います。
 たとえば同時打鍵系配列は「同時打鍵することによりストローク数を削減することができる」という説明がなされるわけですが、同時打鍵系配列に慣れていない方にとっては「でも打鍵するキーの数は多いままじゃん!」という思いがあって当然なわけです……結果的に、これをそのまま「打鍵することが楽だ」という説明に結びつけるのは無理があるのではないかと。
 ……逆説的に言うならば、「裏返せば欠点になる様な内容を利点とするのは変」だということなのかもしれません。
 では親指シフトの利点って何?……と改めて問われると困りますね^^;。


 うーん、親指シフトは「動かしづらいけれども一定の位置に置きっ放しにできうる親指を文字入力のために有効活用するための方法論」なのかも。
 親指位置キーを編集用キーに転用している方はそれなりに多そうですし、こういう説明方法ならば「ああ、そういえば俺は親指位置キーをまったく使っていないなぁ」とか「自分は親指位置キーを編集用キーに転用しているから親指シフトは使えないなぁ」とか、そういう判断を読んだ方自身が行えるのではないかと。
 同時打鍵についてはうまい説明が思い浮かばないですね……「ゆっくり目のテンポで叩いていても納得できうる(=逐次打鍵と同じ)入力速度が出せる」という表現方法くらいしか思いつかないのですが、これじゃ昔の自分だって納得しないだろうし……むむむ。
 もっと端的に「打鍵順序を気にせず打鍵できて、同じキーを単独打鍵と同時打鍵とで別々の役目に使える」ぐらいの表現にするべきなのかも。


 というか、POVを避ける記述を書こうとすると、これはなかなかに難しいですね。
 普段から「自分にとって使いやすいものを探そう」という考えで物事を探す癖が付いているだけに、そこから主観を取り除いて「真実のみを記述する」という作業はし慣れていませんし。
 でも、考えようによってはこれも面白いかな……数字で容易に表すことのできない「キー配列」を一揃いに「客観的とみなしうる記述のみで説明する」ことができれば、どんな配列遍歴を持つ方にとっても役立つものに仕上がるのかも。


 んー、まだ夢物語状態のような気もしますが、とりあえずはメモしておきたく書いてみました。