(メモ)ダメだ……全部間違ってるじゃねーかッ!

(過去:「電源に乗ってるノイズを可視化してみるテスト」のための考慮点。 - 雑記/えもじならべあそび)
(過去:メモ。 - 雑記/えもじならべあそび)


 ……最近ようやく気づきました。

 そういえば、「中点接地100V」の絶縁トランスを自分で組み付ける場合は、大容量の電源トランス+たくさんの電源コネクタ……というのはあまりにもダサいので、【IECケーブルを真ん中からぶった切って、小容量の「2次側に中点線が出ている」100V-100V絶縁トランス】をつけてしまうほうが、管理しやすくていいのかも。
(from 「電源に乗ってるノイズを可視化してみるテスト」のための考慮点。 - 雑記/えもじならべあそび )

 これは、「見た目がダサイから」ダメなんじゃなくて、「主電源回路からフロートしなきゃいけないものを、フロートせずに使うことになるから」ダメ、なんです。
 ……って、なんで「ダサイか否か」なんていう感覚問題で処理しようとしていたんだろう……そんなのじゃ実験室再現性がないからダメじゃんorz。


 このことに気づいたのは、先に起きた以下の問題。

  • 試しにアース線のない「小型テレビ」をつないでみた……ら、電源以外未接続の状態での「機器が持つ対地アース電位」は数ボルトあがってしまった(泣)。
    • 普通に壁コンセントへと接続するとAC24V程度(この時点ですでに高すぎる気も……)なのだけれど、今回の絶縁トランス経由で接続するとAC28Vになってしまう……スイッチング電源なのかしら?
    • 他の機器については測定していないので、順次「電源以外未接続の状態&3P→2P変換プラグを使ってアースフロートした状態」での対地アース電位測定をするつもり。

(from メモ。 - 雑記/えもじならべあそび )

 この問題は、「電源線を直流的に共有しつつ、アース線も直流的に共有している」機器同士を接続したときに、出来の悪いスイッチング電源を搭載した機器が混在していると発生します。
 この例では「ブラウン管テレビ」と「PLAYSTATION®3」を接続し、かつ2つの機器間に「映像ケーブル」が接続されたときに発現していることが判明しました。


 この手の問題を検出するためには、次の道具が必要となります。

  • 絶縁電源トランス(入出力ともに2ピンに対応しているもの)──1セット。入力と出力が別巻きになっていて容量が十分であれば、どんなトランスでも良い(プロケーブルトランスである必要もなければ、ノイズカットトランスである必要もない)。絶縁されていないオートトランスではこのテストができないのでダメ。
  • デジタルテスタ──1台。蓑虫クリップつき配線が数本あるとさらにグー。アナログテスタは使ってはいけません(測定対象が静電気のようなものなので、アナログテスタの針を振るだけの力はなく、正確な測定ができないので)。
  • 電源用の3ピン→2ピン変換アダプタ──2個。2個以上は同時に使ったりしないので、2個あればよいです。
  • メモ紙──オーディオを構成するコンポーネントの数ぶんだけ用意する。
  • オーディオセット──1セット、いまたぶん、あなたの目の前にあるもの。

 問題の切り分け方は次の通り。

  • これらの「機器間をつなぐ」ために使われている「インターコネクト」配線をまずすべて外します。電源線もすべて外してください。
  • 次の手順を、「すべての」インターコネクト配線およびその両端の機器に対して、インターコネクト配線一組ずつ、順番に調査します。
    • 出力側機器のひとつと、それに対応する入力機器一つの間との間のみを、出力機器→入力機器の接続用にもともと使っていたインターコネクト配線で結線する。
    • インターコネクト配線で結線された2つの機器が3ピン電源コネクタの場合、「電源用の3P→2P変換アダプタ」を取り付けて2ピンに変換する。
    • インターコネクト配線で結線された2つの機器を、絶縁トランスの出力側に接続する。
    • 絶縁トランスの入力側を、壁コンセントに接続する。
    • インターコネクト配線で結線された2つの機器の電源を投入する。
    • 壁コンセントのアース端子(が存在しなければ、(はっきり言ってお勧めはできないが)壁コンセントの「ニュートラル」が来ている左側穴。いずれにせよ対地電圧がDC±0VかつAC±0V)と、絶縁トランスの出力側(が取りづらければ、どちらかの機器のアース極が裸になっている部分)との間の「DC(直流)電位差」を、デジタルテスタで測定する。
      • 電位差がほとんどDC±0Vであれば、出力機器と入力機器の両方に「○」と書いた紙を貼る。この2つの機器は問題ないことが判明する。
      • 電位差がDC±0Vからかけ離れていれば(判定基準はDC±10V)、出力機器と入力機器の両方に「?」と書いた紙を貼る。この2つの機器のうち、どちらか片方(もしくは両方)が、電源を共通電源から絶縁しなければならない機器ということになる。
    • 判定結果が出たら、インターコネクトケーブルを外し、絶縁トランス出力側から電源コネクタを両方とも外す……で、この手順を「すべてのインターコネクトでつながれた両端機器の組み合わせに対して」行う、と。

 当家では、こうして調査した結果として、以下のホワイトリストブラックリストを作成しました。

  • ホワイトリスト(アースピンはそのまま共用アースにつないでいいし、電源線も共用電源線につないでよい機器)
  • ブラックリスト(アースピンはそのまま共用アースにつないでいいが、電源線は専用の絶縁トランスへと接続して「他の電源からフロートさせる」必要がある機器)

 実際にこうして測定分離してみると、「なんとなくテレビを付けるとヤな感じになっていた」などという感覚的なものではなくて、現実的に「PLAYSTATION®3→テレビへとアース線が繋がったときに、互いの電位が異なっている分だけ絶縁トランス出力側の電位が浮いてしまう」という現象として観測できるようになります。


 これを従来はそのままつないでいるから「テレビからPLAYSTATION®3へとアース線経由映像ケーブルのアース側配線経由で電流が流れ続け、結果として音を濁してしまう」という現象を発症していた……と。
 電流が一瞬流れるとか言うのではなくて、電流が流れ「続ける」という現象が起きる理由は、両者が本来とどまろうとする「対電源線電位」が異なるためのものです。
 背の高さが異なる二人の人が、互いにとってちょうど良くなるようにと、一つの机の高さを「片方は上げようとし、もう片方は下げようとし」ている……という表現は乱暴かもしれませんが、ぶっちゃけて言えばそういう状態が起きていて、無駄な力が働いているわけです。


 こういう場合、どうすれば問題は解決するでしょうか?……って、上に挙げたふざけた例からそのまま想像していただいた通りで、「同じ高さの地面には立たないようにする」という、ただそれだけのことで問題は解決します。
 背の低い人が机に捕まって宙ぶらりんになる(?)なり、背の高い人が足下に穴を掘る(?)なり、ということをすれば、同じ高さの机を共用できますよね。


 商用電源を使う機器の場合、基本的には「アース電位を揺らさない安定な機器はそのまま」にして、「アース電位を揺らす不安定な機器は、絶縁トランスを使って電源から直流的に浮かせてしまう」ことで解決させるのが手っ取り早いです(厳密にやるならアンプを使って浮かせるべきなのかもしれませんが、そんなアンプを設計するのは面倒すぎるので却下……)。
 絶縁トランスを使って直流分離したばあい、「アース電位を揺らさない安定な機器」と「アース電位を揺らす不安定な機器」とをインターコネクトケーブルでつないでから電源を投入すると、【電源投入時にはインターコネクトケーブルを通じて一瞬電流が流れる】というところは変わりませんが、一端電流が流れて【両方の機器のアース電位が均衡】すれば、あとは【アース電位を揺らす不安定な機器が発生させるやっかいな電位差は、アース線に対してではなく絶縁トランスの入出力間に掛かる(→ここは絶縁されてるので浮いていてもかまわない)】という風になります。
 両方の機器のアース電位が均衡し続けるためには、結局微量の電流が必要……ということで、若干安定性には欠けるところがありますが、無対策で行くよりは遙かにマシでしょう。


 ……ということで。
 至る所で語られている?様な気がする以下の説明は、常に真実であるとは限りません。

  • とにかくすべての機器を一つのタップにまとめれば、万事解決!。
  • とにかくすべての機器を一つの絶縁トランスにまとめれば、万事解決!。

 理屈も解らず「あの機器はダメ、あの機器は良い」……とか言って迷いまくるというのはイヤなので、忘れないようにメモしておくことに。

……で、よく分からないんだけど、結局何をしろと?

 とりあえず……システムにテレビを組み込んでいるなら、「テレビに合う容量の絶縁トランスを用意して、その絶縁トランスで【テレビだけを直流分離】しましょう」と、そこは確実だと思います。
 他の機器については、上記手順できちんと調べていく方が良いと思います……が、【2ピン電源コネクタを持っていて、かつスイッチング電源を採用している機器】については、下手をするとすべての機器に対して専用の絶縁トランスが必要になってくるかもしれません。


 ……じゃあ「3ピンコネクタの機器なら安心か?」というと、もちろんそんな保証はどこにもありません。
 3ピンコネクタでアースに落ちているので、これを理解せずに測定して「なんだ、電位差なんてでてないから良いじゃん!」なんて勘違いをしてしまう可能性があるので、かえって厄介*1だったりもしますし。
 きちんと測定するか、それがイヤなら「システム内の機器一つだけ(できれば音源)をきちんと直流的に電源へと接続して、他はすべて【機器一つに対して1個の個別絶縁トランス】で直流分離してから電源に接続する」ことになるはずです。
 つまりは【何でもかんでもアースすればいい】or【何でもかんでも一つの絶縁トランスでまとめて直流分離すればいい】……というわけではない、ということですね。

2008年6月19日0:05:43追記。

 かないまるさんが、次のようなことをご自身のwebpageで記述しています。

  • PLAYSTATION®3に絶縁トランスをかませると、音が良くなる。
  • いくつかのパワーアンプでアースピンを抜いた状態にしているのは、アースループの生成を防ぐため。

 前者は真であるはずです(スイッチング電源の苦手な部分を補完するために、絶縁トランスは大きな効果を発揮します)。
 ただし、個人的には「PLAYSTATION®3を音源として使う場合、アースは絶縁トランスをバイパスして普通につなぐ&他の機器をアースから浮かせる」という方法が、もっとも安定した動作を期待できるのではないかと考えています……これは上で書いてきたとおりの理由であり、いわゆる「システム全体にわたる一点アース」を確定するためにはあるほうが良いとおもいます。
 基本的に、PLAYSTATION®3のスイッチング電源はそう悪いものではないはずなのですが、ここは「IEC電源ケーブルを中央からぶった切って、中間に(アースは元通りに接続し直した上で)絶縁トランスをかませる」という方法が、いちばんシンプルな回答になるのかもしれません。


 後者については、「ループ要因を少しでも減らすために、仕方がなくそう設計した」という感じなのかもしれないですね。
 実際にここでも「ソース機器を除くすべての機器について、アースから浮かせてしまう」方法を提案してみたりしています……こういった方法のために「きちんと狙って」設計された機器というのは世の中にそう多くは無いはずなのですが、少なくともSONYのアンプはそれを「きちんと狙って」設計された、数少ない機器である、ということになるようです。


 ……うーん、やっぱりCROWNのアンプではなくて、SONYのアンプを買っておけばよかったのかも?いや、実験をする上では正しい選択だったと思うのだけれど。


 ……なんとなく、ですが。
 そのうち、

  • IEC3ピンの「絶縁トランス付き電源ケーブル(アース貫通・ライブ&ニュートラルは絶縁トランスで直流分離)。
  • IEC3ピンタイプではない機器用の「絶縁トランス付き電源延長一口タップ」(アース貫通・ライブ&ニュートラルは絶縁トランスで直流分離)。
    • アースを遮断するための、3P→2P変換プラグ(逆挿し防止用に、ニュートラル側の刃が幅広になっているもの……プロケーさんとこでおまけにつけてるのと同じ考えのもの)。

というのが、一般的なオーディオ&ビジュアル用電源ケーブルの確定的なスタイルになりそうな気がする。
 そんでもって、

  • セット中のすぺての電源ケーブルには、「IEC3ピンの絶縁トランス付き電源ケーブル」を使ってください。IEC3ピンでは接続できない機器については、「IEC3ピンの絶縁トランス付き電源延長1口タップ」を使ってください。
  • 音響セット中でいちばん重要なソース機器を一つだけ選んで、それのアースピンを生かすために「3P→2P変換プラグ」なしで電源コンセントへと接続してください。
  • ほかの機器は、すべて「3P→2P変換プラグ」経由で接続してください。

という風になるのではないかな……と。
 電源ケーブルだけで1万円/本とかになる(絶縁トランスの容量によって異なる)し、ケーブル自体がかなりうざったくなるだろうけれど、結線ミスや機器のばらつきなどに起因する電位差から起きるノイズを一掃するには大きな効果を発揮するだろうから、電線の材料吟味云々でどーにかするようなものとは違って「きちんと意味のある代物」になるだろうと思う。


 ……私はいまだに「電線で音が良くなる」とは思っていません。
 というか、単に「こういったノイズに対する色付けの方向性が異なる」から、配線の変更によってカラーレーションが変わるかのように聞こえてしまうのではなかろうかと。
 それはたぶん「臭いどぶに消毒剤をまく」ようなものであって、根本的な対策としては失格なのではないかと感じています。
 きちんとやるなら、「臭いどぶは上流から掃除する」に限るわけで、きちんとした根本対策をしていくことが、遠回りな様で結局は一番の近道なのではないかな……と。
 そういう意味で、絶縁トランスを使った「直流的な相互妨害要因の分離」をするために、片っ端から独立した絶縁トランスを突っ込む……というのは、乱暴な様でいて、結局は目的達成への近道なのかもしれません。
 カラーレーションの原因が「電位差という名の、静電気のような代物によってもたらされる」のであれば、そこをまず「アースへと垂れ流しにしてごまかすのではなく、キチンと機器間でバランスするようにもっていく」ことが、どうしても必要になるでしょうから。

2008年6月19日23:41:42追記。

 上記の話が正しければ、という仮定での話ですが。


 各機器についているアースピンのうち、どれを実際にコンセント経由で接地するか……という点については、以下のルールに従って選択するべきはずです。

  • ソース機器が1台しかない場合
    • ソース機器についているアースピンを、実際にコンセント経由で接地する。
  • ソース機器が2台以上ある場合
    • (ソース機器のうちの一つだけを接地すると、他のソース機器の接地はセレクタ経由になってしまい距離的に長すぎるので)ソース機器をまとめて切り替えるための機器(セレクタ・プリアンプ・プリメインアンプ・ミキサーのうちのいずれか)を、実際にコンセント経由で接地する。
  • 上記で実際にコンセント経由で接地した機器に対して、信号ケーブルのアースが接続されていない機器がある場合は、その機器も実際にコンセント経由で接地する。
    • このルールは、バランス接続用ケーブルを用いていて、かつ「バランスケーブルのアース線が片側にしか接続されていない(=グラウンドリフトされている)」特殊なケーブルを使っている場合にのみ適用される。いわゆる全結線ケーブル──たとえばプロケーブルで販売しているものは全結線されているはず──を使う限りは、これについて考慮する必要は無い。

*1:電位差として現れるのは、電流が流れていく道がない(→抵抗値が高い)から、現象を観測しやすい。いっぽうで電位差が現れないのは、電位差が元々ない場合と、【実際には電位差が発生する条件ではあるけど、アース経由で漏れまくりだから「電流」として現れて「電位差」としては現れない(これは3P→2P変換コネクタを使ってアースを分離するとボロがでる)】というパターンの2通りが考えられる。こういう電気については、きちんと「静電気」だと思って挑まないと、現象を観測し損ねるので要注意。